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編入生がくるらしい
しおりを挟む「そろそろ戻りましょうか」
「そーですね」
そう言って生徒会室へと歩き出す。
俺が冥府のメンバーだとバレてから1ヶ月ほど経ったが、その日以来、俺と副会長は毎日一緒に昼ご飯を食べている。なんなら、おかずの交換までしている。これまた慣れとは恐ろしいもので、初めのうちは食べさせ合うのを躊躇っていたのに、毎日するうちに自然に出来るようになってしまった。というのも、副会長の作るご飯が、食べされられる気恥ずかしさも我慢できるくらいに美味しいのだ。
まあ要するに、胃袋を掴まれたってわけ。
最近では、お昼を一緒に食べるのが楽しみになっている。
ちなみにだが、俺が腐ってるから過剰に反応してただけで、友達同士で食べさせ合うのは普通のことらしい。副会長に聞いてみたら、常識だとでもいうように普通のことだと返された。今まで夕や涼介ともやったことなかったし知らなかったな。
生徒会室へ着くと相変わらず扉をノックをし、返事を待たずに入室する。ノックしない人もいるんだし、まあ問題ないよね。
「あ、おかえりー!!」
「龍星ー!2人帰ってきたよー!!」
部屋に入ると、何やら部屋の空気が重いことに気づく。といっても双子は普段と変わらず元気にはしゃいでいるが。
「何かあったのですか?」
副会長がそう尋ねると、会長が面倒くさそうな顔で盛大な溜息をついた。
「さっき理事長が来たんだが、どうやら理事長の甥がもうすぐこの学園に編入してくるらしい」
……ん?理事長の甥が編入?
「それの何か問題でも?生徒が1人増えるだけでしょう?」
「その1人の生徒が問題なんだよ。一人息子だからって甘やかされて育ったせいで性格にかなり難があるらしくてな」
「そ~そ~、今までどの学校でも問題起こしまくって~退学になったんだって~。んで、もうここしか頼るとこなくなって~仕方なく入れることにしたんだってさ~」
「世話を生徒会役員がしろだって」
____それ、世話じゃなくて監視だよね?
というか俺、時羽先輩がこんなに喋ったの初めて聞いたんだけど。
「…理事長、面倒事全部丸投げしましたね」
理事長が面倒事を押し付けてくるのにはもう慣れっこだ。仕事はできる人だが、人使いが会長よりも荒い。突然来たかと思えば、「それ、よろしくね」と爽やかな笑顔で押し付けて去っていく姿はもう何度も見た。その爽やかな笑顔が偏差値の高い顔によく合っているのは地味にムカつくのだ。
「てことで、この中の誰がそいつの世話をするかだが……清都、お前がやれ」
「は?嫌ですが」
即刻拒否った。
そりゃそうだよねー。俺だってやだし。
「お前しか適任がいねぇーんだよ」
「どういうことです?」
「さっき性格に難があるって言っただろ?おそらく生徒会役員の中でも会長か副会長あたりのポジじゃないと満足しないらしい。となると俺かお前かだが、俺にガキのお守りなんてできると思うか?」
「無理ですね…」
「だろ?てことで頼んだ。当日は校門まで迎えに行けよ」
「…チッ」
幼馴染なだけあって会長には無理だというのをよく理解しているのか、反論はしないものの笑顔で内心切れてる副会長を前に、会長はニヤニヤと笑っている。さっきまでの重苦しい空気は何処に行ったのかと少し呆れていると、副会長の奥で、時羽先輩がほんの少しだけ口角を吊り上げているのが見えた。
さっきもそうだが、基本無口無表情の先輩が笑ったりあんなに喋るなんて珍しい。
なにかあるのだろうか。
「ホントは理事長ね~、会長か副会長じゃなくて生徒会役員じゃないと満足しないだろう、って言ってたんだよ~」
疑問が顔に出ていたのか、雫がコソッと教えてくれた。要するに会長は、理事長から押し付けられた面倒事を副会長に押し付けたらしい。
会長ってそういう面では理事長と同類だよね。
まあ今回はすごく感謝してるけど。
だってさ、会長のおかげで副会長が編入生を迎えに行くことになったってことでしょ?つまり会長のおかげで『季節はずれの編入生を生徒会副会長が迎えに行く』っていう、王道学園blのシチュエーションを特等席で見れるってことじゃん!!最高すぎない?
そのまま校門登ったり、副会長が気に入ってキスしたりしないかな。生徒会役員を堕として逆ハーつくるのもいいかもしれない。
思わずニヤけそうな顔をスッと引き締める
副会長には悪いけど、ものすごく楽しみだ。
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