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竜将軍大会第三回戦:策士クルシュ VS 魔弓使いナルギス
・カロン・オボロス(職業:貧乏漫画家) - パトロン -
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「おら、続き描くだ! 描けって、問屋さんにも言われてるだーよっ!」
「それはおめでとうございます。一介のファンとして、これほど喜ばしいことはございません」
私が先日巻いた種は早くも芽を出した。
引退を決意した作者が再び筆を取らんとしていた。
「おおおお恐れ多いべぇっ!? ほほほほ本当にっ、クルシュ様はおらのファンなんだべかっ?!」
「何を当然のことを。今はイーラジュ様に貸してしまっていますが、青騎士物語は全5巻全て――」
「ヒエエエーッッ?!! 千竜将軍様にぃぃぃーっっ?!!」
「ええ、イーラジュ様も大絶賛していましたよ」
私は軽く鼻をつまみながら彼女を賞賛した。
失礼なのはわかっているが、こうでもしないと笑顔が保てない。
「あの、クルシュさん? よろしければ私が、お客様を公共浴場にお連れしましょうか……?」
女性の方が嗅覚が鋭敏だというのに、ココロさんは臭いを気にする様子もなくそう言う。
「悪ぃけど遠慮しとくべ! おら、今一門無しだべさっ!」
「それは大変! クルシュさんっ、私たちで支援しましょう!」
一文無しだそうだ。
そこまで知っては、このまま帰らせるわけにはいかないだろう。
「そうしますか。ではココロさん、私が屋敷に入れたお金で、彼女に新しい服も用意していただけますか?」
「と、とんでもねぇべっ! そこまでしてもらうわけにはいかねぇだよぉっ?!」
「いえ、その格好では私が目のやり場に困るのです」
彼女の服は袖も裾もどこもかしこも大穴だらけだ。
やむを得ずそういう格好をしているのではなく、そういう格好でも全く気にしない人種なのだろう……。
「お、おら、クルシュ様にそういう目で見ていただけてるべか……? うぇ、うぇへぇへぇ……なんか、む、胸がときめいてきたべぇ……♪」
私は応接間の天井を見上げ、少しの間だけで放心させていただいた。
「カロンさん、私は稽古に戻らなければなりませんので、しばし浴場の湯に浸かってお待ちいただけますか……?」
彼女のペンネームはカロン・オボロス。
カロン・オボロスは3分前までは、ミステリアスな女性像を連想させられる魅惑的な名だった。
「おら、お礼を言いにきただけだべよ……?」
「ふ……まさかこのまま帰れるとお思いで?」
「ぴぇっ?! お、おらをどうするつもりだべ……っ!?」
「知れたこと! 一文無しと聞かされた以上は、ファンとして、ありとあらゆるお節介をかけさせていただく!」
私がそう宣言するとココロさんがおかしそうに笑ってくれた。
「私も賛成です。続きを描いていただかなければ困ります」
「お、おら……おら……っ、こんなに人にやさしくされたの、初めてだぁよぉぉーっっ!!?」
正直少し、興ざめだった。
あんなに熱く美しい物語を描く人が、こんな残念ななりなのだから。
彼女が本当にあのカロン・オボロスであるならば、私は彼女のパトロンとなろう。
パトロンとして、まずは風呂に入っていただき、まともな服も着ていただこう。
「ふふふ……っ、ティティスちゃんも呼んでしまいましょうか?」
「それは風呂に入れてからにした方がいい……。では、申し訳ありませんがお任せいたします……」
「お任せ下さい。お夕飯の支度は終わっていますから、いいんですよ」
そういうわけで二人を見送ると、私はソウジン殿の元に戻った。
「常識のない客人だったようだな」
「俺たちみたいな戦闘バカもそう変わらないと思うぞ……」
「風呂には入る」
「彼女は風呂よりも絵の仕事が好きなだけだ。そんなに悪いやつじゃない」
「お前はお人好しが過ぎる」
「違うな。やっと賞金の使い道が見つかるかもしれないんだ、逃がしてやるものかよ」
私はソウジン殿との稽古に戻った。
夕方前の忙しい時間に、面倒なことをココロさんに押し付けてしまった。
帰ってきたら台所の手伝いをするのもいいかもしれない。
「それはおめでとうございます。一介のファンとして、これほど喜ばしいことはございません」
私が先日巻いた種は早くも芽を出した。
引退を決意した作者が再び筆を取らんとしていた。
「おおおお恐れ多いべぇっ!? ほほほほ本当にっ、クルシュ様はおらのファンなんだべかっ?!」
「何を当然のことを。今はイーラジュ様に貸してしまっていますが、青騎士物語は全5巻全て――」
「ヒエエエーッッ?!! 千竜将軍様にぃぃぃーっっ?!!」
「ええ、イーラジュ様も大絶賛していましたよ」
私は軽く鼻をつまみながら彼女を賞賛した。
失礼なのはわかっているが、こうでもしないと笑顔が保てない。
「あの、クルシュさん? よろしければ私が、お客様を公共浴場にお連れしましょうか……?」
女性の方が嗅覚が鋭敏だというのに、ココロさんは臭いを気にする様子もなくそう言う。
「悪ぃけど遠慮しとくべ! おら、今一門無しだべさっ!」
「それは大変! クルシュさんっ、私たちで支援しましょう!」
一文無しだそうだ。
そこまで知っては、このまま帰らせるわけにはいかないだろう。
「そうしますか。ではココロさん、私が屋敷に入れたお金で、彼女に新しい服も用意していただけますか?」
「と、とんでもねぇべっ! そこまでしてもらうわけにはいかねぇだよぉっ?!」
「いえ、その格好では私が目のやり場に困るのです」
彼女の服は袖も裾もどこもかしこも大穴だらけだ。
やむを得ずそういう格好をしているのではなく、そういう格好でも全く気にしない人種なのだろう……。
「お、おら、クルシュ様にそういう目で見ていただけてるべか……? うぇ、うぇへぇへぇ……なんか、む、胸がときめいてきたべぇ……♪」
私は応接間の天井を見上げ、少しの間だけで放心させていただいた。
「カロンさん、私は稽古に戻らなければなりませんので、しばし浴場の湯に浸かってお待ちいただけますか……?」
彼女のペンネームはカロン・オボロス。
カロン・オボロスは3分前までは、ミステリアスな女性像を連想させられる魅惑的な名だった。
「おら、お礼を言いにきただけだべよ……?」
「ふ……まさかこのまま帰れるとお思いで?」
「ぴぇっ?! お、おらをどうするつもりだべ……っ!?」
「知れたこと! 一文無しと聞かされた以上は、ファンとして、ありとあらゆるお節介をかけさせていただく!」
私がそう宣言するとココロさんがおかしそうに笑ってくれた。
「私も賛成です。続きを描いていただかなければ困ります」
「お、おら……おら……っ、こんなに人にやさしくされたの、初めてだぁよぉぉーっっ!!?」
正直少し、興ざめだった。
あんなに熱く美しい物語を描く人が、こんな残念ななりなのだから。
彼女が本当にあのカロン・オボロスであるならば、私は彼女のパトロンとなろう。
パトロンとして、まずは風呂に入っていただき、まともな服も着ていただこう。
「ふふふ……っ、ティティスちゃんも呼んでしまいましょうか?」
「それは風呂に入れてからにした方がいい……。では、申し訳ありませんがお任せいたします……」
「お任せ下さい。お夕飯の支度は終わっていますから、いいんですよ」
そういうわけで二人を見送ると、私はソウジン殿の元に戻った。
「常識のない客人だったようだな」
「俺たちみたいな戦闘バカもそう変わらないと思うぞ……」
「風呂には入る」
「彼女は風呂よりも絵の仕事が好きなだけだ。そんなに悪いやつじゃない」
「お前はお人好しが過ぎる」
「違うな。やっと賞金の使い道が見つかるかもしれないんだ、逃がしてやるものかよ」
私はソウジン殿との稽古に戻った。
夕方前の忙しい時間に、面倒なことをココロさんに押し付けてしまった。
帰ってきたら台所の手伝いをするのもいいかもしれない。
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