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眠れないなら一緒に寝よう

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無事、ドロシーの服を手に入れることができた日の夜。今日もドロシーに頑張って美味しい料理を振舞って、お互いシャワーを浴びて、いつの間にかもう寝る時間になっていた。ドロシーが来てから、時間が経つのがあっという間だな。

「ドロシー、パジャマもすごく似合ってて可愛いよ」

「そ、そんなことないって……」

 コレットから買った可愛らしいパジャマを早速ドロシーが着ているんだが、これもやっぱりめちゃくちゃ似合っている。自信を喪失しているからかなかなか素直に褒め言葉を受け取ってもらえないけど、それでも本当に可愛いからついつい口に出して伝えてしまう。

「そういえば、昨日はよく眠れた? 朝、俺より早く起きてたみたいだけど」

「え、そ、その……う、うん。ね、眠れたよ」

「本当に?」

 俺は武器の手入れとかをしないといけないから、それなりに早い時間に起きて作業を済ませることを日課にしている。けど、昨日はそんな俺よりも早い時間にドロシーはポツンと椅子に座っていた。おそらく、満足に眠ることができなかったんだろう。

「……怖くて、眠れなかった。また、連れて行かれるんじゃないかって……」

 俯きながら、ドロシーはか細い声でそう伝えてくれた。きっと奴隷時代、寝ている間にも相当酷いことをされてきたから、またあの時に戻ることへの恐怖に怯えているんだろう。くそっ、昨日それに気付ければドロシーは苦しまないで済んだのに……俺の馬鹿。

「ごめんなドロシー、それに気づけなくて」

「え、エリックは何も悪くない……。私が……勝手に怖がって眠れなかっただけ……ぜ、全部……私が悪いの……」

 どこまでも自分を卑下し続けているドロシーを見て、俺に何かできることはないかと色々と考える。そう簡単に解決できる問題じゃないことはわかっているけど、俺はドロシーの婚約者なんだ。絶対、ドロシーが安心して暮らせるようにしてあげたいから。

「……そうだ。なら、ドロシーさえ良ければ今日は一緒に寝ないか?」

「……え?」

「い、いや……同じ部屋でってこと。俺は床で寝るからさ、ドロシーは昨日と同じくベッドで寝てほしい」

 ドロシーはまた連れて行かれるんじゃないかって心配しているから眠れないみたいだから、俺が一緒にいれば多少は改善されるんじゃないかって思ってこの案を出した。もちろん、同じベッドで寝るだなんてことはしないけど。

「そ、そんなのエリックに何もいいことがない……わ、私だけベッドで寝るなんて……」

「それくらいは大丈夫だよ。それよりも俺はドロシーがぐっすり寝れるようになってほしいからさ。でも、ドロシーが嫌ならやめておくよ」

「……い、嫌じゃ……ない。い、一緒に……いてほしい」

 俺の服をぎゅっと掴んで、ドロシーは言葉を詰まらせながらも、頰を赤くしながら一生懸命お願いしてくれた。

 そんなわけで俺たち二人は、一緒の部屋で寝ることになった。俺は床に布団を敷いて、ドロシーはベッドで。

「どう、ドロシー? 眠れそう?」

「……ま、まだちょっと怖いけど……え、エリックが近くにいてくれるから……あ、安心かも」

「それは良かった」

「……ね、ねぇ……エリック」

「ん?」

「……手、繋ぎたい」

 ベッドの上から、ドロシーは片腕をぶら下げる。手を見ると、小さくて綺麗な手に痛々しい傷跡が残っていて、ドロシーが受けてきた仕打ちが見て取れた。本当に、辛い日々を過ごしてきたんだな……。

「ああ、もちろん」

 俺はその手をぎゅっと握る。するとドロシーも握り返してくれて、しばらく俺たちは手を繋ぎ続けた。

「……ありがとう、エリック」

「どういたしまして」

 そのまま握り続けていたら、すうすうとドロシーの寝息が聞こえてきた。良かった、なんとか寝ることはできたようだ。

 それにしても、どうしてドロシーは奴隷になってしまったんだろう。彼女の一族は帝国でも有数の名家で、没落なんかしたらさすがに俺の元にも情報が入ってくると思うんだが。

 とはいえ、ドロシーに直接その話を聞くわけにもいかない。今度帝国に行った時に情報収拾をするしかないか……。それに、金も稼がないとな。ドロシーが住んでて楽しい家にしたいし、美味しい料理もたくさん食べさせてあげたい。

 まだまだ色々と問題は山積みだけど、絶対ドロシーを幸せにするために頑張ろう。

「……エリック」

「ん、どうしたんだドロシー?」

 ふと、ドロシーから声をかけられた。まだ眠れていなかったのかと思い、立ち上がってドロシーの様子を見てみると、心地よさそうに眠っていた。あれ、寝言だったのか?

「……料理、美味しいよ……」

 その言葉を聞いた時、ドロシーが寝言を言っていると確信した。ははっ、夢の中でご飯を食べているみたいだな。それならきっと、悪夢は見ていないはず。

「明日もいっぱい美味しい料理作ってあげるからな」

 ポンポンとドロシーの頭をさすって、夢の中にいるドロシーにそう伝える。そして、俺も布団に横になり、眠りについた。
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