王道学園の会計補佐

からくり箱

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副会長Side

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冥府は、数年前に現れたグループで辺り一帯のトップグループだ。3人という超少数精鋭で、1人1人がとてつもなく強い。当時トップグループだった黒狼が2対1で闘っても、あっさり敗れたほどだ。
そんな冥府に、いつも全身真っ黒な服のメンバーがいる。マスクに靴まで黒。無駄がなくキレのある、少しブレイクダンスのような動きが特徴だ。



初めて見た時、その身体全体を柔軟に使う斬新な戦い方に目が離せなかった。とても綺麗で、ずっと見ていたいと思ったほどだ。
他の黒狼メンバーがどう思っているのかは知らないが、何かしら興味を惹かれるところはあったのだろう。彼らを見かけるたびに絡むようになり、いつしか冥府に絡むためだけに黒狼として活動するようになっていた。




そんな彼と少なからぬ好意を持っていた凪沙が同一人物だとわかり、先程までの怒りが薄れ気持ちが高ぶる。これほど嬉しいことはない。
考えるよりも先に体が動いていた。少し離れたところに隠れ、凪沙が出ていったのを確認して物置に入る。かなりコテンパンにやられたようで全員肋骨が折れているらしかった。自業自得だ。気絶したり床で呻いたりしていたが、そんなことはお構いなしに首根っこを掴んで外に引き摺り出していく。そして物置にあったロープで側の柱にきつく縛り付け、正しい姿になるよう少し手を加える。それだけでは物足りなかったので、ついでにそいつらの大事なモノを2度と盛ろうと思わなくなるくらい強く踏んづけておいた。

事情聴取だのなんだのと時間を盗られるため風紀には連絡しなかった。が、もうすぐ授業を終えた生徒が見つけて連絡するだろうし問題ない。そう判断して4匹を放置し、凪沙の荷物を持って寮へ向かう。来た道を戻っていたし手首の縄がついたままだったので、おそらく寮へ向かっただろう。



案の定、寮に戻っていたらしい。部屋をノックすると暫くして出てきた。

「どちら様で……副会長?」

「すみません、伝え忘れていたことがありまして。それと、貴方の鞄が落ちていたので届けに」

「あ、これ!ありがとうございます!!」

そういって嬉しそうに微笑む。


「ところで…」

凪沙は冥府のメンバーであることを隠していた。ならばそれは、凪沙には悪いが使えるかもしれない。
さっそく聞いてみようとしたところで、ふと手首の縄に目がいく。物置を出てからそれなりに時間があったのに、何故まだつけているのだろうか。そう考えていると手首を見ていたからか縄のことだと思ったらしく、慌ててそういう趣味ではない、と訂正された。
そもそもそんな趣味の人はいるのだろうか。
見かけたため知っていることと、害獣を処理しておいたことを伝えると面食らっていた。










「それより…貴方、冥府のメンバーですよね?」

少し間を空けてから微笑んでそういうと、凪沙はものすごく驚いた表情でこちらを見てきた。しらばっくれようとするが、嘘が下手なのか目に見えて焦っている。その様子が面白くて、つい笑みが深まってしまう。

「手足や身体の動かし方や全体の動きがそっくりなんです、冥府のメンバーの1人に。しかも、バク宙で着地した後の癖まで同じなんですよ。」



「偶然、じゃないですか……?」

「全く同じような動きをして、尚且つ全く同じ癖を持つ人が何人もいるわけないでしょう?」

それに、毎回見ている私が間違えるわけないでしょう?


「心当たり、ありますよね?」

そういってちゃっかり顔を持ち上げ、嘘発見法のことを話してみると誤魔化すのを諦めたようだった。


「……っごめんなさい!」

「ん?どうして謝るんです?」

思わずキョトンとしてしまう。何か謝られることなどあっただろうか。少なくとも私の記憶にはない。


「だって、今まで隠してましたし、運動できないとか嘘もついたから……、」

「ああ、なるほど。気にしなくて大丈夫ですよ。むしろ今となっては隠しててくれて有り難いくらいですし……なんでもないです」

隠しててくれたおかげで他の幼馴染たちは知らない。今の私にとって有り難いことだ。


「ところで…、怒らないんですか…?その、敵視してるグループのメンバーなのに…」

「敵視?別に敵視しているわけじゃありませんよ?……もしかして、それが隠してた理由ですか?」

敵視というよりはむしろ逆だ。
凪沙がこくりと頷く。

「今の関係を壊したくなくて。空気悪くなったり嫌われても嫌なので…」

「嫌われるどころか喜ばれると思いますけどね」

思わずそう呟くとそれに気づいたらしい凪沙がこちらを見てくるが、笑って誤魔化す。こういうときは笑っておけば大抵上手くいくものだ。




「あの…、この事、秘密にしてもらえませんか?図々しいのは分かってますけど、俺にできることならなんでもするので、お願いします!!!」

「なんでもする」という言葉に反応してしまう。信頼してくれている証拠だと思うと嬉しいのだが、他の人にもそんな言葉を言っているのだと思うと少し微妙な顔になる。


「……構いませんよ。2人だけの秘密ですね。なんでもして頂けるのなら、明日から一緒に昼食を食べませんか?あと、連絡先交換しましょう」

いきなり攻めすぎず、まずは仲を深め徐々に攻めていったほうがいいだろう。そうなると、1番最適なのは昼食の誘いだ。今まで凪沙は私達との昼食の誘いをほとんど断り、1人で食べていた。そのため了承を得れれば、仲を深め尚且つ意識してもらうための時間をかなり獲得できる。

「皆と昼食を食べるってことですか?」

「いえ、私と2人でです」


少し考える素振りを見せたがすぐに了承してくれ、その後は連絡先を交換して別れた。凪沙の連絡先を持っているのもおそらく幼馴染たちのなかで私だけだろう。少しばかり優越感を抱く。明日が楽しみだ。









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