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竜将軍大会第三回戦:策士クルシュ VS 魔弓使いナルギス
・第三回戦:VS魔弓使いナルギス - 剣闘士と姫君の打算的な関係 -
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朝昼晩と、金剛力士像のごときソウジン殿の仏頂面ばかりを拝む二日間が過ぎ去り、私は片手に花を抱えて屋敷を出た。
花の色は赤みがかったオレンジ色。名前はティティス。
性格はともかくとして、外見と外っつらは完璧な美しい大輪であった。
「まさか本当に風呂に入らずにやってくるとはな……」
「ちゃんと言ったんだけどなー、あたし。まあしょうがないよ、ああいう人だもん」
カロン・オボロンは私たちの予想を裏切らなかった。
あの日別れてから一度も風呂に入らずにイーラジュ邸を訪れた。
彼女は関係者用観覧席で私を応援するために、わざわざ訪ねてきてくれた。
その関係者用観覧席には、それなりの名家や資産家の方々もやってくる。
そのため私は花の一つを失った。
ココロさんはカロン先生を公共浴場で洗濯してから、試合ギリギリに大闘技場を訪れることになった。
「で、事業の方は?」
「たった今、第1巻を増刷中! 明日にはキョウのお店に並ぶよ!」
「は、早くないか……?」
「ふっふっふっ……カロン先生を騙そうとした問屋と取り引きしたの。印刷所の予約入れておいてくれてたから♪」
「それを、お前が、乗っ取ったと?」
「あら、人聞きが悪いですわ。印税ゼロの契約書をちょっとお見せしただけで、快く順番を譲って下さいましたのよ♪」
「おいおい……。逆恨みされても知らねーぞ……」
「悪いのはカロン先生を騙そうとしたあっちだし! こっちが正義!」
とやっていると大闘技場に着いた。
大闘技場の正面通用路の前には、入場にあぶれたたくさんの観客と、予想屋と、屋台がひしめいている。
俺たちは選手用通路に敷かれたレッドカーペットの上を闊歩して、観衆の目を浴びながら大闘技場に入った。
皆、口々に私のことを応援してくれた。
知らぬうちに私は優勝候補の一角にされていた。
オッズも私の方が今回は高かった。
「むふふふ……っ、あーっ、気持ちよかったぁーっ♪」
「おい、人前でいかがわしい言葉を使うなっての……」
「えーっ、でもさーっ、私とお父様が見つけたクルシュがさーっ、今こんっっなにっ!! 注目を浴びてるんだよーっ!?」
「おう、お前とホスロー殿には心から感謝してんよ」
いつかしっかりと礼をしなければならないだろう。
「いいよいいよ、タダで優勝候補様をエスコートできたんだしっ!」
「はぁ……? なんだそりゃ……?」
「こういうのって、お金持ちや権力者のステータスなんだよねー」
「エスコートが、ステータス……? そうなのか?」
「『私がこの選手のパトロンです! 私はこの選手のように凄い人なのでーす!』ってやるためにー、大金を出す人がいっぱいいるんだよー」
ああ、なるほどな、そういう世界もあるのか。
財力や権力を誇る上ではこの上ないのか。
歴史を振り返れば古代ローマでも、コロッセオの花形剣闘士の垢に、貴婦人たちが競うように大金を出したという。
「それが、タダ! タダっていいよねーっ、むふふふふっ♪」
「お前はなんていうかよ、健康的だな」
「へへーっ、よくわかんないけどありがと!」
こういう人間だからこそ稼いだ金を任せられる。
ティティスは歪みなく誠実で、若く強いエネルギーを持っている。
彼女とはこれからもいい取引をしていけそうだった。
花の色は赤みがかったオレンジ色。名前はティティス。
性格はともかくとして、外見と外っつらは完璧な美しい大輪であった。
「まさか本当に風呂に入らずにやってくるとはな……」
「ちゃんと言ったんだけどなー、あたし。まあしょうがないよ、ああいう人だもん」
カロン・オボロンは私たちの予想を裏切らなかった。
あの日別れてから一度も風呂に入らずにイーラジュ邸を訪れた。
彼女は関係者用観覧席で私を応援するために、わざわざ訪ねてきてくれた。
その関係者用観覧席には、それなりの名家や資産家の方々もやってくる。
そのため私は花の一つを失った。
ココロさんはカロン先生を公共浴場で洗濯してから、試合ギリギリに大闘技場を訪れることになった。
「で、事業の方は?」
「たった今、第1巻を増刷中! 明日にはキョウのお店に並ぶよ!」
「は、早くないか……?」
「ふっふっふっ……カロン先生を騙そうとした問屋と取り引きしたの。印刷所の予約入れておいてくれてたから♪」
「それを、お前が、乗っ取ったと?」
「あら、人聞きが悪いですわ。印税ゼロの契約書をちょっとお見せしただけで、快く順番を譲って下さいましたのよ♪」
「おいおい……。逆恨みされても知らねーぞ……」
「悪いのはカロン先生を騙そうとしたあっちだし! こっちが正義!」
とやっていると大闘技場に着いた。
大闘技場の正面通用路の前には、入場にあぶれたたくさんの観客と、予想屋と、屋台がひしめいている。
俺たちは選手用通路に敷かれたレッドカーペットの上を闊歩して、観衆の目を浴びながら大闘技場に入った。
皆、口々に私のことを応援してくれた。
知らぬうちに私は優勝候補の一角にされていた。
オッズも私の方が今回は高かった。
「むふふふ……っ、あーっ、気持ちよかったぁーっ♪」
「おい、人前でいかがわしい言葉を使うなっての……」
「えーっ、でもさーっ、私とお父様が見つけたクルシュがさーっ、今こんっっなにっ!! 注目を浴びてるんだよーっ!?」
「おう、お前とホスロー殿には心から感謝してんよ」
いつかしっかりと礼をしなければならないだろう。
「いいよいいよ、タダで優勝候補様をエスコートできたんだしっ!」
「はぁ……? なんだそりゃ……?」
「こういうのって、お金持ちや権力者のステータスなんだよねー」
「エスコートが、ステータス……? そうなのか?」
「『私がこの選手のパトロンです! 私はこの選手のように凄い人なのでーす!』ってやるためにー、大金を出す人がいっぱいいるんだよー」
ああ、なるほどな、そういう世界もあるのか。
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歴史を振り返れば古代ローマでも、コロッセオの花形剣闘士の垢に、貴婦人たちが競うように大金を出したという。
「それが、タダ! タダっていいよねーっ、むふふふふっ♪」
「お前はなんていうかよ、健康的だな」
「へへーっ、よくわかんないけどありがと!」
こういう人間だからこそ稼いだ金を任せられる。
ティティスは歪みなく誠実で、若く強いエネルギーを持っている。
彼女とはこれからもいい取引をしていけそうだった。
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