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ざまぁされちゃった王子の回想録

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 彼女と知り合ってから、私は以前よりまともに社交に励むようになった。ミミに会えるのは、社交の場に限られていたからだ。会っては話をして、少しずつ彼女のことを知っていく。

 ミミはとても教養が深かった。周辺国の言葉がひととおり話せるだけでもすばらしいのに、それぞれの国の有名な戯曲や詩集を完璧な発音でそらんじてみせる。自国の史劇も、ほとんど頭に入っているようだった。

 ミミは頭の回転が速く、どんな話題にも打てば響くように返ってくるし、私に思い違いがあれば間髪を入れずに容赦なく指摘される。だから話していて、とても楽しい。

 彼女はよく「母のように一流の女優になるのが夢なの」と言っていた。どこまで本気で言っているのかは、わからない。でも彼女なら、妖精の女王でも、純情可憐な村娘でも、見事に演じきってみせそうな気がした。
 そして彼女は小悪魔のようにいたずらっぽく微笑み、返事に困ることを言う。

「私には、悪女役が似合うと思わない?」
「どうだろう……」

 やれるかやれないかの話なら、きっとうまく演じるだろうと思う。けれども似合うかと問われれば、決して似合うとは思えなかった。大きな目をキラキラさせている彼女に、そんなことは言えなかったけど。

 私にはどんな役が似合うかと尋ねると、彼女は「あなたは、主役が向いていると思う」と言った。うっかり喜びそうになったが、続く言葉に浮かれた気分は吹き飛ばされた。

「主役なら、その容姿があれば何とでもなるもの。脇は演技派が支えてくれるわ」

 暗に、というか、もうはっきりと「取り柄は顔だけ」と言われている。全く褒めていないこの褒め言葉に、何とも言えず切ない気持ちになったものだ。だからといって「悪役の似合う男を目指す」というのも何か間違っている気がして、曖昧に微笑んで話題を切り替えた。
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