王道学園の会計補佐

からくり箱

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いつもの朝 〈後〉

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バンッ


勢いよく扉が開く音がしたためそちらを振り向く。まあ扉の開け方からして誰かはわかっているけどね。

「凪沙ちゃんおっはよ~!今日も可愛いね~!あ、ふくかいちょ~もおはよ~」

そう言って抱きついてくる語尾を伸ばした話し方が特徴的なこの人は、生徒会会計の如月雫きさらぎしずくで2学年上の先輩だ。チャラ男という言葉がぴったり合う下半身ゆるゆるでいつもヘラヘラ笑っている人だが、これでも仕事はできる。

「如月先輩、おはよーございます」

「も~雫って呼んでよ~」

とりま困ったように笑ってスルーしておく。流石に先輩を下の名前で呼び捨てするのはハードルが高い。

「おはようございます。貴方は相変わらず朝から騒がしいですね。せめてノックくらいしたらどうですか」

「いや~それほどでも~」

「褒めてないですよこの低能」

いつものごとくコントを繰り広げる2人を見て楽しんでいると、他の先輩達もやってきた。

「「凪沙ちゃんおはよー!」」

「おはよーございます」

「あの2人またやってるー」
「朝のルーティン化してるよねー」

そういってケラケラ笑うのは、生徒会庶務の加咲琉夏かさきるか加咲莉央かさきりおで1学年上の双子の先輩だ。見た目は全く同じだが、琉夏は莉央より少し穏やかで莉央は琉夏より少し活発だ。それに纏う雰囲気が微妙に違う。2人は自分達の見分けがつく人をより好み、見分けることができる俺は2人にそこそこ好かれている自覚がある。2人共小柄で可愛らしいし普通に嬉しい。


「おはよ」

「時羽先輩、おはよーございます」

1番手短な挨拶をするのは生徒会書記の時羽玲ときわれいでこれまた1学年上の先輩だ。口数が少なく普段は無表情なのだが、偶に見る微笑んだ顔が可愛らしい、優しくて兄みたいな人だ。可愛い系ワンコとでもいえばいいだろうか?


「朝っぱらからうっせーなぁ。おめーらさっさと仕事しろ!」

1番最後に入ってきたのは生徒会会長の奥宮龍星おくみやりゅうせいで2学年上の先輩だ。少し乱暴な口調が特徴でほんの少し俺様要素を持ち合わせてる人だ。人使いが荒いが人材の配置は的確なのでそこは尊敬できる。
ちなみにこの人は「黒狼」の族長だ。副族長はもちろん副会長。流石に生徒会が族だなんて大っぴらにできるわけもないから非公開だけどね。まあなんでそれを俺が知ってるかっていうと、それは俺も族だからだ。しかも黒狼と敵対してるーーというより黒狼が一方的に敵視してくるーーグループの。
自慢じゃないが俺の所属するグループは山を下りた街の辺り一帯の族の中ではトップの強さで知られていて、かなり有名だ。そのため最近では喧嘩売ってくるのは新規のグループか、諦めの悪いグループ、他所から勢力拡大しにきたグループ、そして黒狼のみだ。「黒狼」はこの辺りで2番目だからか、よくちょっかいをかけてくる。
まあ所属するグループといっても、幼馴染含め3人だけなのだが。

「会長、おはよーございます。珍しい組み合わせですけど4人一緒に来られたんですか?」

「いや、さっきそこで偶然会っただけだ。お前は今日も早いな」

「いえ、俺もさっき来たばかりですよ」

軽く会話しながらまた仕事に戻る。みんな揃ったみたいだし、早めに終わらせて帰ったほうがいいだろう。
あ、そうそう、俺以外の生徒会役員がみんな先輩なのは、生徒会役員はお決まりの抱きたい抱かれたい投票で決まるからだ。通常合計の票数がトップの6人が役員の座に就くのだが、今回双子先輩と俺の3人の票数が同じだったため、後輩である俺は誰かの補佐につくことになった。で、じゃんけんで会計が勝ったため会計補佐になったわけ。
…適当すぎない?






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