今日から始める最強伝説 - 出遅れ上等、バトル漫画オタクは諦めない -

ふつうのにーちゃん

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竜将大会予選:ソコノネの迷宮編

・予選突破! - だがクルシュは帰り道がわからない! -

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 4度、キョウコさんとナルギスのいるチェックポイントにたどり着くと、私は出会い頭に祝福された。

「予選突破、おめでとぉーーっ♪ お姉さん、感動しちゃったーー♪」
「おめでとう。君はボクの恩人だけど、本戦で当たったら手加減はしないよ」

 そう、私はオーバーランをしていた。
 トッパたちがあの階層で獲物を狩っていたのは、おおよその予選突破ラインを把握していたからだった。

「先に、言えよ……」
「すまない、なんだか楽しそうで言い出し難かった」
「若さって、いいわよねー……♪」

 地上に繋がるエレベーターはここチェックポイントにある。
 私はナルギスと同じエレベーターで地上に戻った。

「住まいは千竜将軍イーラジュのところか?」
「おうっ、生傷の絶えない騒がしい下宿先だぜ」

「ボクは南町のひまわり亭という宿に滞在している。彼女を待たせているから、今日のところはこれで失礼するよ」
「へぇ、彼女がいるなんて、羨まし……彼女?」

「ん? ボクに彼女がいちゃ悪いかい?」
「…………さ、最近の子は、自由だな……」

 これだけのクールビューティならば、彼女がいたところでなんの不自然もなかった。
 最近の異世界は、多様化が進んでいるな……。

「ふっ、時々君はおじさんみたいになるね」
「ほっとけっ!」

「また会おう」

 地上に着くとそこはあのモールではなかった。
 職員が1人たたずんでおり、要領のわからない私に後日結果を連絡するとだけ伝えて、帰宅を勧めた。

 私は豆腐のような、モールのような、監獄のような、ソコノネの迷宮から、キョウの空の下に戻った。

 しかし私は自由な空の下で途方に暮れることになった。
 意気揚々と出てきたのはいいものの、どうも帰り道が思い出せない。

 なんとか思い出そうとしても、頭に浮かぶのはソコノネの迷宮の不可思議な世界ばかりだ……。

 確かあちら側からきたはずだが、やはり反対方向が正しいような気もする……。
 西からノボったお日様が、東に沈むわけだから……。

 ん、これも、逆か……?

「クルシュさん」
「迎えにきてあげたよーっ、迷子になったら困るしっ!」

 ところがそこに救いの女神がやってきた。
 ちょっと泣きそうになりかけていた私は、汗を拭うふりをして声に振り返った。

「助かるぜ! ちょうど帰り道がわからなくて、困り果ててたところだった!」
「ふふ……私もわかります。キョウはあまりにも広すぎて、事あるごとに迷ってしまいます」
「あるあるー、地元民でもちょーっと道を外れるとー、なんにもわかんなくなるもんねー」

 私は救いの女神たちと共に居候先へと帰った。
 女神たちは私を左右からまた囲んで、私を幸福にしてくれた。

 ただ少し違和感があった。
 なぜ私に大金を賭けているティティスが、予選について詳しく聞いてこないのか?

「あたし、イーラジュ様のところに着いたら帰るね。巻き込まれたくないしー」
「はい、それがよろしいかと……」
「なんの話だ?」

「ふふーっ、着けばわかるよー。それよかクルシュ、予選突破おめでとーっっ! 信じてたよ、あたし!」
「あ、ありがとう……けど、まだ確定したわけじゃねーぜ?」

 そもそもなんで結果をお前が知っている。
 その予選突破の話、どこ情報だ?

「あの……クルシュさん……」
「はい、なんですか、ココロさん?」

「屋敷には今、大切なお客様がいらっしゃっています。失礼がないよう、お願いします」
「イーラジュ様の客人ですか? でしたら私は間を置いて――」

「お客様は貴方に会いたいとおっしゃっております。紳士なクルシュさんでお願いします」
「間違っても頭とかどついたらダメだよー? 気を付けてよねー?」
「お、おう……?」

 屋敷の前に着くと、ティティスは私を再び祝福して帰っていった。
 私はココロさんの背後に付き従って屋敷に戻り、なんだかやかましい居間へと通された。

「おおっ、帰ったか、バカ弟子!! 爺さんっ、これがバカ弟子最高記録を更新したスーパーバカの! クルシュだ、ガハハッ!」

 平時はイーラジュ様が陣取っているはずの上座に、一人の老人があぐらをかいていた。
 老人は飲みかけの酒をぐいとやると、やさしそうな微笑みを浮かべて私を見た。

「ほれ、ワシの向かいに座れ。待っておったぞ、クルシュよ」
「あ、ああ……」

 言われた通りにした。
 そこには私のための杯が手配されており、ソウジン殿が酒を注いでくれた。

「お前には恐れ入った」
「ソウジン……?」

 出会った最初はメチャメチャ厳しかったソウジン殿が私を賞賛してくれた。

「ソウジン、例の物をクルシュくんに」
「は……っ」

 ソウジン殿のでかい手が、青い化粧箱を丁重に抱え、それを私に差し出した。
 私はそれを受け取りすぐに開けた。

「これは、予選通過の証……?」

 それはサファイアの埋め込まれた青いコインだった。
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