私がいつの間にか精霊王の母親に!?

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)

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第2章 王都へ

69 自己紹介

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「体には気を付けてね。無理だと思ったら、我慢せずに帰ってきなさい」
「うん・・・」

いよいよ本当に出発の時を迎え、お母さんたちとお別れの挨拶をする。
自分で決めた事とはいえ、二人に長い間会えないと思うと、とても寂しい。
思わずお母さんに抱きつく。

「あら、あら。サラは甘えっ子ね。これから一人で生活しなくちゃいけないのに、大丈夫?」
「大丈夫だもん!でも、今はお母さんがいるから甘えて良いの!」
「ふふ。そうね。お別れする前に、私にあなたを抱き締めさせてちょうだい」

お母さんにしっかりと甘えた後は、お父さんに抱きつく。

「たまにはお父さんたちに手紙を書いてくれよ。王都での生活を知るのを楽しみにしてるからな」
「うん!いっぱい書くね」

フェリシアの体にかけてある梯子に近づく、梯子の先には竜籠が見える。

「ここを上るの?落ちないかな?」

キャシーちゃんが怖いのか、ハルくんの腕にしがみつき、聞いている。
梯子の長さは10m位、確かに自分の足で上がるのは大変そうだ。

「お別れの挨拶がすみましたら、これから一緒に旅をする者たちを紹介します」
「「「「はいっ」」」」

神父様から声をかけられ、梯子を見るのをやめて、神父様に目を向ける。

「旅の間、竜の操縦や世話をしてくれる竜操士のロンさん」
「ロンだ。よろしくな」
「「「「よろしくお願いします」」」」

ロンさんは神父様の言葉に片手を挙げて、挨拶してくれる。

「次に護衛のお三方ですが、左からアランさん、シーラさん、マーヴェイさん」
「アランだ。一週間、よろしくな」
「シーラよ。かわいい子達ばかりで嬉しいわ」
「・・・よろしく」
「「「「よろしくお願いします」」」」

アランさんは目鼻立ちの整った人で、こちらを安心させようと笑顔で話しかけてくれる。
キャシーちゃんはアランさんの笑顔を見て、真っ赤になっている。    
シーラさんはスタイル抜群の女性で、豊かな赤い髪をポニーテールでまとめてる。
マーヴェイさんは寡黙な人なのかな?
ロンさんよりも更に大柄な人で、無表情で言葉少なめな所が、少し近寄りがたい印象を受ける。
アランさんとシーラさんは背中に椅子のようなものを背負っていた。


「今からマーヴェイが先に竜籠に上がって、上からロープを下ろすから、君たちは私やシーラと一緒に上がってもらう。神官長様もそれで良いですね?」
「「「「はいっ」」」」
「わかった」

マーヴェイさんは命綱もつけないで、軽やかに梯子で上がって行く。
しばらくすると、上からロープが振ってきた。

「誰が最初に上がる?」

アランさんに聞かれて、みんなが黙りこむ。かなりの高さがあるから、みんな怖いのかな?

「あのっ。私が行きます」
「あら、お嬢さんが最初で良いの?」
「サラって言います。私、高いところ平気だから。ただ、猫も一緒なんですけど、大丈夫ですか?」
「猫?」
「はい。このポシェットの中にいます」
「にゃん」

シーラさんにマーブルを見せる。

「あら、可愛らしい子猫ね」
「マ、マーブルはこれで成猫なの。もう1歳なんだよ」
「あら?そうなの?」
「うん」「にゃんっ」

シーラさんの目を見て話すことはできなかったけど、何とかどもらないで言えた。

「私の背負っている椅子に乗ってくれる?椅子にベルトがついているから、アランに手伝ってもらって、固定してね。その猫ちゃんはあなたがしっかり抱えていてね」
「はいっ」

シーラさんはロープを自分の腰に巻き付けた後、後ろを向いて座ってくれる。私はその椅子に座ると、アランさんがベルトを固定をしてくれた。
お父さんたちが心配そうにこちらを見ている。二人に笑顔で手を振ると、振り返してくれた。
これで、本当に二人とお別れだ。
私はマーブルをポシェットの上から抱き締める。


「じゃあ、立ち上がるわよ」
「お願いします」

シーラさんが立ち上がると、一瞬、浮遊感が襲う。

「怖かったら目を閉じてるのよ」

そう言って、シーラさんは梯子に足をかけ、ぐんぐんと上がっていく。

「私、重くないですか?」
「ふふ。このくらい平気よ。それよりも、揺れるから舌を噛まないように口を閉じていた方が良いわよ?」
「あ、はい」

口を閉じて、大人しく景色を楽しんでいたら、あっという間に竜籠にたどり着く。竜籠の中で、ベルトをはずしてもらうと、シーラさんはすぐに下りていく。
竜籠の中は思ったよりも広く感じた。
長椅子にはいっぱいのクッションが置いてあり、座り心地も良さそう。
しばらく中の様子を見ていると、マーヴェイさんに抱き上げられ、椅子に座らされる。
一瞬の事だったので、よくわからずキョトンと、マーヴェイさんを見つめる。

「入り口近くは危ないから」

確かに、次の人が来るときに入り口にいたら邪魔だもんね。
マーヴェイさんに言われて納得する。

「気づかなくって、ごめんなさい」
「ん」

マーヴェイさんは私が謝ると、言葉少なに頷いてくれる。
無表情だと思っていた顔をよく見ると、目が優しく細められていた。

「あの。この竜籠でマーヴェイさんは狭くないですか?」

せっかく二人きりなので、気になった事を聞いてみる。
マーヴェイさんは目を外に向けたまま、質問に答えてくれた。

「慣れてる」
「でも、立ち上がると頭ぶつけちゃいませんか?」

今は床に座っているから良いけど、立ち上がったら絶対に頭をぶつけてしまいそうだ。

「俺たちは外にいるから」
「外?」
「移動中は俺たちは竜籠の外で護衛してるんだ」
「えっ!大変じゃないですか?」
「慣れてるから」

一緒に竜籠の中にいると思っていたので、驚く。
マーヴェイさんは私からこんなに色々と聞かれるとは思っていなかったのか、困って目がきょときょとしてる。
聞きすぎちゃったかな?
謝ろうかどうしようか悩んでいたら、外から声が聞こえてきた。

「イヤーッ!」

この声はキャシーちゃん⁉️
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