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第2章 王都へ
89 盗賊団②
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えっ⁉️私がっ⁉️
『姐さんなら簡単に倒せるさ』
リードはそう言うけれど、私は攻撃魔法を一度も使ったことがない。
なのにそれを人に向けるなんて、考えただけで足がすくむ。
(下に降りて盗賊団と戦うなんて、私には無理だよ!)
『姐さんならここからでも十分魔法が届くから、下に降りる必要なんてないぜ』
そうリードに言われても、決意がつかない。けれども事態は刻一刻と進んでいく。
「わかった。許可を出そう」
「ありがとうございますっ!では、ロンさんに言って、フェリシアの高度を」
「シーラっ!アランがっ!」
マーヴェイさんの悲痛な声が聞こえる。
その声を聞いて、体が勝手に動いた。
窓から外に飛び出し、マーヴェイさんのもとに向かう。
「サラ様っ⁉️」
フェ様の声が後ろから聞こえるけど、振り向く時間も勿体ない。
「マーブル、少しの間じっとしてててね」
「にゃんっ」
ポシェットの中のマーブルに話しかけたあと、魔法で足元に風をまとわせ走るスピードをあげる。
一度うっかり森の奥に入ってしまった時、この魔法で魔物の追跡を振り切ることができたので、足の早さには自信がある。
もちろんその時のことはお父さんたちには内緒だけど。
私はスカートが翻るのも構わずに、マーヴェイさんのもとに向かった。
「マーヴェイさんっ!アランさんが怪我したんですか?」
「どうして君が」
マーヴェイさんは私が竜籠の外に出てきたことに驚いていた。
そんなマーヴェイさんに構うことなく、下を覗く。アランさんはすぐに見つけることができた。
意外にもアランさんに目立った怪我はなかった。
一人で多数の盗賊たちを相手に見事な立ち回りをしている。
「良かった」
「さっき、一瞬だが足がもつれたんだ。アランの体力が心配だ」
マーヴェイさん言われて、今度は怪我の有無ではなく、注意してアランさんの動きを見ていると、確かにアランさんは肩で息をしていて、たまに足元がおぼつかない。
それでも、アランさんの周りには人が数人転がっていて、アランさんの強さがうかがえる。
私は倒れている人の服が赤く染まっているのを見てしまい、思わず怯んでしまう。
あの赤いのってもしかして…
そんな時、肩に手を乗せられる。
びっくりして振りかえると、そこにはシーラさんがいた。
「お、追い付いたっ!足が速いのね」
「シーラさん」
「危ないから竜籠に戻っていて。神官長様も心配していたわ」
シーラさんは私に構う余裕はないようで、必要なことだけ言うとすぐにマーヴェイさんに顔を向ける。
「シーラ、許可はもらえたのか?馬車も追い付かれて応戦してる。もう時間がない」
「わかってる。許可はもらえたわ。ただ二手に別れられたのは痛かったわね。馬車の方は持ち堪えれそう?」
シーラさんはアランさんを見つめながら、マーヴェイさんに確認をとる。
「あちらにも護衛はいるし、人数は減ったから今のところは何とか。ただ、こちらも時間の問題だ」
「とりあえず、ロンさんに高度を下げてもらいましょう」
私は恐怖心をおさえ、二人の会話に割り込む。
ここまで来たんだもん。私だってアランさんを助けたい。
「あのっ。私は回復魔法が使えます!ここからでも魔法は届きますから、何か手伝えることはないですか?」
「本当にっ⁉️」
シーラさんがこちらを驚いたように見る。
「はいっ。攻撃魔法は使ったことがないけど、回復魔法は自信があります」
シーラさんとマーヴェイさんに向かって、はっきりと伝える。
二人は少し悩んでいたみたいだけど、ここにいるのを許してくれた。
「じゃあ、アランにここからかけてもらえる?」
「はいっ」
シーラさんとマーヴェイさんが場所を開けてくれたので、早速アランさんに向けて回復魔法を使う。
「ヒール」
アランさんは一瞬驚いたようだったけど、すぐに戦闘に集中する。
アランさんの動きが目に見えて良くなったので、シーラさんたちもほっとする。
でも、このままじゃあ、また同じことの繰り返しだよね。
『アランと盗賊の前に壁を作ればいい。そして盗賊を閉じ込めるんだ』
悩んでいると、リードがアドバイスをしてくれる。
そっか、それなら誰も傷つけずにアランさんを助けれる!
えーと、まずアランさんを盗賊団から少し離すでしょ?
「えーっと。フライ?」
ちょっと詠唱に自信がなかったけど、アランさんの体は問題なく浮き、盗賊団と距離を離すことに成功する。
良かった!
アランさんは急に体が浮いて、驚いていたけど、そこは許してほしい。
「アランが急に宙にっ⁉️」
「盗賊団に魔法使いがいたのっ⁉️」
マーヴェイさんたちは何か勘違いしてたけど、今は訂正する時間も惜しい。
盗賊団はアランさんの突然の大ジャンプに警戒して、すぐには動き出さない。
その機会を逃さず、盗賊団の周りを土で囲む!
「アースウォールっ」
ゴゴゴコッ
大地が振動し、轟音と共に強大な土の壁が出現する。盗賊の人たちは方々に逃げようとするけど、四方に土の壁が出現し、逃げ道を防ぐ。
お馬さんには可哀想だけど、このまま盗賊団の皆さんと壁の中にいてもらおう。
「できましたっ!」
魔法が成功したことにほっとする。
笑顔で二人を見ると、二人は口を開けて固まっていた。
「あの?馬車の人たちを助けなくって良いんですか?」
私の言葉に二人は正気を取り戻す。
「あっ。そ、そうよね!こちらが片付いたから、急いであちらも助けないと」
「すぐにアランを回収しよう」
「はいっ!」
よーしっ!
次は追われている馬車の人たちの救出だ!
---
12/11 一部文章を訂正しました。
誤:一度《誤って》森の奥に入ってしまった時、この魔法で魔物の追跡を《降りきる》ことができたので、足の早さには自信がある。
正:一度《うっかり》森の奥に入ってしまった時、この魔法で魔物の追跡を《振り切る》ことができたので、足の早さには自信がある。
『姐さんなら簡単に倒せるさ』
リードはそう言うけれど、私は攻撃魔法を一度も使ったことがない。
なのにそれを人に向けるなんて、考えただけで足がすくむ。
(下に降りて盗賊団と戦うなんて、私には無理だよ!)
『姐さんならここからでも十分魔法が届くから、下に降りる必要なんてないぜ』
そうリードに言われても、決意がつかない。けれども事態は刻一刻と進んでいく。
「わかった。許可を出そう」
「ありがとうございますっ!では、ロンさんに言って、フェリシアの高度を」
「シーラっ!アランがっ!」
マーヴェイさんの悲痛な声が聞こえる。
その声を聞いて、体が勝手に動いた。
窓から外に飛び出し、マーヴェイさんのもとに向かう。
「サラ様っ⁉️」
フェ様の声が後ろから聞こえるけど、振り向く時間も勿体ない。
「マーブル、少しの間じっとしてててね」
「にゃんっ」
ポシェットの中のマーブルに話しかけたあと、魔法で足元に風をまとわせ走るスピードをあげる。
一度うっかり森の奥に入ってしまった時、この魔法で魔物の追跡を振り切ることができたので、足の早さには自信がある。
もちろんその時のことはお父さんたちには内緒だけど。
私はスカートが翻るのも構わずに、マーヴェイさんのもとに向かった。
「マーヴェイさんっ!アランさんが怪我したんですか?」
「どうして君が」
マーヴェイさんは私が竜籠の外に出てきたことに驚いていた。
そんなマーヴェイさんに構うことなく、下を覗く。アランさんはすぐに見つけることができた。
意外にもアランさんに目立った怪我はなかった。
一人で多数の盗賊たちを相手に見事な立ち回りをしている。
「良かった」
「さっき、一瞬だが足がもつれたんだ。アランの体力が心配だ」
マーヴェイさん言われて、今度は怪我の有無ではなく、注意してアランさんの動きを見ていると、確かにアランさんは肩で息をしていて、たまに足元がおぼつかない。
それでも、アランさんの周りには人が数人転がっていて、アランさんの強さがうかがえる。
私は倒れている人の服が赤く染まっているのを見てしまい、思わず怯んでしまう。
あの赤いのってもしかして…
そんな時、肩に手を乗せられる。
びっくりして振りかえると、そこにはシーラさんがいた。
「お、追い付いたっ!足が速いのね」
「シーラさん」
「危ないから竜籠に戻っていて。神官長様も心配していたわ」
シーラさんは私に構う余裕はないようで、必要なことだけ言うとすぐにマーヴェイさんに顔を向ける。
「シーラ、許可はもらえたのか?馬車も追い付かれて応戦してる。もう時間がない」
「わかってる。許可はもらえたわ。ただ二手に別れられたのは痛かったわね。馬車の方は持ち堪えれそう?」
シーラさんはアランさんを見つめながら、マーヴェイさんに確認をとる。
「あちらにも護衛はいるし、人数は減ったから今のところは何とか。ただ、こちらも時間の問題だ」
「とりあえず、ロンさんに高度を下げてもらいましょう」
私は恐怖心をおさえ、二人の会話に割り込む。
ここまで来たんだもん。私だってアランさんを助けたい。
「あのっ。私は回復魔法が使えます!ここからでも魔法は届きますから、何か手伝えることはないですか?」
「本当にっ⁉️」
シーラさんがこちらを驚いたように見る。
「はいっ。攻撃魔法は使ったことがないけど、回復魔法は自信があります」
シーラさんとマーヴェイさんに向かって、はっきりと伝える。
二人は少し悩んでいたみたいだけど、ここにいるのを許してくれた。
「じゃあ、アランにここからかけてもらえる?」
「はいっ」
シーラさんとマーヴェイさんが場所を開けてくれたので、早速アランさんに向けて回復魔法を使う。
「ヒール」
アランさんは一瞬驚いたようだったけど、すぐに戦闘に集中する。
アランさんの動きが目に見えて良くなったので、シーラさんたちもほっとする。
でも、このままじゃあ、また同じことの繰り返しだよね。
『アランと盗賊の前に壁を作ればいい。そして盗賊を閉じ込めるんだ』
悩んでいると、リードがアドバイスをしてくれる。
そっか、それなら誰も傷つけずにアランさんを助けれる!
えーと、まずアランさんを盗賊団から少し離すでしょ?
「えーっと。フライ?」
ちょっと詠唱に自信がなかったけど、アランさんの体は問題なく浮き、盗賊団と距離を離すことに成功する。
良かった!
アランさんは急に体が浮いて、驚いていたけど、そこは許してほしい。
「アランが急に宙にっ⁉️」
「盗賊団に魔法使いがいたのっ⁉️」
マーヴェイさんたちは何か勘違いしてたけど、今は訂正する時間も惜しい。
盗賊団はアランさんの突然の大ジャンプに警戒して、すぐには動き出さない。
その機会を逃さず、盗賊団の周りを土で囲む!
「アースウォールっ」
ゴゴゴコッ
大地が振動し、轟音と共に強大な土の壁が出現する。盗賊の人たちは方々に逃げようとするけど、四方に土の壁が出現し、逃げ道を防ぐ。
お馬さんには可哀想だけど、このまま盗賊団の皆さんと壁の中にいてもらおう。
「できましたっ!」
魔法が成功したことにほっとする。
笑顔で二人を見ると、二人は口を開けて固まっていた。
「あの?馬車の人たちを助けなくって良いんですか?」
私の言葉に二人は正気を取り戻す。
「あっ。そ、そうよね!こちらが片付いたから、急いであちらも助けないと」
「すぐにアランを回収しよう」
「はいっ!」
よーしっ!
次は追われている馬車の人たちの救出だ!
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12/11 一部文章を訂正しました。
誤:一度《誤って》森の奥に入ってしまった時、この魔法で魔物の追跡を《降りきる》ことができたので、足の早さには自信がある。
正:一度《うっかり》森の奥に入ってしまった時、この魔法で魔物の追跡を《振り切る》ことができたので、足の早さには自信がある。
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