死の予言のかわし方

海野宵人

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本編(シーニュ王国編)

結婚式後の鬼ごっこ (1)

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 ヨゼフがアントノワ家にやって来てから、早いものでひと月が過ぎた。
 学校では相変わらず気の滅入るような日々だが、オスタリアの留学生たちとマグダレーナのおかげで何とか過ごせている。

 ヨゼフの恩人の子どもたち四人は、ヨゼフが屋敷に来た二日後にやって来た。
 一番上の十八歳の娘は、アンヌマリーとマグダレーナ付きの小間使いとなった。名目上は小間使いとしているが、実質的には行儀見習いのようなものだ。

 二番目の十歳の少年は、料理人見習いとして厨房入りした。「そろそろ引退したい」が口癖の料理長が、孫のようにかわいがっているらしい。

 三番目の七歳の女の子と、一番下の五歳の男の子は、それぞれメイド見習いと従者見習いとしてノアと一緒に過ごしている。要するに、ノアと遊ぶのが仕事だ。
 この二人はなかなかよい仕事をする、と乳母が喜んでいた。

 子どもの数が増えるのだから乳母の負担が増えそうなものだが、七歳の女の子が年齢の割にとてもしっかりしていて、下の子たちの面倒をよく見る。中庭に連れていけば、放っておいても子どもたちだけで走り回り、乳母は見ていればよいだけなので、かなり楽になったそうだ。
 歳の近い友だちができたことで、ノアには対抗心が生まれ、張り合うために努力することを覚えつつある。これにはヨゼフの功績も大きい。

 すっかりヨゼフに懐いたノアは、ヨゼフに褒められたくて仕方がない。
 ところが今までは何をしてもちやほやされていたのに、ヨゼフは本当に努力して頑張ったときにしか褒めなかった。「何ができるか」ではなく「どれだけ頑張ったか」でしか、褒めるということをしないのだ。しかもズルをしようとしても、必ず見透かされる。それを悟ると、ノアはいろいろなことを真剣に頑張り始めた。
 とにかくこの四人はこんな具合に、このひと月の間にアントノワ侯爵家に溶け込んでいた。

 そして秋休みに入って最初の週末である今日、一番上の娘の結婚式が行われる。
 アントノワ侯爵家が後ろ盾であることを示すために、持参金は彼女の亡き父が用意したものに上積みしておいたと、母オリアンヌは言っていた。

 聖堂で挙げた式では、ロベールとオリアンヌが花嫁の親代わりとして出席した。
 式の終わりに、感極まって涙を浮かべている花嫁にロベールは声をかけた。

「うちを実家と思って、いつでも下の子たちに会いにおいで」
「はい。何から何まで、本当にありがとうございました」
「ヨゼフに頼まれたからね。礼なら彼に言ってくれたまえ」

 ロベールとオリアンヌは、式が終わると屋敷に戻って行った。
 式の後は、花婿の家でお披露目の宴が開かれる。
 ヨゼフとともに、アンヌマリーとマグダレーナが招かれていた。もちろん、花嫁の弟妹もだ。

 ヨゼフは子どもたちを引率して一台の馬車に、アンヌマリーとマグダレーナは別の馬車にと、二台に分乗して出かけた。

 アンヌマリーとマグダレーナは、平民の宴に参加するのは初めてだ。場違いではないかと緊張していたが、終始ヨゼフがそばにいて解説をしてくれたおかげで、習慣の違いで困ることはなかった。
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