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王道な編入生と副会長
しおりを挟む「はぁ……では、行ってきます…」
話を聞いてちょうど1週間後の今日、漸く編入生が来る日がやってきた。朝からうきうきしている俺とは真逆で、副会長は朝からドンヨリしている。例えるなら副会長の周辺だけ重力が2倍になっている感じだ。それでも強引とはいえ決まったからにはちゃんとするらしく、もの凄く嫌そうな顔で出ていった。これが他の人の前では一瞬で笑顔に変わるんだから凄いと思う。
「ちょっとお手洗いに行ってきまーす」
「あ、俺も行く~!」
お手洗いに行くと称して副会長達を観に行こうとすると、雫も便乗してきた。俺が腐男子なの隠してるから付いて来られたら困るんだけどな…。
お腹痛いとか行って先に帰ってもらおうかな。それでその後急いで行けば間に合うかも。よし、そうしよう!
「ね~ね~凪沙ちゃん」
どうやって雫と離れようか考えているときに話しかけられ、思わずビクッとする。もしかして、顔に考え出てたりしないよね…?
「もしかしてさ~、清都見に行こうとしてる?」
驚きで表情が硬直する。
「…どうしてそう思うんですかー?」
とりあえず表情を戻して聞いてみると、雫は一瞬ぽかんとした後顔を背け、肩を震わせてクスクス笑いだした。
「凪沙ちゃんって~嘘とか下手なタイプでしょ~。めっちゃ顔にでてるよ~?」
「えっ、そんなにでてました…?」
「“なんでわかったんだろ”って顔してたよ~」
確かに上手い自信はないが、そこまで分かりやすかっただろうか。これでも一応、簡単な表情管理はできるつもりなんだけどな。
「それで~やっぱ見に行くつもりだったんだ~?」
「まあ、ちょっと気になったので…」
「面白そうだしね~。」
どうやら、面白そうだから見に行くのだと思われたらしい。腐男子だとはバレてなさそうでホッとする。
「じゃ~俺はそろそろ戻るね~」
「見に行かないんですか?」
「見に行きたいけど~仕事が大量に残ってるから~。後でどうなったか教えてね~」
そう言って雫はあっさり戻っていった。
どうやら、教えてもらう約束を取り付けるためだけに、わざわざついてきていたようだ。
まあ、確かに面白そうではあるよね。
なにはともあれ、腐っていることがバレてなかったのは良かった。
あらかじめ見つけておいた場所に着くと、すぐ側の木を登り、校門からは葉によって死角になる位置に腰を下ろす。校門の前では、もう編入生が迎えを待っている。数分前、副会長はちょうど校舎をでて校門までの道を歩いていた。おそらく、そろそろ来るはずだ。
今か今かと待っていると、不意に編入生が校門を登り始めた。
…正直、かなり驚きだ。
望んではいたが、常識的に考えて登る人なんていないだろうなと思っていた。
内心諦めていただけに、期待が何倍にも膨れ上がる。
ちょうどその時、副会長の姿が見えてきた。
校門を登っているんだから当然ガシャガシャと大きな音がたつわけで、校門を登る編入生に気づいた副会長がギョッとした顔で慌てて走ってくる。
そのときふと思った。
この学園の校門はそこそこ高い。
小説ではうまくキスしてたが、うまくいかなかったら軽い怪我では済まないはずだ。
もしかして副会長が大怪我で病院行きとかになる可能性もある…?
そう考えると少し不安になってきた。
「何してるんです?!危ないですから早く降りてください!!」
「うわっ!」
ドサッ
反射的に瞑った目を開けると、落ちた編入生が副会長に覆いかぶさるようにして2人とも地面に倒れていた。
よく見るとちゃんとキスしている。
おー!!!!!
やった!!!生の王道blを見れるとか最高すぎでしょ!!!
心の中でこれでもかというほど感情が高ぶる。
勿論、写真も忘れずに撮る。こんな滅多にないチャンスを逃す腐人間はいないだろう。
ルンルン気分でいると、起き上がった2人の声が聞こえてきた。
「いってぇ、危ないだろ!気をつけなきゃいけないんだぞ!」
「…すみません」
「俺は優しいから許してあげるんだぞ!感謝するんだぞ!」
「ありがとうございます。怪我はないですか?」
「ないんだぞ!それよりお前!その気持ち悪い顔やめろよな!無理に笑う必要なんてないんだぞ!」
その言葉に副会長は少しだけ笑みを深めた。
「……面白い人ですね。私は貴方の案内を務める生徒会副会長の宮乃清都と申します。よろしくお願いしますね」
「ああ!よろしくだぞ!」
その後すぐ、二人は笑顔で並んで歩いて行った。
その様子に何故か少しモヤッとした。
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一気読みしてしまいました。続きを楽しみにしています。
コメントありがとうございます!
そう言っていただけて、とても嬉しいです❀
また少しずつ更新していく予定なので、これからもよろしくお願いします(*´ω`*)
とても読みやすいです。続き楽しみにしてます。(^o^)
コメントありがとうございます!
そういっていただけると、とても励みになります✨
間隔はあきますが引き続き更新していくので、どうぞよろしくお願いします(*^^*)