王道学園の会計補佐

からくり箱

文字の大きさ
上 下
13 / 18

誤魔化せない…

しおりを挟む




なんで……

誰にも言ってないし、そんな素振りを見せたつもりもない。気づかないところでボロが出てしまっていたのだろうか。


「な、なんのことで…」


「言ったでしょう?見かけたって」

黒い笑みをさらに深める。

「手足や身体の動かし方や全体の動きがそっくりなんです、冥府のメンバーの1人に。しかも、バク宙で着地した後の癖まで同じなんですよ。」



「偶然、じゃないですか……?」

「全く同じような動きをして、尚且つ全く同じ癖を持つ人が何人もいるわけないでしょう?」


そう言って俺の首筋から頬を覆うように右手を当てて顔を持ち上げ、微笑んだままの顔を近づけて俺の目をジッと見つめる。

「心当たり、ありますよね?」



完全に確信した表情で問うてくる。きっと誤魔化しは効かないだろう。それについさっき気づいたのなら疑っているのは副会長だけだろうから、正直に話して口止めした方が良い気もする。そう解ってはいるが、認めたらどう思われるのか、今の関係はどうなるのか、などと考えるとどうしても肯定する勇気が出てこない。
…なんとか騙されてくれないだろうか。
一縷の望みをかけて白を切ろうとするが、言葉を発する前にその細く微かな希望は笑顔でぷつりと切られた。

「ところで知っていますか?嘘って、瞳孔の開きや動き、脈拍の速さなどで分かるんですよ」





さっきからなんで顔を持ち上げてるのかと思ったら、そういうことだったらしい。脈拍や瞳孔なんて意識して調整できるものじゃない。要するに「嘘ついてもすぐ分かるから意味ない」ってことだ。




「……っごめんなさい!」


「ん?どうして謝るんです?」

意を決して謝ると、何故かキョトンと不思議そうな顔をされた。

「だって、今まで隠してましたし、運動できないとか嘘もついたし……、」

それに何度も気絶した黒狼を道端に放置してるし…


「ああ、なるほど。気にしなくて大丈夫ですよ。それに責めてるわけではないので。むしろ今となっては隠しててくれて有り難いくらいですし……なんでもないです」


隠してて有り難いこととかあるだろうか。生徒会室内の空気が悪くならなくてすむとか?何故だろうと考えていたら疑問が顔に出てたらしく、説明が面倒だったのかなかったことにされた。


「怒らないんですか…?その、敵視してるグループのメンバーなのに…」

「敵視?別に敵視しているわけじゃありませんよ?……もしかして、それが隠してた理由ですか?」

敵視してない相手にしつこく絡んだり喧嘩売ったりしないと思う。
理由は合ってるので素直に頷く。

「今の関係を壊したくなくて。空気悪くなったり嫌われても嫌なので…」

ボソッと声が聞こえたような気がして副会長の顔を見上げたが、副会長は「なにか?」とでもいうように微笑んでいるし(あくまで主観だが)おそらく気の所為だろう。
それより念の為口止めしなければ。副会長の性格からして言いふらしたり噂を広げたりはしないだろうが、会話で漏れてしまう事はあるかもしれない。


「あの…、この事、秘密にしてもらえませんか?図々しいのは分かってますけど、俺にできることならなんでもするので、お願いします!!!」


「……構いませんよ。2人だけの秘密ですね」

そう言ってクスッと笑う。

「なんでもして頂けるのなら、明日から一緒に昼食を食べませんか?あと、連絡先交換しましょう」


「毎日皆と昼食を食べるってことですか?」

「いえ、私と2人でです」


まあ、友達(?)と一緒に昼食を食べるのも連絡先を交換するのも変なことじゃないか。というより普通のことだ。blウォッチングする時間が減るのは少し残念だけど、別に嫌でもないし。というか、もっと他の要求をすることもできたのにお昼に誘うだけって、ちょっと心配になる。



その後、了承の旨を伝え連絡先を交換して別れた。
よく考えると…いやよく考えなくても、この学校で初めて、さらに言うなら家族と幼馴染以外で初めて連絡先を交換したな。友達の少なさがよくわかる。


ちなみに、手首の縄は副会長が切ってくれた。ナイフの場所が分からないから探していたと言うと、呆れた顔で部屋からナイフを持ってきて切ってくれた。ついでに「物の場所ぐらい把握しておきなさい」とお小言をもらった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

【R18】青斗くんは総受けです

もんしろ
BL
BLゲームの悪役をしている中野青斗。 毎日主人公をいじめ 青斗は悪役としての責務を全うしているが 最近攻略対象と主人公の様子がどこかおかしい…?

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

異世界転生したけどBLだった。

覚える
BL
「行ってきまーす!」 そう言い、玄関の扉を開け足を踏み出した瞬間、 「うわぁぁ〜!?」 玄関の扉の先にはそこの見えない穴があいてあった。俺は穴の中に落ちていきながら気を失った。 気がついた時には知らない屋敷にいた――― ⚠注意⚠️ ※投稿頻度が遅い。 ※誤字脱字がある。 ※設定ガバガバ            などなど……

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる

海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

処理中です...