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昔々あるところに
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昔々あるところに、マイクと言う青年がおりました。
マイクにはノーラと言う幼馴染みの娘がいて、二人は幼い頃から将来を誓い合う仲でした。
「それって、ご両親の事ですよね?」
「そうとも言います」
しかし、ノーラは村一番の美女として村の若者に人気があり、ノーラが結婚できる年齢になると、村にいる全ての若者がノーラの家にこぞって求婚しにやって来ました。
それは、村一番の狩人であり、村娘たちの憧れの的であるトムも例外ではありません。
トムは森で刈った獲物を毎日貢ぎ物としてノーラの家まで持ってやってきました。
猪や鹿、豚に果ては果実まで、駆け出しの狩人であるマイクにはとても手が出せないような品物ばかりで、いつしかマイクはノーラがトムに心変わりをしてしまうのではないかと不安になるのでした。
一方のノーラはと言うと、とりあえずもっと獲物を貢がせてから断ろうと考えていました。
ノーラの気持ちは全く変わっていなかったのです。
「女の人って…」
「意地汚いと評判の母ですから。ちなみに、トムさんは別の方と結婚されて、今では幸せに暮らしてますよ」
そんなノーラの気持ちは露知らず、このままではいけないと奮起したマイクは今まで入ったことのない森の深部まで足を踏み入れることにしました。
トムが刈ったこともない獲物を刈って、ノーラに捧げるためです。
マイクは自分を奮い立たせるため、とりあえず歌うことにしました。
すると、どうしたことでしょう。
一羽の鶏がマイクの歌を聞き付けて、マイクのもとにやって来たのです。
最初マイクは村にいた鶏が脱走したのかと考えましたが、尻尾の部分が今まで見たことのない形状をしていることに気づきました。
─こんな形状をした鶏は見たことがない。きっと、新種の鶏に違いない!
トムも刈った事のない獲物なのは間違いありません。マイクは喜び勇んで鶏を仕留めようとしますが、鶏は動じることなくマイクに向かって高らかに鳴き始めます。
─こけこっこ~♪こっこっこ~♪
それは先程のマイクの歌を模して歌っているかのようでした。
マイクはその歌声を聞いて、何故だか自分も歌わなければいけないような、そんな使命感にとらわれました。
「どうしてそうなるんですか?」
「それだけ、鶏の歌声が素晴らしかったそうですよ?」
そしてしばらく一人と一羽でデュエットを楽しんだ後、マイクの周りは歌を聞き付けた鶏で一杯になりました。
戸惑うマイクに最初の鶏が訴えます。
俺たちを村に連れて行ってくれ、と。
「は?」
「なんか、目で訴えられたそうです」
こうして、マイクは数十羽の鶏を生きたまま村に連れてくることに成功すると、鶏たちはそれは濃厚で美味しい卵を村人たちに提供してくれるようになりました。
その功績は村一番の狩人であるトムも認めざるを得えませんでした。
村中から一流の狩人として認められたマイクはノーラと結婚することができたのでした。
めでたし、めでたし。
「で、父が最初に出会った鶏がこのアレキサンダーさんです」
「こけっ!」
「はぁ。もう、何が何だか」
ローラが小屋の中にいるひときわ大きな鶏を指し示すと、名前に反応したアレキサンダーが挨拶するかのように一声鳴いた。
アレキサンダーは落ち着いているが、いまだに他の鶏たちはそわそわと落ち着きがない。
「まさかこの子達が魔物だとは驚きました。歌が大好きな子達なので、歌さえあれば大人しいものなんですよ。父は歌が得意なので、アレクサンダーさんも父の事は認めてるんですが、母は歌が下手なので、よくつつかれてます。それでも、切り傷ぐらいで前に飼ってた鶏とたいして変わらないそうですし。…本当に魔物なんですかね?」
ラインハルトを説得するためにアレキサンダーたちが村にやって来た経緯を伝えたのだが、ラインハルトには到底納得できない話だったようだ。
それでも、アレキサンダーたちに害意がない事を説明するローラであったが、説明するうちにだんだんとラインハルトの方が間違っているのではないかという気持ちになってくる。
15年以上もの間、アレキサンダーたちは村の家畜として生活を共にしているのだ。
ただの鶏が15年も生きているのかどうかはおいておいて。
「つつかれて無事なんですか?コカトリスは協力な毒を持つ魔物ですよ!?」
「やっぱり別物なんじゃないですかね?つつかれて死んだ人間なんてこの村にはいませんよ?」
「本来は毒を持つ凶暴な魔物なはずなんです。兵士だとて一人で戦った場合には危険が伴います。歌で大人しくなるなんて聞いたこともありません」
「試したことがないだけじゃないですか?」
歌と餌さえあれば、基本ご機嫌な鶏たちなのだ。
「「「「「コケコッココー♪」」」」」
鶏たちがローラに意見に同意するように高らかに鳴いた。
マイクにはノーラと言う幼馴染みの娘がいて、二人は幼い頃から将来を誓い合う仲でした。
「それって、ご両親の事ですよね?」
「そうとも言います」
しかし、ノーラは村一番の美女として村の若者に人気があり、ノーラが結婚できる年齢になると、村にいる全ての若者がノーラの家にこぞって求婚しにやって来ました。
それは、村一番の狩人であり、村娘たちの憧れの的であるトムも例外ではありません。
トムは森で刈った獲物を毎日貢ぎ物としてノーラの家まで持ってやってきました。
猪や鹿、豚に果ては果実まで、駆け出しの狩人であるマイクにはとても手が出せないような品物ばかりで、いつしかマイクはノーラがトムに心変わりをしてしまうのではないかと不安になるのでした。
一方のノーラはと言うと、とりあえずもっと獲物を貢がせてから断ろうと考えていました。
ノーラの気持ちは全く変わっていなかったのです。
「女の人って…」
「意地汚いと評判の母ですから。ちなみに、トムさんは別の方と結婚されて、今では幸せに暮らしてますよ」
そんなノーラの気持ちは露知らず、このままではいけないと奮起したマイクは今まで入ったことのない森の深部まで足を踏み入れることにしました。
トムが刈ったこともない獲物を刈って、ノーラに捧げるためです。
マイクは自分を奮い立たせるため、とりあえず歌うことにしました。
すると、どうしたことでしょう。
一羽の鶏がマイクの歌を聞き付けて、マイクのもとにやって来たのです。
最初マイクは村にいた鶏が脱走したのかと考えましたが、尻尾の部分が今まで見たことのない形状をしていることに気づきました。
─こんな形状をした鶏は見たことがない。きっと、新種の鶏に違いない!
トムも刈った事のない獲物なのは間違いありません。マイクは喜び勇んで鶏を仕留めようとしますが、鶏は動じることなくマイクに向かって高らかに鳴き始めます。
─こけこっこ~♪こっこっこ~♪
それは先程のマイクの歌を模して歌っているかのようでした。
マイクはその歌声を聞いて、何故だか自分も歌わなければいけないような、そんな使命感にとらわれました。
「どうしてそうなるんですか?」
「それだけ、鶏の歌声が素晴らしかったそうですよ?」
そしてしばらく一人と一羽でデュエットを楽しんだ後、マイクの周りは歌を聞き付けた鶏で一杯になりました。
戸惑うマイクに最初の鶏が訴えます。
俺たちを村に連れて行ってくれ、と。
「は?」
「なんか、目で訴えられたそうです」
こうして、マイクは数十羽の鶏を生きたまま村に連れてくることに成功すると、鶏たちはそれは濃厚で美味しい卵を村人たちに提供してくれるようになりました。
その功績は村一番の狩人であるトムも認めざるを得えませんでした。
村中から一流の狩人として認められたマイクはノーラと結婚することができたのでした。
めでたし、めでたし。
「で、父が最初に出会った鶏がこのアレキサンダーさんです」
「こけっ!」
「はぁ。もう、何が何だか」
ローラが小屋の中にいるひときわ大きな鶏を指し示すと、名前に反応したアレキサンダーが挨拶するかのように一声鳴いた。
アレキサンダーは落ち着いているが、いまだに他の鶏たちはそわそわと落ち着きがない。
「まさかこの子達が魔物だとは驚きました。歌が大好きな子達なので、歌さえあれば大人しいものなんですよ。父は歌が得意なので、アレクサンダーさんも父の事は認めてるんですが、母は歌が下手なので、よくつつかれてます。それでも、切り傷ぐらいで前に飼ってた鶏とたいして変わらないそうですし。…本当に魔物なんですかね?」
ラインハルトを説得するためにアレキサンダーたちが村にやって来た経緯を伝えたのだが、ラインハルトには到底納得できない話だったようだ。
それでも、アレキサンダーたちに害意がない事を説明するローラであったが、説明するうちにだんだんとラインハルトの方が間違っているのではないかという気持ちになってくる。
15年以上もの間、アレキサンダーたちは村の家畜として生活を共にしているのだ。
ただの鶏が15年も生きているのかどうかはおいておいて。
「つつかれて無事なんですか?コカトリスは協力な毒を持つ魔物ですよ!?」
「やっぱり別物なんじゃないですかね?つつかれて死んだ人間なんてこの村にはいませんよ?」
「本来は毒を持つ凶暴な魔物なはずなんです。兵士だとて一人で戦った場合には危険が伴います。歌で大人しくなるなんて聞いたこともありません」
「試したことがないだけじゃないですか?」
歌と餌さえあれば、基本ご機嫌な鶏たちなのだ。
「「「「「コケコッココー♪」」」」」
鶏たちがローラに意見に同意するように高らかに鳴いた。
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