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【探索】大型モール:悪徳のロリババァランド
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隣に彼女がいて、目の前に楽しげなモールがあって、ちょうど仕事もなく暇していたら、人はどういった行動を取るか?
<「 ポンちゃんお菓子探しに行ってくるもきゅ! お先にもきゅ! 」
例外1、ポイントカードになれそうなまん丸いたぬきの場合は畜生である自覚をかなぐり捨てて、お菓子とクレーンゲームを求めて全力疾走でモールに飛び込む。
<「 ラングリシュエルワールド最高もきゅぅーっ! ぷぎゃっ?! 」
そしてワックスがかけられたばかりのグリップ力100%の床に足を取られ、事故車となる。いや、事故たぬきはそれでもめげずにお菓子を求めて奥に駆けていった。
「はっ!? あたしたちも行こうよ、アルトーッ!」
「僕はいいけど、仕事はいいの?」
思ってもいないことを言ってしまった。
これは小心者の理屈だけど、ああいう大型モールはボッチで入るような場所じゃない。
家族連れとか彼女連れ友達連れとかに『ええー、君なんでボッチでこんなところにきてるんですかー、わぁすごい、驚きー!?』みたいな目で見られるのはもうたくさんだ!
「うん! 何せあたし、一人親方ですからー!」
「やった! ……あ、いや……」
まだ歳なのに似合わない咳払いをして、僕は喉元のボタンを締め直した。
「領主として君の働きぶりが頼もしいよ。僕も兄上も、皇帝家では微妙な立場だからね。優れた装備を手配してもらえて本当に助かっている」
いや、僕はこんな話をしたいんじゃない。平日の午後を彼女とモールでエンジョイしたい! 単刀直入に僕もリア充になりたい! その第一歩として僕は、取り急ぎ――ロゼッティアと手を繋いで中に入りたい!!
「アルトは考えてることわかりやすいなー」
「な、なんだよ、いきなり……!?」
「えへへー、じゃ、行こーかっ!」
ロゼッティアは僕の手を取ってモールへと駆けた。雨も雪も降っていないのにこんなふうに走ってお店に入るなんて、いかにも子供のすることのようで恥ずかしい。
けれどそう考えてしまうのは僕だけだ。一つ上のお姉さんでもある彼女は、人の目なんてそんなつまらないことは気にもしていなかった。
「わっはーっ、広ーいっ! 床ピカピカッ、天井たかーいっ!」
「大声出さないでよ、恥ずかしいよ……っ」
「あー見てっ、パン屋さんだって! あっ、あっちはドーナッツ屋さんっ、なんかすごく甘い匂いのするお店もあるぅーっ!」
「お願いだから落ち着いて……わっ!?」
17歳にもなるのに彼女は自覚がない。彼女はまた僕の手を抱き込んで、僕の中の思春期を暴走させかけた。
「あっ、ラッコのマーチのクレープだって! クレープって、何?」
「バターとミルクと砂糖を使った卵の薄焼き。とても美味しいよ」
コンビニの商品を転用するなんて、こっちの世界の人もたくましい。60シルバーもするけど1つ注文してみた。
「あたし、太っちゃうかも……」
「そんなに美味しいの?」
入り口すぐのフードコートで、食べかけのクレープをロゼッティアから受け取って端をかじった。
とても懐かしい味だった。ラッコのマーチのクッキー部分がサクサクしていて、中の融けにくい準チョコレートがクレープとからみ合った。
正統派のクレープとジャンクな準チョコレートの組み合わせは、意外にも好相性だった。
「うん、これは太るかも……。毎日食べたくなってしまう」
「そうだよねー!」
クレープを返すと、一つ上の彼女は僕が食べたところを歯形で上書きした。
「……はぐっ、んーっ、美味しいねーっ、アルトーッ!」
あ、ああ……ぼ、僕の唾液が、ロゼッティアの中に……。と興奮するのは僕が変態だからだろう。
僕は帝都名物ジメピカリャー。こんなふうに女の子とデートできる日がくるなんて、いまだに現実を受け止め切れずにいた。
「おーー……見て見て、どんどんお客さんきてるー」
「あ、本当だ……。どれもザラキアの外からの人たちだね」
「なんかあたし……変な話だけど、このモールがちょっと前からここにあるような気がしてきた……」
「うん、奇遇だね、僕もそんな気がする」
「向かいのあのコンビニも馬車駅も、同じくらいの時に建ったような……」
「ここを建てたのは10分前だけど、ここは1ヶ月以上前からある。そういうことだよ」
窓辺の光が当たると、ロゼッティアの水色の髪はキラキラと透けて見える。職業柄ちょっと金属やオイル臭いところがあるけど、それ以外は完璧な美少女だ。
裏表のないまっすぐなその気質も、多くの人に切り捨てられた過去がある僕にはとても温かく感じられた。
「あははーっ、全然お客さんがとぎれなくて面白ー♪」
「面白いというか、さすがにこんなの予想外だよ……」
正面口を眺めると、改変により急発生したお客様を自動ドアがひっきりなしに迎えている。
お客様はその自動ドアを全く気にすることなくくぐると、家族や友人同士で固まって品物がひしめくモールを散策してゆく。こうなると労働力不足が否まれた。現状、3分1が空き店舗だ。
やがてクレープを食べ終えると、僕たちも彼らお客様に習った。僕の彼女はまた僕の二の腕にしがみ付いてきて、敏感な思春期の心と身体を暴れさせた。
衣料品コーナーで暖かいブーツを買った。そのブーツをロゼッティアにプレゼントすると、跳ね上がるほどに喜んでくれた。
春になったらかわいい服もプレゼントしてあげたい。彼女の水色の髪には、雲のような軽くて白い服が似合うと思う。
「えっへっへー、今日のアルトやさしー」
「君が作る装具への投資だよ。ずっとうちの領地にいてね」
「離れるわけないじゃんっ、こんな楽しいとこ! アルトもいるしねっ!」
「ありがとう。もっともっと君が気に入る街にするよ」
衣料品コーナーを抜けると雑貨コーナー。その雑貨コーナーを右手に曲がって抜けると、通路の左右に世界観を一際無視した施設が広がっていた。
アミューズメント音響き渡るゲームコーナーだ。さすがにビデオゲームはなかったけど、各種のクレーンゲームが目に入った。
「ポンちゃんどこだろー?」
「結構広いね。地元の悪ガキどもが集まりそう」
ポンちゃんを探してゲームコーナーに踏み入ると、僕たちの前に小柄な女性が立ちはだかった。
「よう、クソ領主! ちょっと張っていきなよ!」
「ゲッ、出た、ヤクザババァッ!」
彼女はロリババァ8人衆のうち1人、グレテールさん。単刀直入に言うと、暴力系ロリババァだ。
服装は華やかな振り袖。その振り袖から左腕を出して、さらしの巻かれた薄い胸を露出している。グレテールさんは非常にセンシティブな和装をしたロリババァだった。
そしてこのゲームコーナーは、その任侠風の姿に相応しい特徴を抱えているようだ。
いったい、誰が想像するだろうか。お菓子のクレーンゲームがひしめく眺めているだけでハッピーなエリアの先に――
何やらいやに凄みのある紳士淑女が集う賭場がある、この異様な風景を。
懐かしい畳の香りが嗅覚から吹っ飛ぶくらい、その賭場はモールの奥で堂々と経営されていた。
「はっ、ヤクザはとうの昔に止めたよ。誓って殺しもやってないさ」
いや、賭場の経営は立派な現役のヤクザ行為なのではないだろうか。
「その太い尻尾……ポンちゃん……っ!? そんなとこで何やってるのーっ!?」
<「 ギロリ…… 」
<「あっ、ご主人様とゼッちゃん! ポンちゃん飴ちゃん賭けてたもきゅー! 」
ロゼッティアが賭場にポンちゃんの姿を見つけた。ポンちゃんの掛け金はイチゴ味の飴ちゃん5つだった。
よく見ると周囲の紳士淑女も、大まじめにクレーンゲームのお菓子を賭けている。
「最近はね、クソ御上の締め付けがきつくてねぇ……。うちではこういう流儀なのさ」
「……そういえば、見るに見かねてグレテールさんの賭場に規制をかけたような、そんな面倒な労働をさせられた気がしてきたよ」
そんな事実はないけど、改変によりそういうことになっていた。
「はっ、そのことはまあいいさ。こっちはこっちなりのやり方で、いくらでも稼ぎようがあるってもんさね」
<「 もきゅぅーっ、また勝っちゃったもきゅぅー♪ 」
「調子いいじゃないか、たぬきの旦那」
<「 ポンちゃん女の子もきゅぅーっ! 」
僕は知っていた。ひっくり返してお腹を見ればそんなのこと一目瞭然だった。ポンちゃんはひっくり返されても無抵抗な野生とプライドを放棄したたぬきだった。
僕とロゼッティアは魔法式のクレーンゲームでお菓子を取って、ピンボールで遊んで、メダルゲームをやっている人をちょっと遠目に眺めてからゲームコーナーを離れた。
<「 ポンちゃんお菓子探しに行ってくるもきゅ! お先にもきゅ! 」
例外1、ポイントカードになれそうなまん丸いたぬきの場合は畜生である自覚をかなぐり捨てて、お菓子とクレーンゲームを求めて全力疾走でモールに飛び込む。
<「 ラングリシュエルワールド最高もきゅぅーっ! ぷぎゃっ?! 」
そしてワックスがかけられたばかりのグリップ力100%の床に足を取られ、事故車となる。いや、事故たぬきはそれでもめげずにお菓子を求めて奥に駆けていった。
「はっ!? あたしたちも行こうよ、アルトーッ!」
「僕はいいけど、仕事はいいの?」
思ってもいないことを言ってしまった。
これは小心者の理屈だけど、ああいう大型モールはボッチで入るような場所じゃない。
家族連れとか彼女連れ友達連れとかに『ええー、君なんでボッチでこんなところにきてるんですかー、わぁすごい、驚きー!?』みたいな目で見られるのはもうたくさんだ!
「うん! 何せあたし、一人親方ですからー!」
「やった! ……あ、いや……」
まだ歳なのに似合わない咳払いをして、僕は喉元のボタンを締め直した。
「領主として君の働きぶりが頼もしいよ。僕も兄上も、皇帝家では微妙な立場だからね。優れた装備を手配してもらえて本当に助かっている」
いや、僕はこんな話をしたいんじゃない。平日の午後を彼女とモールでエンジョイしたい! 単刀直入に僕もリア充になりたい! その第一歩として僕は、取り急ぎ――ロゼッティアと手を繋いで中に入りたい!!
「アルトは考えてることわかりやすいなー」
「な、なんだよ、いきなり……!?」
「えへへー、じゃ、行こーかっ!」
ロゼッティアは僕の手を取ってモールへと駆けた。雨も雪も降っていないのにこんなふうに走ってお店に入るなんて、いかにも子供のすることのようで恥ずかしい。
けれどそう考えてしまうのは僕だけだ。一つ上のお姉さんでもある彼女は、人の目なんてそんなつまらないことは気にもしていなかった。
「わっはーっ、広ーいっ! 床ピカピカッ、天井たかーいっ!」
「大声出さないでよ、恥ずかしいよ……っ」
「あー見てっ、パン屋さんだって! あっ、あっちはドーナッツ屋さんっ、なんかすごく甘い匂いのするお店もあるぅーっ!」
「お願いだから落ち着いて……わっ!?」
17歳にもなるのに彼女は自覚がない。彼女はまた僕の手を抱き込んで、僕の中の思春期を暴走させかけた。
「あっ、ラッコのマーチのクレープだって! クレープって、何?」
「バターとミルクと砂糖を使った卵の薄焼き。とても美味しいよ」
コンビニの商品を転用するなんて、こっちの世界の人もたくましい。60シルバーもするけど1つ注文してみた。
「あたし、太っちゃうかも……」
「そんなに美味しいの?」
入り口すぐのフードコートで、食べかけのクレープをロゼッティアから受け取って端をかじった。
とても懐かしい味だった。ラッコのマーチのクッキー部分がサクサクしていて、中の融けにくい準チョコレートがクレープとからみ合った。
正統派のクレープとジャンクな準チョコレートの組み合わせは、意外にも好相性だった。
「うん、これは太るかも……。毎日食べたくなってしまう」
「そうだよねー!」
クレープを返すと、一つ上の彼女は僕が食べたところを歯形で上書きした。
「……はぐっ、んーっ、美味しいねーっ、アルトーッ!」
あ、ああ……ぼ、僕の唾液が、ロゼッティアの中に……。と興奮するのは僕が変態だからだろう。
僕は帝都名物ジメピカリャー。こんなふうに女の子とデートできる日がくるなんて、いまだに現実を受け止め切れずにいた。
「おーー……見て見て、どんどんお客さんきてるー」
「あ、本当だ……。どれもザラキアの外からの人たちだね」
「なんかあたし……変な話だけど、このモールがちょっと前からここにあるような気がしてきた……」
「うん、奇遇だね、僕もそんな気がする」
「向かいのあのコンビニも馬車駅も、同じくらいの時に建ったような……」
「ここを建てたのは10分前だけど、ここは1ヶ月以上前からある。そういうことだよ」
窓辺の光が当たると、ロゼッティアの水色の髪はキラキラと透けて見える。職業柄ちょっと金属やオイル臭いところがあるけど、それ以外は完璧な美少女だ。
裏表のないまっすぐなその気質も、多くの人に切り捨てられた過去がある僕にはとても温かく感じられた。
「あははーっ、全然お客さんがとぎれなくて面白ー♪」
「面白いというか、さすがにこんなの予想外だよ……」
正面口を眺めると、改変により急発生したお客様を自動ドアがひっきりなしに迎えている。
お客様はその自動ドアを全く気にすることなくくぐると、家族や友人同士で固まって品物がひしめくモールを散策してゆく。こうなると労働力不足が否まれた。現状、3分1が空き店舗だ。
やがてクレープを食べ終えると、僕たちも彼らお客様に習った。僕の彼女はまた僕の二の腕にしがみ付いてきて、敏感な思春期の心と身体を暴れさせた。
衣料品コーナーで暖かいブーツを買った。そのブーツをロゼッティアにプレゼントすると、跳ね上がるほどに喜んでくれた。
春になったらかわいい服もプレゼントしてあげたい。彼女の水色の髪には、雲のような軽くて白い服が似合うと思う。
「えっへっへー、今日のアルトやさしー」
「君が作る装具への投資だよ。ずっとうちの領地にいてね」
「離れるわけないじゃんっ、こんな楽しいとこ! アルトもいるしねっ!」
「ありがとう。もっともっと君が気に入る街にするよ」
衣料品コーナーを抜けると雑貨コーナー。その雑貨コーナーを右手に曲がって抜けると、通路の左右に世界観を一際無視した施設が広がっていた。
アミューズメント音響き渡るゲームコーナーだ。さすがにビデオゲームはなかったけど、各種のクレーンゲームが目に入った。
「ポンちゃんどこだろー?」
「結構広いね。地元の悪ガキどもが集まりそう」
ポンちゃんを探してゲームコーナーに踏み入ると、僕たちの前に小柄な女性が立ちはだかった。
「よう、クソ領主! ちょっと張っていきなよ!」
「ゲッ、出た、ヤクザババァッ!」
彼女はロリババァ8人衆のうち1人、グレテールさん。単刀直入に言うと、暴力系ロリババァだ。
服装は華やかな振り袖。その振り袖から左腕を出して、さらしの巻かれた薄い胸を露出している。グレテールさんは非常にセンシティブな和装をしたロリババァだった。
そしてこのゲームコーナーは、その任侠風の姿に相応しい特徴を抱えているようだ。
いったい、誰が想像するだろうか。お菓子のクレーンゲームがひしめく眺めているだけでハッピーなエリアの先に――
何やらいやに凄みのある紳士淑女が集う賭場がある、この異様な風景を。
懐かしい畳の香りが嗅覚から吹っ飛ぶくらい、その賭場はモールの奥で堂々と経営されていた。
「はっ、ヤクザはとうの昔に止めたよ。誓って殺しもやってないさ」
いや、賭場の経営は立派な現役のヤクザ行為なのではないだろうか。
「その太い尻尾……ポンちゃん……っ!? そんなとこで何やってるのーっ!?」
<「 ギロリ…… 」
<「あっ、ご主人様とゼッちゃん! ポンちゃん飴ちゃん賭けてたもきゅー! 」
ロゼッティアが賭場にポンちゃんの姿を見つけた。ポンちゃんの掛け金はイチゴ味の飴ちゃん5つだった。
よく見ると周囲の紳士淑女も、大まじめにクレーンゲームのお菓子を賭けている。
「最近はね、クソ御上の締め付けがきつくてねぇ……。うちではこういう流儀なのさ」
「……そういえば、見るに見かねてグレテールさんの賭場に規制をかけたような、そんな面倒な労働をさせられた気がしてきたよ」
そんな事実はないけど、改変によりそういうことになっていた。
「はっ、そのことはまあいいさ。こっちはこっちなりのやり方で、いくらでも稼ぎようがあるってもんさね」
<「 もきゅぅーっ、また勝っちゃったもきゅぅー♪ 」
「調子いいじゃないか、たぬきの旦那」
<「 ポンちゃん女の子もきゅぅーっ! 」
僕は知っていた。ひっくり返してお腹を見ればそんなのこと一目瞭然だった。ポンちゃんはひっくり返されても無抵抗な野生とプライドを放棄したたぬきだった。
僕とロゼッティアは魔法式のクレーンゲームでお菓子を取って、ピンボールで遊んで、メダルゲームをやっている人をちょっと遠目に眺めてからゲームコーナーを離れた。
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