王道学園の会計補佐

からくり箱

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夜の街へ

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「もうこんな時間か」

部屋の置き時計を見てポツリと呟く。
今の時刻は20時30分。約束は21時だったはずだ。此処から集合場所までは、足の速さにそれなりに自信のある俺でも10分はかかる。ギリギリに出て慌てたくはないし、そろそろ出たほうがいいだろう。

ベッドからおもむろに腰を上げると、クローゼットの奥の方から黒いフード付きパーカーと黒いTシャツ、黒い長ズボンを取り出し着替える。そして髪を高めの位置でくくった後フードを深くかぶり、黒色のマスクをつける。どこからどう見ても完璧不審者なのだが、これが1番夜に紛れやすいし、動きやすい。それに、素性もバレにくい…多分。
当然こんな不審者ファッションで堂々と玄関から出るわけにも行かないので、ベランダから出るつもりだ。ベランダの窓を開けると、涼しくて心地よい風が吹いてくる。気持ちいい。愛用しているスニーカーを履き(勿論黒色だ)時計を見ると、針はもう20時40分を指していた。あまりのんびりしている時間はないな。
音を立てないよう静かに窓を閉め、下を見回して誰もいないのを確認したあと、ベランダの手すりに足をかけて一気に飛び下りる。下からの風と浮遊感で少しゾクゾクする。ちなみに俺の自室は14階だ。当たり前だがそのまま下りたら死ぬので、何度か寮の壁を蹴ることで勢いを吸収させて木の枝にストンと着地する。慣れると面白くて結構はまってしまうのだ。まあ普段やろうにも、昼間は人がいるから夜くらいしかできないのだが。
脚に力を入れて木の枝を勢いよく蹴り、偶に腕を使いつつ走るように木から木へと移動していく。地面を走って万が一誰かに遭遇したら面倒だからね。少し移動した後少しずつ高い位置に移動していき、学園全体を囲う高く立派な外壁の上に飛び移ると、そこからヒラリと飛び下り、約束の場所へと走り出した。


暫く走ると家がちらほら見え始め、さらにもう暫く走ると見慣れた景色が見えてくる。この辺りは少し前までよく暴れていた場所なため、マップは脳内に完璧にインしてある。そこからいくつか角を曲がって見えてきた小さな公園へ入る。


「夕!涼介!久しぶり。待った?」


「あ、なっちゃん!!久しぶり!いま来たとこだよ!」
「久しぶり。早かったな」


「2人のほうが早いじゃん笑。まーそれにラブラブカップル早く見たかっ「なっちゃん?」…。すみません」

夕が物凄い圧をかけてくるため、大人しく謝っておく。こういう時は余計なことを言わないほうがいいのは今までの経験上よく解っている。あ、なっちゃんというのは俺のことね。凪沙だからなっちゃん。夕はゆーちゃんで涼介はりょーちゃんだ。夕はほぼ変わらないね。


「相変わらずだな」

「そりゃ腐男子だからね~」

「なんとなく、今の学校に入ってさらに磨きがかかってそう」

「周りほとんどゲイだからしょーがなくない?萌を堪能し放題だよ!」


その後もblの良さや学園について話していると、何故かものすごく呆れた様な顔された。なんで…






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