王道学園の会計補佐

からくり箱

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副会長Side

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天宮凪沙は、超難関校という名に相応しく難問ばかりの入学テストを全教科満点という前代未聞の点数で入学した生徒だ。外部生を毎年入学という形で受け入れているとはいえ、中学3年生からというのは珍しい。それだけでも注目を集めていたのに、この優秀すぎる成績にあの美貌だ。透き通った水色の髪とピンクの宝石の様な綺麗な瞳に、どちらかといえば可愛い系だがどこかキリッとした顔立ち。入学して早々抱きたい抱かれたいランキングの上位に載り、さらには親衛隊までできたほどだ。しかもそれらを笠に着ることなく性格も良い。初めは警戒していたが生徒会役員補佐になると決まったときにはかなり好感をもっており、できれば自分の補佐についてほしいと思った。しかしそれは私だけではなかったらしく、話し合いでは決まらなかったため結局じゃんけんで決めることとなり、結果会計補佐になった。まあ彼はじゃんけんになった経緯を知らないため、軽く呆れていたような気もするが。





「じゃあ、俺はそろそろ帰りますね。」


「ええ、ではまた明日」

「え~凪沙ちゃん、もう帰っちゃうの~?」

「「えーもっと遊ぼーよ!!」」

「ああ、またな」


薄く微笑みながら「また明日」と言って彼、天宮凪沙は帰っていく。今は昼休みになる少し前の時間帯だ。
役員は普通、用事がない限り朝から放課後まで生徒会室で仕事をするのだが、凪沙は朝早くに来て生徒会室でしかできない仕事をし、それが片付いたら残りは持ち帰って寮の自室でする。
なぜそんなことをするかはなんとなく解っている。
おそらく、私達の中にいることが気まずいのだろう。
凪沙以外の生徒会メンバーはみんな幼馴染で、「黒狼」という族を結成している。族のことは私達以外は知らないだろうが、私達が幼馴染なのは学園内では有名な話だ。幼馴染の中に、知り合って日が浅い自分が1人、混じっていくのが気まずいのは当然だろう。
私が凪沙の立場だったらおそらく同じような行動をとっていたと思う。

せっかく同じ生徒会の役員になったのだから、もっと距離を縮めたい。だから、幼馴染達に凪沙を黒狼へ勧誘することを提案してみることにした。幼馴染にはなれなくとも、黒狼に入れば私達の輪に入りやすくなるのではないかと思って。
説得に時間がかかるだろうと思っていたが、みんなも同じような気持ちらしく、すんなり勧誘の許可を貰えた。明日、早速誘ってみよう。凪沙は誘いを受けてくれるだろうか。



翌日、役員全員が揃ったタイミングで仕事を黙々としていた凪沙に話し掛けた。


「凪沙、仕事中すみませんが少し良いですか?」

手を止め、顔を上げた凪沙はみんなの表情を見て不思議そうな顔をした。

「えっと、どうかしましたか?」


「貴方に少し話というか提案があるのですが…」


つい先程まで言う気満々だったのに、いざ言おうとすると何故か躊躇してしまう。なかなか続きを離さない私に、凪沙は不安そうな顔を向けてくる。

「もしよければ、私達のグループ「黒狼」に入りませんか?」


「はい?」


言われたことがあまりにも想定外だったらしく、ポカンとした顔でこちらを見てくる。


「驚くかもしれませんが、私達6人は「黒狼」というグループを結成していまして。ストレス発散用の所謂族なのですが。貴方さえよければそこに入らないかと。」

「強制してるわけじゃねーから、嫌だったら断ってくれればいい。」


フォローしてくれる龍星に感謝しつつ、返事を待つ。
凪沙は暫くの間戸惑った顔で視線を泳がせていたが、すぐに申し訳無さそうに微笑んだ。

「…お誘いは嬉しいんですけど、俺、戦えるほど強くないし運動神経もないから役に立てないと思うので、すみません…」


「そっか~残念」


そう言葉を挟む雫は、珍しくほんとに残念そうだった。


その後は私達がいつも通り接すると凪沙もいつも通り接してくれた。唯一、生徒会役員なのに族なんてと幻滅されないか心配だったが、特にそんな様子もなく余計な心配だったと安心した。
そしてその日もいつも通り、昼休みになると凪沙は寮へ帰っていった。





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