今日から始める最強伝説 - 出遅れ上等、バトル漫画オタクは諦めない -

ふつうのにーちゃん

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竜将軍大会第六回戦・決勝:不死身のクルシュ VS 無傷のアルハザット

・決勝戦:VS正体不明のアルハザット - 栄光の舞台 -

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 舞台へと続く大門が開き、私は係員の案内で決戦上へと進み出た。
 私が姿を現すと、スタントの観衆は雷のような大歓声を上げて、異邦人ククルクルスのクルシュを迎えてくれた。


「皆さまーっっ!! ついにこの日がやってきました竜将大会第63試合っっ!!! 待ちに待った頂上決戦・決勝戦っっ!!!」


 人々の大歓声に我が身が震えた。
 生前の私は運動音痴で、体育の授業でも一度も注目されたことのない、スクールカーストの底辺だった。

 クラスのヒーローは私をドリブルで抜き、華々しくシュートを決めて、女子の歓声をもって私を酷く惨めにさせた。

「数多の星々が挑んでは涙を飲んだこの大会も、泣いても笑っても今日でラストッフイニッシュッ、エンドゲームッッ!!!」

 そんな私が今、決勝戦の栄光の舞台に立っている。
 誰もが私を勇者と称え、クルシュの優勝を期待している。
 ついに私が、憧れ続けてきた主人公そのものとなる瞬間が近付いてきていた。


「ご紹介しましょう!!! こちら、ククルクルスの――いいえっ、もう違うわね!! 我らが!! 竜将大会が生み出した不死身の超戦士・クルシュッッ!!!」


 私は観客席に向けて刀を抜き、大地が震えんばかりの歓声に応えた。
 歴史の闇に消えた名刀・竜光。
 かつてはヤツカハギの伝説的なもののふが、これを腰に吊していたという。

「ちょっと、あちしと今から漫才でもやらない?」
「この大舞台で何ぬかす。……遅いな、アルザハット、だったっけか?」

「アルハザットよ。あちし言い間違えたら大恥なんだから勘弁してちょうだいよっ、そついうのっ!」

 重騎士アルハザットの入場が遅れてた。
 東控え室に続く大門は開いているのだが、一向にアルハザット選手が入場してこない。

「あーと……皆さーんっ、ちょっとバタバタしてるみたいだからーっ、今からクルシュ選手とあちしの夫婦漫才をご披露するわーっ!! へげっっ?!!」
「するかっっ!!」

 義理のツッコミをぶち込んで、私は闘技場の舞台にあぐらをかいた。
 今日まで練り上げた闘志を漫才なんかで散らす気はない。

 モーリーの狙い通りでしゃくだがそれで笑いが取れた。
 私は目を閉ざし、対戦相手の入場の時を待った。

 モーリーは美声で歌が美味かった。
 甘く深みのあるモーリーの歌声を聞きながらその時を待った。


「皆さまーっっ、大変長らくお待たせしました、重騎士アルハザット選手の入場ですっっ!!! はーー、しんどかったわー……」


 やっときたようだ。
 私は頃合いを見て立ち上がり、決勝戦の対戦相手を見据えた。

 でかい男だった。
 2メートルを超える大男が、鈍色の全身鎧をまとい、特大のクレイモアを肩にかけてこちらにやってきた。

 そのフルフェイスヘルムからは表情すらうかがえず、二つの血走った目玉だけが影に浮かんで見えていた。

「んな格好で熱かねぇか?」

 人を待たせたというのにヤツは言葉すら発しなかった。
 ただその目玉だけが私を凝視していた。

「およしなさいな、彼は匿名希望なの。名誉を求めて挑む者が多い中、願いだけを求めて、出自を隠して参加する人たちもいるのよ」
「得体が知れないと調子狂う」

「おっほっほっほっ、ああたの相手をした選手みんなが、そういう気持ちだったでしょうよっ!」

 とにかく試合を始めよう。
 私はアルハザットに向けて刀を抜いた。
 鉄壁の重鎧を相手に、居合いからの薙ぎ払いは無意味だろう。


「それではっっ、始めましょうか、ご両雄っっ!! こーれーよりっ、竜将大会決勝戦!! あちしたちのキョウが生んだ不死身のスーパールーキー・クルシュッッ!!! VS!!」


 私は異邦人だというのに、すっかりキョウの代表にされてしまっている。
 聖帝に次ぐ人望を持つイーラジュの弟子とあっては、まあそうなるのだろうが、そう悪い気はしない。


「正体はどこかの軍事国家の将軍様!!? 匿名希望!! 正体不明!! 言葉発さぬ重騎士アルハザット!!! この両雄の試合を執り行うわっ!!!」


 とにかく私はこの鋼に覆われた巨人に勝つ。
 仲間が、観客が、キョウの民がそれを望んでいるのだから。
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