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ざまぁされちゃった王子の回想録

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 私が社交に顔を出すようになると、若い女性たちからのアプローチも激増した。中でも、とある侯爵家の娘はしつこかった。「婚約者候補筆頭」を自称し、他の若い女性たちを蹴散らそうとする。彼女が婚約者候補の筆頭だなんて、ありえないことなのに。だって私は、この娘がどうにも苦手だ。くさいし、しつこいし、けばけばしくて品がない。

 家柄と年齢だけを考えるなら、確かに婚約者候補にはなり得るのかもしれない。
 だが実際には、私の好みも必ず考慮されるから、彼女が候補になるなんてことは絶対にあり得ない。たとえ政略結婚であろうとも、本人の意向が完全に無視されることはないのだ。

 だって家と家を結びつけるための婚姻なのに、肝心の本人同士の仲が険悪だったら、意味がないどころか逆効果ではないか。婚姻以外の方法で手を組むことを考えたほうが、よほどマシというものだ。

 実際、父の例を見ればよくわかる。父はきちんと継母を大事にしている。
 私の亡き母のことを忘れずにいると言っても、悼むのは年に一度、命日だけ。それ以外の日はずっと、今の家族を大事にしている。政略結婚だからこそ、決して粗略に扱ったりはしない。

 なのに侯爵家のこの娘は、これほどの自明の理をわかろうともせず、すっかり婚約者気取りだ。そして私の目の届かないところで、私が好意を寄せているミミにかみ付いていたらしい。

 そこで私はミミを守るために、彼女の参加する夜会には積極的に参加して、彼女に付き添うことにした。もっとも、ミミは華奢で可憐な容姿とはうらはらに、案外したたかで苛烈なところがある。私の庇護などなくとも、余裕で攻撃をかわすばかりか、時にはやり返すことさえあったらしい。

 話に聞くだけでも痛快だ。ぜひその場に居合わせたかった。
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