私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

文字の大きさ
上 下
29 / 278
第2章 王都へ

75 滑りたいです!

しおりを挟む
 トントン

「はい」

窓の外からノック音が聞こえ、外を見るとアランさんが窓から見える位置に立ってい、顔を覗かせていた。

「神官長様、休憩のため一度下に降りようかと思いますが、よろしいですか?」
「ああ。まかせる」
「わかりました」

アランさんは返事をすると、そのままどこかに行ってしまう。

「どうしてあんなに普通に歩けるのかな?」

フェリシアの背中は広いと言っても、空の上を飛んでいるわけだから、風をまともに受けているはずなのに、普通に立って、歩いている。
 
『あいつらは風魔法を使って、風を無効にしているんだな。長時間持続できるのは好意持ちだからだ』

私の呟きに反応して、リードが答えてくれる。

「そうなんだ」

一人納得していると、アミーちゃんから興味津々に聞かれる。

「もしかして、今、精霊様とお話ししてたの?」
「あ。うん」
「えーっ⁉️精霊様はなんて?」
『そのピンクの子に姐さんは許しても俺は許してないからな、って言っておいて』

リードの大人げない態度に半目になりつつもキャシーちゃんの質問に答える。

「アランさんたちが何で外で普通に歩けるのか聞いたら、風魔法のおかげだって教えてくれたの。それに、こんなに長い間持続できるのは称号持ちに違いないって言ってたよ」
「精霊様の仰る通り、アランは風の精霊様の好意持ちです。今回彼らに依頼したのもそれが理由ですね。竜の翼に風を送ったり、風の抵抗を少なくしたりと、風の精霊様の好意持ちが一人いるだけで大分違うんですよ」

フェ様が私の言葉を聞いて、教えてくれた。やっぱり好意持ちだったんだ。


ズシンッ

音の後、微かな振動が来る。

「どうやら下に降りたようですね」

トントン

フェ様の言葉の後、扉がノックされる。

「はい」

フェ様の返事の後、アランさんとシーラさんたちが部屋の中に入ってきた。

「到着しましたので、下に下りましょう」
「また、椅子に乗って移動なの?」

キャシーちゃんは先程の事を思い出したのか、顔色が悪い。

「ごめんね。それしか方法がないんだ」

アランさんが申し訳なさそうに言うけど、その方法を変える気はないようだ。

「他にもやり方はあるけど、この方法が一番安全なのよ」

シーラさんはそう言って竜籠の中に置いてあった背椅子を背負う。

「他のやり方ってどんな方法ですか?」

アミーちゃんは気になったのか、シーラさんに聞く。

「下りるだけなら、滑り台のように滑って下りる事も可能よ。ただ、全長10メートルの滑り台だけど。滑りたい?」

シーラさんに聞かれ、アミーちゃんとキャシーちゃんは首を激しく横に振る。
私は滑ってみたいかも。

「おや、サラ様は滑りたいのですか?」

フェ様はそんな私の様子に気づいたのか、聞いてくる。
言っても良いのかな?

「は、はい。滑ってみたいです」
「え?滑ってみたいの?」

私の言葉が意外だったのか、アランさんはとても驚いている。

「彼女は風魔法も巧みに操ることができるから大丈夫だよ」
「この年齢でですか?」

フェ様が擁護してくれたけど、アランさんは信じてないみたい。

「ああ。以前も竜の背から誰の補助もなく風魔法で飛び降りていたよ」
「あんたそんな恐ろしいことしてたの?」

フェ様の言葉に、キャシーちゃんが信じられないものを見るような目で私を見てくる。

「風をクッションにして、階段のように下りただけだよ」
「そこまで風魔法を操ることができるんなら十分だよ。すごいね」

アランさんは信じてくれたみたいで、感心したように誉めてくれる。

「では、サラさん以外は梯子での移動で。君は一番最後に俺と下に下りよう」

でも、やっぱり心配だったみたいで、私は一番最後にアランさんと一緒に滑って下りることになった。


---
12/26  文章を修正しました

誤:シーラさんに聞かれ、アミーちゃんと《サラちゃん》は首を激しく横に振る。

正:シーラさんに聞かれ、アミーちゃんと《キャシーちゃん》は首を激しく横に振る。

しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果

あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」 ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。 婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。 当然ながら、アリスはそれを拒否。 他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。 『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。 その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。 彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。 『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。 「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」 濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。 ······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。 復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。 ※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください) ※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。 ※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。 ※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。