私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

78 マール町の停留所①

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「神官長様、そろそろ出発しましょう」
「わかった」

昼休憩は時間にして、1時間ほどだった。みんなで使ったものを元の位置に戻して、来た時と同じ状態にする。

「うう。また竜籠まで上らなきゃダメなのね」

キャシーちゃんはまだ慣れないみたいで、顔を青くしている。

「これから一週間、何度も上り下りしないといけないんだから、泣き言言わないっ!お互いに頑張ろうっ」

アミーちゃんは自分も苦手みたいなのに、キャシーちゃんを励ましている。
私も励ましてあげたいけど、怖がってない私が励ましても逆効果な気がして、諦める。
その間にも、アランさんたちは着々と出発の準備を進めていた。
梯子は折り畳み式になっていて、マーヴェイさんとアランさんが梯子を伸ばして、ロンさんの指示のもと、フェリシアの体に梯子をかける。


「俺は操縦席に行っているぜ」

梯子がかかったのを見届けてから、ロンさんはそう言うと、フェリシアの正面に向かって歩く。
そう言えば、ロンさんってどうやってフェリシアの頭に移動したのかな?
気になって、ロンさんを見つめていると、フェリシアの正面まで言って、歩くのをやめる。
フェリシアが顔を地面すれすれまで下げると、ロンさんがフェリシアの頭に乗り、そのまま首の付け根まで移動する。
よく見ると、付け根には操縦席のような座椅子が取り付けてあり、そこにロンさんは座った。
あそこで操縦してたんだ。
一つ謎が解けてスッキリした。

「さあ、俺たちも竜籠に戻るぞ」
「「「「はい」」」」

先程と同じように、マーヴェイさんが先に上ると、ロープを垂らしてくれたので、私たちは順番に竜籠につれていってもらう。

「今日はあと何回上り下りしないといけないの?」

キャシーちゃんは椅子にぐったりと座り込む。今回は叫ぶことはなく上りきったキャシーちゃんだったけど、やっぱり怖かったみたいで顔色が悪い。

「あと2回ね。竜も休ませてあげたいから、ごめんね」
「あ。はいっ」

キャシーちゃんは独り言のつもりだったみたいで、シーラさんに謝られて慌ててた。

「では、俺たちはまた外で護衛をしてますので」
「うん。よろしく頼むよ」
「「「はい」」」

しばらくはみんなでおしゃべりしたり、お外の景色を見たりしていたけれど、お昼御飯を食べたこともあって、眠くなる。他の3人も同じだったようで、私たちはいつの間にか眠りに引き込まれていった。


*****************

トントン

「皆さん、マール町が見えてきましたよ」

私たちはあれから一回の休憩を挟んだあと、今回泊まる予定のマール町に向かったのだ。
アランさんの声に、みんなで窓を覗き込む。
遥か上空から見たマール町は、建物の色が白で統一されていて、とてもきれいな町並みだった。

「町の外に竜便の停留所がありますので、そこに向かいます。停留所から指示が来るまで、しばらく停留所の上を旋回しますので、場合によっては少し時間がかかるかもしれません」
「わかった」

こんな上空にいる私たちにどうやって連絡を取るのかな?
フェ様なら知ってるかも。私は早速フェ様に聞くことにした。

「神官長様、停留所の人たちとどうやって連絡を取り合うんですか?」
「停留所にいる人が望遠鏡で、こちらを見ているのがわかりますか?」

フェ様に言われ、窓から下を見ると、先程よりも下に降りたのか、停留所に人がいるのがはっきり見える。確かに何か筒のようなもの両手で持ち、片目に当てている。

「あの筒のようなものですか?」
「そうです。あれは遠くのものを拡大してみることができる道具で、その道具を使って竜に足輪がついているか確認しているんです」
「足輪がついていると良いんですか?」
「ええ。この国にいる竜にはすべて足輪が取り付けてあって、その足輪で竜の管理をしているんです。もし、足輪の無い竜の場合は停留所に降りることができず、もっと町から離れた場所に降りることになります」
「でも、本物そっくりの足輪をつけてたら?間違えちゃうこと無いんですか?」

アミーちゃんからの質問に、フェ様は驚いたようで、軽く目を見張っている。

「おや。よく考え付きましたね。確かに50年ほど前の隣国との戦争時に、騙して町に入ろうとした隣国の兵士たちがおりましたが、足輪は魔道具でしてね。詳しいことは言えないのですが、間違えることはないのですよ。彼らは報いを受けました」

報いって、何を受けたんだろう?
気になるけど、何故か私の本能が聞いてはいけないと訴えてくるので諦める。
他のみんなも顔を青くして黙りこんでいるので、同じ気持ちなんだと思う。

「まあ、今回の旅では事前に泊まる町に大体の日程と竜の情報を伝えてありますから、すぐに町に降りれますよ」

そんな私たちの様子にはフェ様は全く気づくことなく、私たちに向かってにっこりと微笑んだ。

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