私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

71 落ち込むのは危険です

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しばらく気まずい雰囲気が続いたところで、シーラさんではなく、アランさんが竜籠の中に入ってくる。
背中の椅子にはハル君が座っていた。
 マーヴェイさんがベルトを外すと、ハル君は椅子から飛び降りてすぐに、キャシーちゃんのもとに向かう。

「すごい悲鳴が聞こえてたけど、大丈夫か?」
「ハルくーんっ!怖かったよー」

キャシーちゃんは泣きそうな顔で、ハル君の腕に抱きつく。
ハル君は顔を赤くしながらも、キャシーちゃんをなだめてる。
その姿を見て、私は反省する。
こんなに怖がっているのに、私はキャシーちゃんを労るどころか、怒らすようなことしかしていない。
何がいけなかったか、よくわからない内は、キャシーちゃんをこれ以上怒らせないよう黙っていよう。

「あの娘は大丈夫そうか?」
「ん」
「そうか。じゃあ、俺は残りの人たちを迎えにいってくるから」
「ああ」

アランさんはキャシーちゃんの様子をマーヴェイさんに確認した後、下に下りていく。

「ハル君は怖くなかった?」
「あれくらい平気だよっ」
「すごーいっ」

キャシーちゃんとハル君は仲良くお話をしていたので、この隙にマーブルをポシェットの中から出してやる。
マーブルは体を伸ばした後、私の膝の上におさまると、先程キャシーちゃんに掴まれた手首の辺りを舐めてくる。

「ふふ。もう痛くないから大丈夫だよ」

 マーブルの頭を撫でて、安心させる。

『でも、回復魔法を使った方がいいぜ。手首が赤くなってる』
「え?」

リードの言葉に慌てて手首を見ると、確かにほんのり赤くなっている。

「ほんとだ」

でも、痛みは無いし、回復魔法を使うほどでもないかな?
悩んでいると、リードが私の手首に触れるような仕草をする。リードを見ると、とても心配そうに手首を見ていた。

『姐さんは肌が白いから、すぐに赤くなるんだな。アザになる前に治した方が良い』
「にゃんっ」
「う、うん」

この2週間ほど、ふざけた姿しか見ていなかったので、真剣な姿に戸惑う。
でも、リードとマーブルがこんなちょっとの事でも心配してくれて、とても嬉しかった。
これ以上心配させ無いためにも、回復魔法を使おう。

「あれ。サラ、手首が赤くなってるけど、大丈夫か?」
「あっ。えっと」

こっそりと回復魔法を使おうとしたけど、その前にハル君に見つかってしまい、言葉につまる。
キャシーちゃんは手首が赤くなった原因に思い当たったのか、顔を青くする。

「うん。ちょっと、どこかで擦ったのかな?そんなに大したことないんだ。心配してくれて、ありがとう」

わざとでは無いことはわかってたので、ハル君に言うつもりはなかった。

「サラって、そそっかしいんだな。気を付けろよ」
「うん」

なんとか誤魔化せて、ほっとする。
ふと、視線に気づいて横を見ると、キャシーちゃんがこちらを見ていて、視線が合う。
心配してくれたのかな?
安心させるようと、キャシーちゃんに笑って見せると、慌てたように体ごと視線を逸らされる。
私ってキャシーちゃんに嫌われてるのかな?
しょんぼりしながら、自分に回復魔法をかける。

『姐さん、燃やしたくなったら、いつでも言ってくれよ』

そんな私の姿を見て、リードはとても良い笑顔で言った。

絶対ダメです!


どうやら私は、精霊様の前では落ち込むこともできないようだ。
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