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久しぶり(?)の黒狼
しおりを挟む「「冥府見つけたー!」」
此方へと走りながらそう叫ぶのは勿論、黒狼で生徒会庶務の双子――琉夏と莉央だ。
言葉を大声に遮られ、そちらにに意識を向けた涼介だったが、声の主ができれば遭遇したくなかった厄介な人物の中の2人であるとわかり、心底嫌そうに顔を顰めた。そんな涼介を見て声へと意識を向けた夕と俺も、軽く眉を寄せ微妙な顔をする。
黒狼、こいつ等もまた、先程の破落戸等と同じで毎度毎度絡んでくる面倒な奴らだ。生徒会メンバー6人の少数精鋭で、此処らでは俺達の次にトップのグループだ。前はそれが絡んでくる理由だと思っていたが、生徒会会計補佐となって彼らと接するようになると、違うのかもしれないと思うようになってきた。なんというか、トップになれない悔しさやプライド云々でしつこく絡む人達ではないように思う……のだが、日常的にしぶとさを見せることが多々あるためよくわからいのだ。
「ほんとだ~冥府ちゃんじゃん!やっほ~!」
そう言ってヘラヘラと笑い手を振りながら此方へ小走りで来るのは雫だ。この人、PTO問わず笑っている気がするのは俺の気のせいだろうか。
「ようオメーら、久しぶりじゃねーか」
いかにも悪役な挨拶(?)をしながら歩いてくる龍星。
俺とは…久しぶりではないね。なんなら今日も会ったし。
「最近見かけなかったので、何かあったのかと思いました。」
そう上品に近づいてくるのは清都だ。
見かけなかったのは、おそらく転校の準備で忙しかったからだろう。
「ここで会ったのも何かの縁ですし、久しぶりにどうですか?」
いやいやいやいや!!さっき見つけたって言ってたよね。ちょっと無理あるでしょ!
どうでもいいけど何かの縁って絶対悪縁だよねー。
それよりこれ、今までの経験からなんとなくわかる。これは絶対誘いに乗るパターンだ。
俺は心の中でハァと、最大級のため息をついた。
「うわっ…と」
飛んできた複数の拳を慌ててバク転で避ける。素人にはおそらく目で捉えることすら不可能であろう速さだ。
「さっすが~!綺麗なバク転だね~」
「…すごい」
6人対3人だから俺たちは毎回1人で2人を相手することになる。今回は雫と玲だった。ちなみに、玲は先程声がしないしいないのかな~とか思っていたら、普通にいた。無口無表情で音も立てず暗闇に佇む姿はちょっとホラーだった。
「そりゃどーもありがとっ」
称賛しながらも容赦なく飛んでくる拳を避け、手で軌道を変え、こちらからも拳や蹴りをいれていく。
「グハッ、ゲホゲホッ、はぁはぁ…」
「はぁ、はぁ…もう終わり?」
腹に蹴りを食らって咳き込み、上がった息を整える雫に対して俺は挑発的な笑みを浮かべる。
「…まっさか~」
返事をするなり殴りかかってくる。雫は案外煽りに弱いみたいだ。現にさっきより攻撃の精度が下がり、勢いが増している。少数精鋭なだけあって実力のある2人を相手にするのは、かなり疲れる。喋りながらだと余計にだ。ちなみに玲はずっと沈黙を貫いている。
余談だが、避けにくいときにバク転やバク宙で躱してしまうのはただの癖だ。幼い頃、戦闘系の漫画に影響された俺がかなり頑張ってできるようにして、それ以来ずっとやっていたら、いつの間にか癖になってしまった。
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