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mission 2 オーリオーンの暗闇
・番外編 傲慢皇太子ヘリートの今
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・ヘリート
新王ラフェルは兄上と繋がっている。
直接ではなく、恐らくは間接的に。
もし兄上が俺の窮状を知っていたら、こんな扱いを許すはずがない。
必ずラフェルに使いを送って、俺の扱いを改善するよう陳情するはずだ……。
ああ、兄上……俺たちの幸運の神コルヌコピアよ……。
助けてくれ……。
俺はもう、こんな生活は耐えられない……。
「何をしているのよぉん、ヘリート? そろそろお客様がお出でになる頃よ、お化粧はどうしたのよぉー?」
いや、俺は、耐えれれないのだが……。
だが……。
「止めてくれ、父上……。仮にも一国の王だった男が、なぜオカマみたいな言葉を使うようになった……」
父上は順応が異常に早かった……。
ここは兄上を幽閉していたあの雄羊宮。
俺たちは破壊と延焼を免れた本館で、兄上の身代わりをさせられている。
「それはこの前言ったじゃなぁい♪ アタシ、元々こっちの毛があったみたいなのよぉー♪」
「気でも触れたか父上!! 父上は腐っても元国王であろう!!」
我々に幸運を授ける力などない。
賓客もそんなことは承知の上でここを訪れる。
「もう全部嫌になっちゃったのよぉー。妻には裏切られるしぃー、そもそも円環との契約を秘匿したのもアタシじゃないものっ! 先代が悪いのよっ、先代がっ!」
賓客の目的は人それぞれ。
無様な女装をさせられた国王と、元王太子とドンチャン騒ぎがしたいだけのお調子者もいれば、ホンモノもいる。
憂鬱なのはホンモノの方だ……。
幸運を授けるという名目の下に、俺たちはかつての兄上と同じ扱いを受けている……。
「あ、こんなことしてる場合じゃないわ、早くお化粧なさい! 今日はアイレディン様がお越しになる日よ!」
「うっっ?!」
「素敵よね、アイレディン様……。厚い胸板に浅黒い肌……。それがなーんでアンタぞっこんなのかしら……!」
「あんな野蛮な下郎になど好かれたくないわっ!」
「アイレディン様はアナタのことを、愛してるぜぇーって言ってるわよー?」
「そんな話は知りたくなかった!!」
アイレディンというのは最近この国に流れてきた異国の戦士だ。
ヤツは魔軍の包囲網を突破して、ここレイクナス王国にやってきた。
実力は本物だ。
俺も認める最強の戦士だ。
ただし、ホモで、粗暴で、なぜか俺に惚れている……。
悪夢だ……。
「あら、もうお越しのようよ?」
「ぬぁっ!?」
「だからお化粧なさいって言ったじゃない! ほらこっちきなさい、アタシが綺麗にしてあげるわん」
「や、止めろっ!! 父上、それだけは勘弁――ヌアアアアアアアッッ?!!」
どこの世界に自分が使ったリップを息子に使う父親がいる……?!
俺は変わり果てた父親と、我が国の新たな英雄のお気に入りになってしまった現実に絶望した!
「おっ、やっぱり中庭にいたか! 会いに来きてやったぜぇ、ヘリートちゅわーんっ!!」
「ひっ?! 寄るな、下郎っ!!」
身の丈2メートル近い筋肉隆々の大男に迫られた。
顔を見るなり飛んでくる接吻を、俺は頭を押し返して拒んだ。
「すまねぇ、薄化粧のヘリートちゃんが素敵でついな、へっへっへっ」
「アタシの出番はなさそうねぇー。酒宴の支度を急がせるわ、アンタたちはそこでイチャイチャしてなさい」
「おう、悪ぃな! 元王妃様もなかなかいい女してるぜ」
「あらアイレディン様、お上手ね♪」
「王妃じゃない……父上は元国王だ……」
父上は俺を変態野郎の前に置き去りにして庭園を去った。
俺はアイレディンに肩を抱かれた。
遠慮のないその目がドレスの胸元をのぞいた。
兄上……雄羊宮には、変態しかいない……。
「薔薇が好きってよ、言ってたよな、ヘリートちゃん?」
「あ、ああ……まあな、薔薇は好きだが……。お前は嫌いだ」
「あるつてから、珍しい白薔薇の種を手に入れたんだ。貰ってくれるよな?」
「い、いらん……」
「いいから受け取れよ、俺の幸運の女神」
「止めろ触るなっどこに手を入れているっ、この下郎めっっ!!」
迫るアイレディンの鳩尾に膝蹴りを入れた。
本気の蹴りもアイレディンの腹筋には通用しなかった。
「ハハハハ、幸せだなぁ……」
「俺は不幸だっ!!」
「本隊に見捨てられ、一時は死ぬしかねぇかと思ったが……滅びねぇでいてくれて助かったぜぇ、レイクナス王国」
新王ラフェルはさぞいい気分だろう。
俺たちがパルヴァス兄上にしてきたことそっくりそのままの報いを今受けて、深く苦悩しているのだから。
「止めてくれ、アイレディン。俺にそっちの趣味はないと、再三言っているだろう……」
「でーじょうぶだ」
「大丈夫なわけがあるかっっ!!」
「兄貴のことが忘れられねぇんだろ……? 俺が忘れさせてやるよ……」
「や、止めろっ、俺は王太子だぞっ、この変態っ、この狼藉者っ、この俺に手を出してただで済むと――うっ、うわあああああっっ?!!」
「へへへ……やっぱお前、たまんねぇぜ……」
「助けて……助けて兄上ええええーっっ!!!!」
兄上を幽閉し、狼藉を許した俺が愚かだった。
アイレディンは嫌だ、アイレディンに迫られるのだけは嫌だ、アイレディンに迫られるくらいなら豚に襲われた方がまだマシだ!!
俺は兄上の元に行く……。
いつか兄上の行き先を見つけ出して、今度は兄上が望んだ可愛げのある弟になるのだ……。
「逃がさねぇぜ、俺のコルヌコピアァァ……」
兄上、助けて、変態がいるよぉ……。
変態がくるよぉ……。
新王ラフェルは兄上と繋がっている。
直接ではなく、恐らくは間接的に。
もし兄上が俺の窮状を知っていたら、こんな扱いを許すはずがない。
必ずラフェルに使いを送って、俺の扱いを改善するよう陳情するはずだ……。
ああ、兄上……俺たちの幸運の神コルヌコピアよ……。
助けてくれ……。
俺はもう、こんな生活は耐えられない……。
「何をしているのよぉん、ヘリート? そろそろお客様がお出でになる頃よ、お化粧はどうしたのよぉー?」
いや、俺は、耐えれれないのだが……。
だが……。
「止めてくれ、父上……。仮にも一国の王だった男が、なぜオカマみたいな言葉を使うようになった……」
父上は順応が異常に早かった……。
ここは兄上を幽閉していたあの雄羊宮。
俺たちは破壊と延焼を免れた本館で、兄上の身代わりをさせられている。
「それはこの前言ったじゃなぁい♪ アタシ、元々こっちの毛があったみたいなのよぉー♪」
「気でも触れたか父上!! 父上は腐っても元国王であろう!!」
我々に幸運を授ける力などない。
賓客もそんなことは承知の上でここを訪れる。
「もう全部嫌になっちゃったのよぉー。妻には裏切られるしぃー、そもそも円環との契約を秘匿したのもアタシじゃないものっ! 先代が悪いのよっ、先代がっ!」
賓客の目的は人それぞれ。
無様な女装をさせられた国王と、元王太子とドンチャン騒ぎがしたいだけのお調子者もいれば、ホンモノもいる。
憂鬱なのはホンモノの方だ……。
幸運を授けるという名目の下に、俺たちはかつての兄上と同じ扱いを受けている……。
「あ、こんなことしてる場合じゃないわ、早くお化粧なさい! 今日はアイレディン様がお越しになる日よ!」
「うっっ?!」
「素敵よね、アイレディン様……。厚い胸板に浅黒い肌……。それがなーんでアンタぞっこんなのかしら……!」
「あんな野蛮な下郎になど好かれたくないわっ!」
「アイレディン様はアナタのことを、愛してるぜぇーって言ってるわよー?」
「そんな話は知りたくなかった!!」
アイレディンというのは最近この国に流れてきた異国の戦士だ。
ヤツは魔軍の包囲網を突破して、ここレイクナス王国にやってきた。
実力は本物だ。
俺も認める最強の戦士だ。
ただし、ホモで、粗暴で、なぜか俺に惚れている……。
悪夢だ……。
「あら、もうお越しのようよ?」
「ぬぁっ!?」
「だからお化粧なさいって言ったじゃない! ほらこっちきなさい、アタシが綺麗にしてあげるわん」
「や、止めろっ!! 父上、それだけは勘弁――ヌアアアアアアアッッ?!!」
どこの世界に自分が使ったリップを息子に使う父親がいる……?!
俺は変わり果てた父親と、我が国の新たな英雄のお気に入りになってしまった現実に絶望した!
「おっ、やっぱり中庭にいたか! 会いに来きてやったぜぇ、ヘリートちゅわーんっ!!」
「ひっ?! 寄るな、下郎っ!!」
身の丈2メートル近い筋肉隆々の大男に迫られた。
顔を見るなり飛んでくる接吻を、俺は頭を押し返して拒んだ。
「すまねぇ、薄化粧のヘリートちゃんが素敵でついな、へっへっへっ」
「アタシの出番はなさそうねぇー。酒宴の支度を急がせるわ、アンタたちはそこでイチャイチャしてなさい」
「おう、悪ぃな! 元王妃様もなかなかいい女してるぜ」
「あらアイレディン様、お上手ね♪」
「王妃じゃない……父上は元国王だ……」
父上は俺を変態野郎の前に置き去りにして庭園を去った。
俺はアイレディンに肩を抱かれた。
遠慮のないその目がドレスの胸元をのぞいた。
兄上……雄羊宮には、変態しかいない……。
「薔薇が好きってよ、言ってたよな、ヘリートちゃん?」
「あ、ああ……まあな、薔薇は好きだが……。お前は嫌いだ」
「あるつてから、珍しい白薔薇の種を手に入れたんだ。貰ってくれるよな?」
「い、いらん……」
「いいから受け取れよ、俺の幸運の女神」
「止めろ触るなっどこに手を入れているっ、この下郎めっっ!!」
迫るアイレディンの鳩尾に膝蹴りを入れた。
本気の蹴りもアイレディンの腹筋には通用しなかった。
「ハハハハ、幸せだなぁ……」
「俺は不幸だっ!!」
「本隊に見捨てられ、一時は死ぬしかねぇかと思ったが……滅びねぇでいてくれて助かったぜぇ、レイクナス王国」
新王ラフェルはさぞいい気分だろう。
俺たちがパルヴァス兄上にしてきたことそっくりそのままの報いを今受けて、深く苦悩しているのだから。
「止めてくれ、アイレディン。俺にそっちの趣味はないと、再三言っているだろう……」
「でーじょうぶだ」
「大丈夫なわけがあるかっっ!!」
「兄貴のことが忘れられねぇんだろ……? 俺が忘れさせてやるよ……」
「や、止めろっ、俺は王太子だぞっ、この変態っ、この狼藉者っ、この俺に手を出してただで済むと――うっ、うわあああああっっ?!!」
「へへへ……やっぱお前、たまんねぇぜ……」
「助けて……助けて兄上ええええーっっ!!!!」
兄上を幽閉し、狼藉を許した俺が愚かだった。
アイレディンは嫌だ、アイレディンに迫られるのだけは嫌だ、アイレディンに迫られるくらいなら豚に襲われた方がまだマシだ!!
俺は兄上の元に行く……。
いつか兄上の行き先を見つけ出して、今度は兄上が望んだ可愛げのある弟になるのだ……。
「逃がさねぇぜ、俺のコルヌコピアァァ……」
兄上、助けて、変態がいるよぉ……。
変態がくるよぉ……。
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