4 / 18
副会長Side
しおりを挟む天宮凪沙は、超難関校という名に相応しく難問ばかりの入学テストを全教科満点という前代未聞の点数で入学した生徒だ。外部生を毎年入学という形で受け入れているとはいえ、中学3年生からというのは珍しい。それだけでも注目を集めていたのに、この優秀すぎる成績にあの美貌だ。透き通った水色の髪とピンクの宝石の様な綺麗な瞳に、どちらかといえば可愛い系だがどこかキリッとした顔立ち。入学して早々抱きたい抱かれたいランキングの上位に載り、さらには親衛隊までできたほどだ。しかもそれらを笠に着ることなく性格も良い。初めは警戒していたが生徒会役員補佐になると決まったときにはかなり好感をもっており、できれば自分の補佐についてほしいと思った。しかしそれは私だけではなかったらしく、話し合いでは決まらなかったため結局じゃんけんで決めることとなり、結果会計補佐になった。まあ彼はじゃんけんになった経緯を知らないため、軽く呆れていたような気もするが。
「じゃあ、俺はそろそろ帰りますね。」
「ええ、ではまた明日」
「え~凪沙ちゃん、もう帰っちゃうの~?」
「「えーもっと遊ぼーよ!!」」
「ああ、またな」
薄く微笑みながら「また明日」と言って彼、天宮凪沙は帰っていく。今は昼休みになる少し前の時間帯だ。
役員は普通、用事がない限り朝から放課後まで生徒会室で仕事をするのだが、凪沙は朝早くに来て生徒会室でしかできない仕事をし、それが片付いたら残りは持ち帰って寮の自室でする。
なぜそんなことをするかはなんとなく解っている。
おそらく、私達の中にいることが気まずいのだろう。
凪沙以外の生徒会メンバーはみんな幼馴染で、「黒狼」という族を結成している。族のことは私達以外は知らないだろうが、私達が幼馴染なのは学園内では有名な話だ。幼馴染の中に、知り合って日が浅い自分が1人、混じっていくのが気まずいのは当然だろう。
私が凪沙の立場だったらおそらく同じような行動をとっていたと思う。
せっかく同じ生徒会の役員になったのだから、もっと距離を縮めたい。だから、幼馴染達に凪沙を黒狼へ勧誘することを提案してみることにした。幼馴染にはなれなくとも、黒狼に入れば私達の輪に入りやすくなるのではないかと思って。
説得に時間がかかるだろうと思っていたが、みんなも同じような気持ちらしく、すんなり勧誘の許可を貰えた。明日、早速誘ってみよう。凪沙は誘いを受けてくれるだろうか。
翌日、役員全員が揃ったタイミングで仕事を黙々としていた凪沙に話し掛けた。
「凪沙、仕事中すみませんが少し良いですか?」
手を止め、顔を上げた凪沙はみんなの表情を見て不思議そうな顔をした。
「えっと、どうかしましたか?」
「貴方に少し話というか提案があるのですが…」
つい先程まで言う気満々だったのに、いざ言おうとすると何故か躊躇してしまう。なかなか続きを離さない私に、凪沙は不安そうな顔を向けてくる。
「もしよければ、私達のグループ「黒狼」に入りませんか?」
「はい?」
言われたことがあまりにも想定外だったらしく、ポカンとした顔でこちらを見てくる。
「驚くかもしれませんが、私達6人は「黒狼」というグループを結成していまして。ストレス発散用の所謂族なのですが。貴方さえよければそこに入らないかと。」
「強制してるわけじゃねーから、嫌だったら断ってくれればいい。」
フォローしてくれる龍星に感謝しつつ、返事を待つ。
凪沙は暫くの間戸惑った顔で視線を泳がせていたが、すぐに申し訳無さそうに微笑んだ。
「…お誘いは嬉しいんですけど、俺、戦えるほど強くないし運動神経もないから役に立てないと思うので、すみません…」
「そっか~残念」
そう言葉を挟む雫は、珍しくほんとに残念そうだった。
その後は私達がいつも通り接すると凪沙もいつも通り接してくれた。唯一、生徒会役員なのに族なんてと幻滅されないか心配だったが、特にそんな様子もなく余計な心配だったと安心した。
そしてその日もいつも通り、昼休みになると凪沙は寮へ帰っていった。
135
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。
王道学園なのに会長だけなんか違くない?
ばなな
BL
※更新遅め
この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも
のだった。
…だが会長は違ったーー
この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。
ちなみに会長総受け…になる予定?です。
平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡
悪役令息の兄には全てが視えている
翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」
駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。
大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。
そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?!
絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。
僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。
けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?!
これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
悪役王子の幼少期が天使なのですが
しらはね
BL
何日にも渡る高熱で苦しめられている間に前世を思い出した主人公。前世では男子高校生をしていて、いつもの学校の帰り道に自動車が正面から向かってきたところで記憶が途切れている。記憶が戻ってからは今いる世界が前世で妹としていた乙女ゲームの世界に類似していることに気づく。一つだけ違うのは自分の名前がゲーム内になかったことだ。名前のないモブかもしれないと思ったが、自分の家は王族に次ぎ身分のある公爵家で幼馴染は第一王子である。そんな人物が描かれないことがあるのかと不思議に思っていたが・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる