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第2章 王都へ
88 盗賊団①
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「サラちゃんどうしたの?」
私が先程よりも更に身を乗り出して、窓を覗きこんでいると、アミーちゃんが不思議そうに聞いてくる。
「うん。アランさんたちが何か下を見てるから、何かなと思って」
私は窓を覗いたまま、アミーちゃんに答える。
角度の問題か、ここから下を覗いても街道が見えるだけで、特に何かがあるわけではない。
結局、何も見つけることができず、諦めてもう一度アランさんたちの様子を見ようとした時、リードがアランさんたちが何を見ていたのか教えてくれた。
『一台の馬車が馬に乗った集団に追いかけられてるな。』
「えっ⁉️」
リードの言葉に驚きで、思わず声がこぼれる。
慌ててもう一度窓を覗くと、リードが場所を教えてくれる。
『進行方向の先だ』
目を凝らして前方に馬車がないか探す。
すると、街道をひた走る一台の馬車を見つけた。馬車の周りを馬に乗った護衛らしき人たちが15人ほど並走している。その後を馬に乗った集団が爆走して馬車を追いかけていた。集団の数は30人ほどで、遠目からでも、緊迫した状況が伝わってくる。まだ距離は離れているけど、いずれは追い付かれそうだ。
「サラ様どうされました?」
「あ…」
まさかの事態に頭が真っ白になるけど、フェ様に声をかけられ、我に返る。
「あの。馬車が一台、馬に乗った集団に追いかけられてて」
「馬車が?」
すぐにフェ様にリードの言葉を伝えていると、外からシーラさんたちの声が聞こえる。
「アランっ!待ちなさいっ!」
「アラン!」
再び窓に目を向けると、アランさんがマーヴェイさんを振り切り、フェリシアから飛び降りるのが見えた。
一瞬ヒヤッとしたけど、アランさんが風の精霊様の好意持ちだったことを思い出す。
アランさんは風魔法を使って下に降りつつ、馬車との距離を縮めていく。
先程よりも近づいたのか、ここからでも集団の様子が良く見える。
馬に乗った集団は服装はバラバラでまとまりがなかったけど、刀や弓矢などで全員が武装していて、馬車を襲うつもりなのは明らかだった。
大変!アランさんは一人で助けにいくつもりなんだっ!
「馬に乗った集団は武器を持ってます!」
「それは盗賊団かもしれませんね」
「「「盗賊っ⁉️」」」
フェ様の言葉に他の三人の顔が強張る。
「ここは空の上ですから、このままここにいれば大丈夫ですよ。ただ、追いかけられている馬車が心配ですね」
「アランさんが下に降りて、助けに向かったみたいなんですけど」
その時、外から窓をノックされる。
窓の近くにはシーラさんがいた。
「す、すみませんっ。き、緊急事態でっ。神官長様に許可をいただきたいのですがっ!」
シーラさんは全速力で走ってきたのか、髪はボサボサで、肩で息をしている状態だ。そんな姿のシーラさんを見るのは初めてで、深刻な状況なのが良くわかる。
「馬車が盗賊から逃げているようなんですが、神官長様に指示をあおぐ前にあのバカっ、いえ、アランが一人で助けに下へ降りてしまって」
「倒せそうなのか?」
フェ様の質問に、シーラさんの顔に暗い影がよぎる。
「私たち二人も下に降りればあれしきの数、簡単に倒せます。ただ、アランが先に下に降りてしまったので、下に降りる手段がないんです。危険な場所にフェリシアに降りてもらうわけには行きませんから」
「確かに。子供たちを危険にさらすわけにはいかん」
アミーちゃんはフェリシアで下に降りると聞いた瞬間、大きく体を震わせた。
私はアミーちゃんの不安が少しでも和らぐようにアミーちゃんの両手を包む。
キャシーちゃんとハルくんもお互いの手を握り合い、体を寄せて恐怖を紛らわせていた。
「それで、私の許可と言うのは?」
フェ様は一人冷静で、その冷静さが逆に心強い。
「はいっ。フェリシアの高度を少し下げていただきたいのです。盗賊団の攻撃範囲外のところで私たちは飛び降り、盗賊団を倒します。私たちが飛び降りた後でフェリシアはすぐに高度を上げてもらってかまいません」
「その間の我々の護衛はどうするのかね?護衛の仕事を放棄したと取られても仕方がないが?」
シーラさんはフェ様の言葉に一瞬言葉がつまる。
「仲間を見殺しになんてできません!」
けれど、すぐにフェ様に向かってキッパリと言い切る。
「シーラっ!アランが下に到着して、今一人で盗賊団と戦っている!」
「何ですってっ⁉️」
「盗賊団は二手に別れて、一方は馬車に。それでもあのままではアランはっ」
マーヴェイさんの言葉で、もう時間がないことを知る。
「神官長様、どうかご許可をっ!」
シーラさんの切羽詰まった声が竜籠の中に響き渡る。
「高いところから飛び降りて、君たちはすぐに戦えるのか?」
「マーヴェイが土魔法を使えるので、なんとかします!」
この間にもアランさんは一人で盗賊団と戦っているのだ。
私はフェ様たちをただ眺める事しかできなかった。
━━できなかったはずなのに、リードの一言で全てが変わる。
『姐さんが倒しちゃえばいいんじゃないか?』
えっ⁉️私がっ⁉️
私が先程よりも更に身を乗り出して、窓を覗きこんでいると、アミーちゃんが不思議そうに聞いてくる。
「うん。アランさんたちが何か下を見てるから、何かなと思って」
私は窓を覗いたまま、アミーちゃんに答える。
角度の問題か、ここから下を覗いても街道が見えるだけで、特に何かがあるわけではない。
結局、何も見つけることができず、諦めてもう一度アランさんたちの様子を見ようとした時、リードがアランさんたちが何を見ていたのか教えてくれた。
『一台の馬車が馬に乗った集団に追いかけられてるな。』
「えっ⁉️」
リードの言葉に驚きで、思わず声がこぼれる。
慌ててもう一度窓を覗くと、リードが場所を教えてくれる。
『進行方向の先だ』
目を凝らして前方に馬車がないか探す。
すると、街道をひた走る一台の馬車を見つけた。馬車の周りを馬に乗った護衛らしき人たちが15人ほど並走している。その後を馬に乗った集団が爆走して馬車を追いかけていた。集団の数は30人ほどで、遠目からでも、緊迫した状況が伝わってくる。まだ距離は離れているけど、いずれは追い付かれそうだ。
「サラ様どうされました?」
「あ…」
まさかの事態に頭が真っ白になるけど、フェ様に声をかけられ、我に返る。
「あの。馬車が一台、馬に乗った集団に追いかけられてて」
「馬車が?」
すぐにフェ様にリードの言葉を伝えていると、外からシーラさんたちの声が聞こえる。
「アランっ!待ちなさいっ!」
「アラン!」
再び窓に目を向けると、アランさんがマーヴェイさんを振り切り、フェリシアから飛び降りるのが見えた。
一瞬ヒヤッとしたけど、アランさんが風の精霊様の好意持ちだったことを思い出す。
アランさんは風魔法を使って下に降りつつ、馬車との距離を縮めていく。
先程よりも近づいたのか、ここからでも集団の様子が良く見える。
馬に乗った集団は服装はバラバラでまとまりがなかったけど、刀や弓矢などで全員が武装していて、馬車を襲うつもりなのは明らかだった。
大変!アランさんは一人で助けにいくつもりなんだっ!
「馬に乗った集団は武器を持ってます!」
「それは盗賊団かもしれませんね」
「「「盗賊っ⁉️」」」
フェ様の言葉に他の三人の顔が強張る。
「ここは空の上ですから、このままここにいれば大丈夫ですよ。ただ、追いかけられている馬車が心配ですね」
「アランさんが下に降りて、助けに向かったみたいなんですけど」
その時、外から窓をノックされる。
窓の近くにはシーラさんがいた。
「す、すみませんっ。き、緊急事態でっ。神官長様に許可をいただきたいのですがっ!」
シーラさんは全速力で走ってきたのか、髪はボサボサで、肩で息をしている状態だ。そんな姿のシーラさんを見るのは初めてで、深刻な状況なのが良くわかる。
「馬車が盗賊から逃げているようなんですが、神官長様に指示をあおぐ前にあのバカっ、いえ、アランが一人で助けに下へ降りてしまって」
「倒せそうなのか?」
フェ様の質問に、シーラさんの顔に暗い影がよぎる。
「私たち二人も下に降りればあれしきの数、簡単に倒せます。ただ、アランが先に下に降りてしまったので、下に降りる手段がないんです。危険な場所にフェリシアに降りてもらうわけには行きませんから」
「確かに。子供たちを危険にさらすわけにはいかん」
アミーちゃんはフェリシアで下に降りると聞いた瞬間、大きく体を震わせた。
私はアミーちゃんの不安が少しでも和らぐようにアミーちゃんの両手を包む。
キャシーちゃんとハルくんもお互いの手を握り合い、体を寄せて恐怖を紛らわせていた。
「それで、私の許可と言うのは?」
フェ様は一人冷静で、その冷静さが逆に心強い。
「はいっ。フェリシアの高度を少し下げていただきたいのです。盗賊団の攻撃範囲外のところで私たちは飛び降り、盗賊団を倒します。私たちが飛び降りた後でフェリシアはすぐに高度を上げてもらってかまいません」
「その間の我々の護衛はどうするのかね?護衛の仕事を放棄したと取られても仕方がないが?」
シーラさんはフェ様の言葉に一瞬言葉がつまる。
「仲間を見殺しになんてできません!」
けれど、すぐにフェ様に向かってキッパリと言い切る。
「シーラっ!アランが下に到着して、今一人で盗賊団と戦っている!」
「何ですってっ⁉️」
「盗賊団は二手に別れて、一方は馬車に。それでもあのままではアランはっ」
マーヴェイさんの言葉で、もう時間がないことを知る。
「神官長様、どうかご許可をっ!」
シーラさんの切羽詰まった声が竜籠の中に響き渡る。
「高いところから飛び降りて、君たちはすぐに戦えるのか?」
「マーヴェイが土魔法を使えるので、なんとかします!」
この間にもアランさんは一人で盗賊団と戦っているのだ。
私はフェ様たちをただ眺める事しかできなかった。
━━できなかったはずなのに、リードの一言で全てが変わる。
『姐さんが倒しちゃえばいいんじゃないか?』
えっ⁉️私がっ⁉️
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