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誤魔化せない…
しおりを挟むなんで……
誰にも言ってないし、そんな素振りを見せたつもりもない。気づかないところでボロが出てしまっていたのだろうか。
「な、なんのことで…」
「言ったでしょう?見かけたって」
黒い笑みをさらに深める。
「手足や身体の動かし方や全体の動きがそっくりなんです、冥府のメンバーの1人に。しかも、バク宙で着地した後の癖まで同じなんですよ。」
「偶然、じゃないですか……?」
「全く同じような動きをして、尚且つ全く同じ癖を持つ人が何人もいるわけないでしょう?」
そう言って俺の首筋から頬を覆うように右手を当てて顔を持ち上げ、微笑んだままの顔を近づけて俺の目をジッと見つめる。
「心当たり、ありますよね?」
完全に確信した表情で問うてくる。きっと誤魔化しは効かないだろう。それについさっき気づいたのなら疑っているのは副会長だけだろうから、正直に話して口止めした方が良い気もする。そう解ってはいるが、認めたらどう思われるのか、今の関係はどうなるのか、などと考えるとどうしても肯定する勇気が出てこない。
…なんとか騙されてくれないだろうか。
一縷の望みをかけて白を切ろうとするが、言葉を発する前にその細く微かな希望は笑顔でぷつりと切られた。
「ところで知っていますか?嘘って、瞳孔の開きや動き、脈拍の速さなどで分かるんですよ」
さっきからなんで顔を持ち上げてるのかと思ったら、そういうことだったらしい。脈拍や瞳孔なんて意識して調整できるものじゃない。要するに「嘘ついてもすぐ分かるから意味ない」ってことだ。
「……っごめんなさい!」
「ん?どうして謝るんです?」
意を決して謝ると、何故かキョトンと不思議そうな顔をされた。
「だって、今まで隠してましたし、運動できないとか嘘もついたし……、」
それに何度も気絶した黒狼を道端に放置してるし…
「ああ、なるほど。気にしなくて大丈夫ですよ。それに責めてるわけではないので。むしろ今となっては隠しててくれて有り難いくらいですし……なんでもないです」
隠してて有り難いこととかあるだろうか。生徒会室内の空気が悪くならなくてすむとか?何故だろうと考えていたら疑問が顔に出てたらしく、説明が面倒だったのかなかったことにされた。
「怒らないんですか…?その、敵視してるグループのメンバーなのに…」
「敵視?別に敵視しているわけじゃありませんよ?……もしかして、それが隠してた理由ですか?」
敵視してない相手にしつこく絡んだり喧嘩売ったりしないと思う。
理由は合ってるので素直に頷く。
「今の関係を壊したくなくて。空気悪くなったり嫌われても嫌なので…」
ボソッと声が聞こえたような気がして副会長の顔を見上げたが、副会長は「なにか?」とでもいうように微笑んでいるし(あくまで主観だが)おそらく気の所為だろう。
それより念の為口止めしなければ。副会長の性格からして言いふらしたり噂を広げたりはしないだろうが、会話で漏れてしまう事はあるかもしれない。
「あの…、この事、秘密にしてもらえませんか?図々しいのは分かってますけど、俺にできることならなんでもするので、お願いします!!!」
「……構いませんよ。2人だけの秘密ですね」
そう言ってクスッと笑う。
「なんでもして頂けるのなら、明日から一緒に昼食を食べませんか?あと、連絡先交換しましょう」
「毎日皆と昼食を食べるってことですか?」
「いえ、私と2人でです」
まあ、友達(?)と一緒に昼食を食べるのも連絡先を交換するのも変なことじゃないか。というより普通のことだ。blウォッチングする時間が減るのは少し残念だけど、別に嫌でもないし。というか、もっと他の要求をすることもできたのにお昼に誘うだけって、ちょっと心配になる。
その後、了承の旨を伝え連絡先を交換して別れた。
よく考えると…いやよく考えなくても、この学校で初めて、さらに言うなら家族と幼馴染以外で初めて連絡先を交換したな。友達の少なさがよくわかる。
ちなみに、手首の縄は副会長が切ってくれた。ナイフの場所が分からないから探していたと言うと、呆れた顔で部屋からナイフを持ってきて切ってくれた。ついでに「物の場所ぐらい把握しておきなさい」とお小言をもらった。
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