26 / 70
竜将軍大会第二回戦:実力派の超ド素人クルシュ VS 外道傀儡師ドローミ
・上は熱々トロトロ、下は地獄、これなーんだ? - 正解はタコパ -
しおりを挟む
地上に戻ると帰還の手続きをして廊下に出て、ソコノネの迷宮が有するモールに入った。
迷宮帰りだからか、食べ物の匂いがこの前よりも強烈だった。
「あ、おかえりー! うわぁ、汗くさぁー!」
「お疲れさまです。はふはふ……」
モールの一角の席にティティスとココロさんを見つけた。
二人は非常に美味しそうな、たこ焼きを食べていた。
「それ、いいな……分けてくれないか?」
「やーだー。自分で買ったらー?」
「人から金を巻き上げてよくそういうことが言えるな、お前……っ」
「はふはふ……。イーラジュ様は、ご一緒ではないのですか?」
「ああ、イーラジュ様ならキョウコさんとご出勤だ。なにせ千竜将軍だからな」
イーラジュ様は竜将大会の賓客だ。
全日程とまでは言わなくとも、大会を観戦するのが仕事だ。
「キョウコ様ですか、それなら問題なさそうですね」
「問題とは?」
「勝手に飲み屋に行かれたりすると、体調管理を任されている者として困るのです……。イーラジュ様の飲酒量を報告する義務が、私にはありまして……」
それは聖帝からの頼みか何かだろうか。
「そりゃ大変だ」
「ココロはクルシュの栄養バランスも考えてくれてるんだよ。もっとココロに感謝しなさいよーっ!」
「そうだったのですか! ありがとうございます、ココロさん!」
「え……!? わ、私はただ、皆さんを支えたくて、好きでやっているだけですから……」
腹が減っていた私はたこ焼きを3舟買った。
今の私ならばこの程度、熱々だろうと5分でペロリだ。
「うわ、クルシュってば気が利くーっ!」
「ありがとうございます! ちょっと足りないと、思っていたところでして……!」
「な……」
私のたこ焼きは一瞬で3分の1になった。
もしや私は、この美しい花たちにたかられていたりはしないだろうか……?
「はふはふ、うんまーっ!!」
「美味しい……。こういうところのご飯って、どうしてこんなに美味しいのでしょうね!」
いや、この笑顔が見られるなら安いものか。
「それは、こういうところだから美味しいのですよ」
「それあたしが言おうとしてたセリフだから!」
私はスーパーヒーローになる男だ。
スーパーヒーローは少したかられた程度で気分など害さない。
「よろしかったらまた迎えにきて下さい。誰かに迎えにきてもらえることが、こんなに嬉しいことだとは知りませんでした……」
「じゃ、クルシュの投資からここの飲食代抜いとくね!」
「お前はちょっとくらい遠慮しろよっ!?」
「あはははっ、大丈夫、順調に増えてるよ!」
「それ本当だろうな……」
増やしてなんて一言も言っていない。
商会の金庫で保管してくれるだけでいいのに……。
ああ、それにしても、ありがとう、聖帝……。
貴方が先にこの世界にきていてくれたおかげで、私はたこ焼きが食べられる……。
「あ、そうそう、青騎士物語の作者さんね、引退するかもって」
「ブフゥゥッッ?!!」
「あーっ、もったいなーっ!?」
「なっ、なんだとぉぉぉぉーーっっ?!!」
喜びに浸っているところに、不意打ちで悪いニュースをたれ流すのは条約違反にしてもよいと私は思うのだが!
「そんな、すごく面白かったのに……残念ですね……」
「ちょっと趣味はマニアックだけど、絵も上手いし、結構光る物がいっぱいあるだけに、残念だよねー」
「そうですよっ、地道に続ければ、成功できる作風だと思います!」
私も同感だ。
引退するのは気が早いと、今すぐ伝えに行きたい。
だがこの時代にはSNSがない。
無論、古きよきアンケートはがきもだ。
「光る個性がある作家は引退するべきではない……。なぜなら引退なんてされては、もう二度とその作風を楽しめなくなってしまうではないか……!」
私は机に拳を叩きつけた。
ティティスは私などお構いなしで、私の舟からたこ焼きを奪っていった……。
「そう思いますっ、私もそう思いますっ、続きを読みたいです! 引退なんて早――痛……っ?!」
ところがちょっと迷惑なオタトークが盛り上がっているところで、ココロさんが手首を抱いた。
ココロさんの表の手首に、小さな鋲が刺さっていた。
「ちょ、大丈夫っ!?」
「え、ええ……でも、なんでしょう、これ……?」
ココロさんは手首から鋲を抜いて、それをテーブルに置いた。
見たところ真鍮製の鋲だった。
針部分は鉄だろうか。
それだけでもだいぶ珍しい物品に見える。
「もしかして、誰かにやられたのか?」
「あっ、そうだよ! だってそんなのテーブルに置いてあったら普通気づくもん!」
私たちは辺りを見回した。
しかし既に時遅く、それらしい姿はどこにもなかった。
「そうだとしたら、気味が悪いです……」
「あたしらが楽しそうにしてたのが気に入らなかったのかな……なんか最悪っ」
気分をそがれた私たちは、たこ焼きをもう2舟買って食べてから屋敷に帰った。
まだ食べられるからと言って、1舟を二人に奪われたのはまあ、詳しく解説するまでもないことだろう。
迷宮帰りだからか、食べ物の匂いがこの前よりも強烈だった。
「あ、おかえりー! うわぁ、汗くさぁー!」
「お疲れさまです。はふはふ……」
モールの一角の席にティティスとココロさんを見つけた。
二人は非常に美味しそうな、たこ焼きを食べていた。
「それ、いいな……分けてくれないか?」
「やーだー。自分で買ったらー?」
「人から金を巻き上げてよくそういうことが言えるな、お前……っ」
「はふはふ……。イーラジュ様は、ご一緒ではないのですか?」
「ああ、イーラジュ様ならキョウコさんとご出勤だ。なにせ千竜将軍だからな」
イーラジュ様は竜将大会の賓客だ。
全日程とまでは言わなくとも、大会を観戦するのが仕事だ。
「キョウコ様ですか、それなら問題なさそうですね」
「問題とは?」
「勝手に飲み屋に行かれたりすると、体調管理を任されている者として困るのです……。イーラジュ様の飲酒量を報告する義務が、私にはありまして……」
それは聖帝からの頼みか何かだろうか。
「そりゃ大変だ」
「ココロはクルシュの栄養バランスも考えてくれてるんだよ。もっとココロに感謝しなさいよーっ!」
「そうだったのですか! ありがとうございます、ココロさん!」
「え……!? わ、私はただ、皆さんを支えたくて、好きでやっているだけですから……」
腹が減っていた私はたこ焼きを3舟買った。
今の私ならばこの程度、熱々だろうと5分でペロリだ。
「うわ、クルシュってば気が利くーっ!」
「ありがとうございます! ちょっと足りないと、思っていたところでして……!」
「な……」
私のたこ焼きは一瞬で3分の1になった。
もしや私は、この美しい花たちにたかられていたりはしないだろうか……?
「はふはふ、うんまーっ!!」
「美味しい……。こういうところのご飯って、どうしてこんなに美味しいのでしょうね!」
いや、この笑顔が見られるなら安いものか。
「それは、こういうところだから美味しいのですよ」
「それあたしが言おうとしてたセリフだから!」
私はスーパーヒーローになる男だ。
スーパーヒーローは少したかられた程度で気分など害さない。
「よろしかったらまた迎えにきて下さい。誰かに迎えにきてもらえることが、こんなに嬉しいことだとは知りませんでした……」
「じゃ、クルシュの投資からここの飲食代抜いとくね!」
「お前はちょっとくらい遠慮しろよっ!?」
「あはははっ、大丈夫、順調に増えてるよ!」
「それ本当だろうな……」
増やしてなんて一言も言っていない。
商会の金庫で保管してくれるだけでいいのに……。
ああ、それにしても、ありがとう、聖帝……。
貴方が先にこの世界にきていてくれたおかげで、私はたこ焼きが食べられる……。
「あ、そうそう、青騎士物語の作者さんね、引退するかもって」
「ブフゥゥッッ?!!」
「あーっ、もったいなーっ!?」
「なっ、なんだとぉぉぉぉーーっっ?!!」
喜びに浸っているところに、不意打ちで悪いニュースをたれ流すのは条約違反にしてもよいと私は思うのだが!
「そんな、すごく面白かったのに……残念ですね……」
「ちょっと趣味はマニアックだけど、絵も上手いし、結構光る物がいっぱいあるだけに、残念だよねー」
「そうですよっ、地道に続ければ、成功できる作風だと思います!」
私も同感だ。
引退するのは気が早いと、今すぐ伝えに行きたい。
だがこの時代にはSNSがない。
無論、古きよきアンケートはがきもだ。
「光る個性がある作家は引退するべきではない……。なぜなら引退なんてされては、もう二度とその作風を楽しめなくなってしまうではないか……!」
私は机に拳を叩きつけた。
ティティスは私などお構いなしで、私の舟からたこ焼きを奪っていった……。
「そう思いますっ、私もそう思いますっ、続きを読みたいです! 引退なんて早――痛……っ?!」
ところがちょっと迷惑なオタトークが盛り上がっているところで、ココロさんが手首を抱いた。
ココロさんの表の手首に、小さな鋲が刺さっていた。
「ちょ、大丈夫っ!?」
「え、ええ……でも、なんでしょう、これ……?」
ココロさんは手首から鋲を抜いて、それをテーブルに置いた。
見たところ真鍮製の鋲だった。
針部分は鉄だろうか。
それだけでもだいぶ珍しい物品に見える。
「もしかして、誰かにやられたのか?」
「あっ、そうだよ! だってそんなのテーブルに置いてあったら普通気づくもん!」
私たちは辺りを見回した。
しかし既に時遅く、それらしい姿はどこにもなかった。
「そうだとしたら、気味が悪いです……」
「あたしらが楽しそうにしてたのが気に入らなかったのかな……なんか最悪っ」
気分をそがれた私たちは、たこ焼きをもう2舟買って食べてから屋敷に帰った。
まだ食べられるからと言って、1舟を二人に奪われたのはまあ、詳しく解説するまでもないことだろう。
14
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる