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魔王城編
魔王城、中層探索 (1)
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またひと晩明けて、私は図書室で読書の続き、ライナスも蔵書確認の続きをそれぞれ朝から再開した。ライナスはやはり作業が速く、私が休憩する頃には図書室調査を終えていた。
前日ライナスに教えてもらった時計は、図書室の出入り口の上に掛けられていた。
丸い文字盤だけの、不思議な時計だ。ネジを巻くための穴がなく、振り子もない。音もしない。いったいどんな原理で動いているのか不思議で仕方ないが、ちゃんと時を刻んでいた。
図書室調査を終えたライナスは、ひとりで中層の探索に出かけた。
私は図書室でお留守番だ。
昼前に、私は上級回復魔法書を読み終わった。意外なことに、上級だからといって特に難易度が上がるわけではないようで、読み終われば魔法が使えるようになっていた。
ただし魔法を覚えるの自体はそう難しいことではないものの、初級や中級の魔法とは決定的に違う点があった。上級魔法を使うと、身体からごっそり魔力が抜けていく感覚があるのだ。何回も連続して使ったりするのは、たぶん無理。初級や中級の回復魔法だったら、際限なくいくらでも使えそうなのに。中級と上級では魔法の効果に差が大きいから、仕方ないことなのかもしれない。
連続して何回まで使えるものなのか、自分の限界を知っておこうと、最上級の回復魔法を自分に対してかけてみた。十回を数えたところで、魔力がもう残りわずかなのが感じられた。感覚的にあと一回分には少し足りないようだったのだけど、念のためもう一回かけてみた。
指先から魔法が発動しかけて消え、くらっとめまいがした。
まずい、立ちくらみだ。
この部屋の床は黒大理石でできているから、ばたんと棒のように倒れたりしたら、打ちどころ次第では命にだって関わりかねない。あわてて本を手放し、両手で頭を抱え込んでしゃがんだが、そのまま視界は黒い闇で覆われて、意識が遠のいていった。
まあ、でもただの立ちくらみだから、数秒で視界が戻るだろうと思っていたのだけど────。
前日ライナスに教えてもらった時計は、図書室の出入り口の上に掛けられていた。
丸い文字盤だけの、不思議な時計だ。ネジを巻くための穴がなく、振り子もない。音もしない。いったいどんな原理で動いているのか不思議で仕方ないが、ちゃんと時を刻んでいた。
図書室調査を終えたライナスは、ひとりで中層の探索に出かけた。
私は図書室でお留守番だ。
昼前に、私は上級回復魔法書を読み終わった。意外なことに、上級だからといって特に難易度が上がるわけではないようで、読み終われば魔法が使えるようになっていた。
ただし魔法を覚えるの自体はそう難しいことではないものの、初級や中級の魔法とは決定的に違う点があった。上級魔法を使うと、身体からごっそり魔力が抜けていく感覚があるのだ。何回も連続して使ったりするのは、たぶん無理。初級や中級の回復魔法だったら、際限なくいくらでも使えそうなのに。中級と上級では魔法の効果に差が大きいから、仕方ないことなのかもしれない。
連続して何回まで使えるものなのか、自分の限界を知っておこうと、最上級の回復魔法を自分に対してかけてみた。十回を数えたところで、魔力がもう残りわずかなのが感じられた。感覚的にあと一回分には少し足りないようだったのだけど、念のためもう一回かけてみた。
指先から魔法が発動しかけて消え、くらっとめまいがした。
まずい、立ちくらみだ。
この部屋の床は黒大理石でできているから、ばたんと棒のように倒れたりしたら、打ちどころ次第では命にだって関わりかねない。あわてて本を手放し、両手で頭を抱え込んでしゃがんだが、そのまま視界は黒い闇で覆われて、意識が遠のいていった。
まあ、でもただの立ちくらみだから、数秒で視界が戻るだろうと思っていたのだけど────。
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