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旅は道連れ (1)

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 翌日、アンジーの要望どおり「船乗りの雑炊」を食べに行った。
 貴族はほんの少しの距離でも馬車を使うという印象がアンジーにはあったが、シモンは庶民と変わらず身軽に歩く。

 宿屋を出るとき、アンジーは不安そうな顔を見せた。

「ねえ、魚河岸は『世界で最も罪深い一区画』の近くだったりしないよね? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと危険な地域からは離れてることを確認してきました」
「そもそも昼間なら────いっ……!」

 ミリーはアンジーに安心させるよう微笑みかけてから、返事をする。
 その横でユリスがよけいなことを言いかけたのを察したミリーが足を踏みつけるのと、シモンが脇腹にひじ鉄を入れるのとは同時だった。こりない男である。
 うめき声を聞いたアンジーは、気の毒そうにユリスのほうを振り向いた。

「ユリスさん、またしゃっくり? 大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。背中を叩いとけば、すぐ治るでしょう」

 シモンは呆れたような目でユリスをにらみながら、その背中をぞんざいに何度も平手で叩き、小声で「もうほんと、お前は黙ってろ」とぼやいた。

 四人の向かった先は、魚河岸の近くにある食堂だ。
 前日の夕食をとったレストランとは違い、品揃えも価格も一般庶民向けの大衆食堂である。「船乗りの雑炊」は、その名のとおり船乗りのために考案された料理だ。長期保存できる具材ばかりを使って調理され、栄養満点かつ、分量もたっぷりと、ひと皿でも十分に食べ応えがある。
 アンジーはぺろりと平らげた。

「おいしかった!」
「おいしかったけど、今日はもう夕食はお腹に入りません」

 ミリーも完食はしたものの、食べ過ぎで胃がもたれている様子だ。

「確かに、私にもちょっと多かったな」

 苦笑いしているシモンの横で、しれっとユリスが追加で腸詰めを注文している。
 追加注文の皿が運ばれてくると、ミリーはそれを胸焼けしそうな表情で見ていたが、アンジーは興味津々だ。王都で見る腸詰めとは少し色と大きさが違うところに、興味を引かれたらしい。ユリスに勧められて一本口に入れたアンジーは、大きさだけでなく歯ごたえや風味も違うことに目を見張った。

「何だろ、ハーブで香り付けしてあるのかな。独特の風味があって、ふわふわ柔らかいの。おいしい」
「若いなあ。よく入るね」

 しあわせそうに頬張るアンジーを見て、シモンは笑った。
 食べ終わった後は、少し食休みをしてから出発することにする。
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