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竜将軍大会第二回戦:実力派の超ド素人クルシュ VS 外道傀儡師ドローミ
・第二回戦:VS傀儡師ドローミ - スーパーヒーローならば銃弾を斬れる -
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その頃、貴賓席では――
「キョウコさんや」
「なーに、お爺ちゃん?」
「今……銃の音がせんかったか?」
「あーー、今のー、銃だったのねー。なんだか久しぶりー」
「……キョウコさんや」
「なーにー?」
「ワシ、あの音嫌いじゃ……。嫌なことを思い出す……」
「そうねー……」
「止めておくれ」
「はーい♪」
・
「ああ、1つ教えてやろう……。この銃には、君の友人を操った毒が仕込んである……」
「へ、へぇ……?」
いくら鎧を着込んでいても、当たりどころが悪ければ私は死ぬだろう。
私は頭部を腕で庇いながら、刀を上段で構えていた。
「君は公衆の目の前で、自分の首を斬って死ぬんだねぇ……?」
「あ、当たらなければ、どうということはない……!」
罵声が傀儡師ドローミに降り注いでいた。
観客は反則だとわめき、口々にドローミを侮辱した。
私も銃は反則だと思う。
「ならもう一度、コイツの銃弾を斬り捨ててみろよっっ!!」
「や、やってやろうじゃんよっっ!!」
私はスーパーヒーローだ!
スーパーヒーローならば銃弾を斬れる!!
何度でも!!
「いぎゃっっ?!!」
ところがその時、天から銀色の閃光が降り注いだ。
閃光はカッコいいウェスタン風の拳銃を貫き、弾丸を暴発させながらも吹き飛ばした。
よくわからないが、これは絶好の好機だった。
私は大地を蹴ってヤツに突っ込んだ。
フレッシュゴーレムを動かされるよりも先に懐に踏み込み、そして私は報復の連打を放った。
「峰打ちっ!! 峰打ちっ!! 峰打ちぃぃぃっっ!!!!」
たかが峰打ち、されと峰打ち、鉄の塊で殴られたら下手すりゃ人は死ぬ。
私は殺さぬように急所を避けながら、ヤツの左肩、右大腿骨、そして顎の骨を砕いた!
ヤツはもはや悲鳴を上げることもできず、うずくまって苦悶の声を上げるだけの重症患者となった。
「二度とキョウの都に近付くな。俺がお前を許しても、千竜将軍イーラジュがお前をぶち殺すと既に宣言している」
返事はなかった。
顎を砕かれたのだから当然だ。
ふと、先ほどの銀の光が気になった。
転がっていたリボルバー拳銃に寄ってみた。
「なんだこりゃ……バターナイフ……?」
拳銃を貫いた銀色の光は、まさかのバターナイフだった。
「おほほほっ! この大会だとあるのよ、たまーに。バターナイフの雨が降るときが」
「あるわけねーだろ……っ」
「まあいいじゃない、勝てたんだから。まったくもう、あちしまで騙されちゃったわよ。やるわねぇ、ミスター」
私はモーリーに無傷の右腕を掲げられた。
その動作こそが勝利確定の証。バクチの勝者と敗者の分かれ目だ。
割れんばかりの叫び声が観客席から降り注ぎ、勝利者である私を祝福してくれた。
バクチに勝ったやつも負けたやつも、見応えのある熱い試合に感動していた。
「勝者!! 奇跡のド素人・クルシュ!! ドローミの卑怯な策略も、このクルシュには通用しなかったわ!! 大穴狙いのミセスミスターッ、まーたーもやっ、おめでとぉございまぁぁーっすっっ!!」
私は賞賛の嵐を受け止めた。
与えられた栄誉を受け止め、胸を張って観客席を見上げた。
別に私は名誉が欲しいわけではなかったが、今の私はスーパーヒーローを体言していた。
やがてほどよいところで、キョウコさんが貴賓席より飛び降りてきた。
「見事な試合でした、クルシュ選手。こちら金80は、大会主催者・聖帝からの賜り物です。……すっごく、かっこよかったわよー♪」
「ありがとう、キョウコさん」
私は金80を受け取り、その金を四方に掲げた。
皆の歓声が心地よかった。
「さて、第二回戦を勝ち抜いた勇者には、聖帝はごく小さな願いを叶えることにしています。クルシュよ、何か願い事はありますか?」
願いはない。
貴賓席に座する聖帝にそうこの前言った手前ではあるが、今の私には小さな願いがあった。
「ございます」
「そうですか。ではあちらにおわします聖帝に、声を大にして願って下さい」
私は頭上の、遙か遠い観覧席の老人を見上げた。
この老人ならばきっと理解してくれる願いだろう。
「聖帝よ!! ヤツカハギ帝国の偉大なる帝よ!! この場を借りて宣伝したいことがあるのだが、よろしいか!!?」
私の声はマイクで拡張されていた。
開場中に奇妙な願い事がとどろくことになった。
「宣伝とな……。面白い、許可しよう」
いつぞ聞いた声が頭上から届き、私は聖なる帝を背に観衆を見上げた。
「私は、青騎士物語という絵巻を愛読している!! この絵巻は先日、打ち切りの憂き目に遭った!! 作者はこれを期に引退をするつもりだっ!!」
寝耳に水だっただろう。
竜将大会の勝利者が、いきなり漫画とか陰キャの話を始めて、さぞ意外だろう。
開場は静まり返っていた。
「俺の願いはただ一つ!! 青騎士物語を買ってくれ!! 絶対に面白いから、皆が買うべきだ!! 超面白い絵巻が、人知れず消えてゆくなんて、俺は忍びない!!」
反響はいま一つだ。
何せ場違いだ、大反響なんて起きても嘘くさい。
だがこれだけの大観衆だ。
1%でも興味を持ってくれれば、愛読書への大きな支援になるはずだ。
「私の願いは以上だ!! もし興味がわいたら、南街の絵巻横町なりで、青騎士物語を買い求めてくれっっ!!」
金は貰った。宣伝もした。報復も果たした。
ここでの私の役目はこれで終わった。
私はポカーンとしている観客たちをそのままにして、大闘技場の舞台を去った。
「キョウコさんや」
「なーに、お爺ちゃん?」
「今……銃の音がせんかったか?」
「あーー、今のー、銃だったのねー。なんだか久しぶりー」
「……キョウコさんや」
「なーにー?」
「ワシ、あの音嫌いじゃ……。嫌なことを思い出す……」
「そうねー……」
「止めておくれ」
「はーい♪」
・
「ああ、1つ教えてやろう……。この銃には、君の友人を操った毒が仕込んである……」
「へ、へぇ……?」
いくら鎧を着込んでいても、当たりどころが悪ければ私は死ぬだろう。
私は頭部を腕で庇いながら、刀を上段で構えていた。
「君は公衆の目の前で、自分の首を斬って死ぬんだねぇ……?」
「あ、当たらなければ、どうということはない……!」
罵声が傀儡師ドローミに降り注いでいた。
観客は反則だとわめき、口々にドローミを侮辱した。
私も銃は反則だと思う。
「ならもう一度、コイツの銃弾を斬り捨ててみろよっっ!!」
「や、やってやろうじゃんよっっ!!」
私はスーパーヒーローだ!
スーパーヒーローならば銃弾を斬れる!!
何度でも!!
「いぎゃっっ?!!」
ところがその時、天から銀色の閃光が降り注いだ。
閃光はカッコいいウェスタン風の拳銃を貫き、弾丸を暴発させながらも吹き飛ばした。
よくわからないが、これは絶好の好機だった。
私は大地を蹴ってヤツに突っ込んだ。
フレッシュゴーレムを動かされるよりも先に懐に踏み込み、そして私は報復の連打を放った。
「峰打ちっ!! 峰打ちっ!! 峰打ちぃぃぃっっ!!!!」
たかが峰打ち、されと峰打ち、鉄の塊で殴られたら下手すりゃ人は死ぬ。
私は殺さぬように急所を避けながら、ヤツの左肩、右大腿骨、そして顎の骨を砕いた!
ヤツはもはや悲鳴を上げることもできず、うずくまって苦悶の声を上げるだけの重症患者となった。
「二度とキョウの都に近付くな。俺がお前を許しても、千竜将軍イーラジュがお前をぶち殺すと既に宣言している」
返事はなかった。
顎を砕かれたのだから当然だ。
ふと、先ほどの銀の光が気になった。
転がっていたリボルバー拳銃に寄ってみた。
「なんだこりゃ……バターナイフ……?」
拳銃を貫いた銀色の光は、まさかのバターナイフだった。
「おほほほっ! この大会だとあるのよ、たまーに。バターナイフの雨が降るときが」
「あるわけねーだろ……っ」
「まあいいじゃない、勝てたんだから。まったくもう、あちしまで騙されちゃったわよ。やるわねぇ、ミスター」
私はモーリーに無傷の右腕を掲げられた。
その動作こそが勝利確定の証。バクチの勝者と敗者の分かれ目だ。
割れんばかりの叫び声が観客席から降り注ぎ、勝利者である私を祝福してくれた。
バクチに勝ったやつも負けたやつも、見応えのある熱い試合に感動していた。
「勝者!! 奇跡のド素人・クルシュ!! ドローミの卑怯な策略も、このクルシュには通用しなかったわ!! 大穴狙いのミセスミスターッ、まーたーもやっ、おめでとぉございまぁぁーっすっっ!!」
私は賞賛の嵐を受け止めた。
与えられた栄誉を受け止め、胸を張って観客席を見上げた。
別に私は名誉が欲しいわけではなかったが、今の私はスーパーヒーローを体言していた。
やがてほどよいところで、キョウコさんが貴賓席より飛び降りてきた。
「見事な試合でした、クルシュ選手。こちら金80は、大会主催者・聖帝からの賜り物です。……すっごく、かっこよかったわよー♪」
「ありがとう、キョウコさん」
私は金80を受け取り、その金を四方に掲げた。
皆の歓声が心地よかった。
「さて、第二回戦を勝ち抜いた勇者には、聖帝はごく小さな願いを叶えることにしています。クルシュよ、何か願い事はありますか?」
願いはない。
貴賓席に座する聖帝にそうこの前言った手前ではあるが、今の私には小さな願いがあった。
「ございます」
「そうですか。ではあちらにおわします聖帝に、声を大にして願って下さい」
私は頭上の、遙か遠い観覧席の老人を見上げた。
この老人ならばきっと理解してくれる願いだろう。
「聖帝よ!! ヤツカハギ帝国の偉大なる帝よ!! この場を借りて宣伝したいことがあるのだが、よろしいか!!?」
私の声はマイクで拡張されていた。
開場中に奇妙な願い事がとどろくことになった。
「宣伝とな……。面白い、許可しよう」
いつぞ聞いた声が頭上から届き、私は聖なる帝を背に観衆を見上げた。
「私は、青騎士物語という絵巻を愛読している!! この絵巻は先日、打ち切りの憂き目に遭った!! 作者はこれを期に引退をするつもりだっ!!」
寝耳に水だっただろう。
竜将大会の勝利者が、いきなり漫画とか陰キャの話を始めて、さぞ意外だろう。
開場は静まり返っていた。
「俺の願いはただ一つ!! 青騎士物語を買ってくれ!! 絶対に面白いから、皆が買うべきだ!! 超面白い絵巻が、人知れず消えてゆくなんて、俺は忍びない!!」
反響はいま一つだ。
何せ場違いだ、大反響なんて起きても嘘くさい。
だがこれだけの大観衆だ。
1%でも興味を持ってくれれば、愛読書への大きな支援になるはずだ。
「私の願いは以上だ!! もし興味がわいたら、南街の絵巻横町なりで、青騎士物語を買い求めてくれっっ!!」
金は貰った。宣伝もした。報復も果たした。
ここでの私の役目はこれで終わった。
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