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mission 2 オーリオーンの暗闇
・飛竜ファフナと第二次イチャラブデート - 二人で食べるアーモンドチョコレート -
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研ぎ石、刀剣用の油、ガラスのショットグラス。
ファフナさんはなかなか渋い買い物をしていた。
中でもお気に入りはプレゼントされたランプのようで、今から使うのが楽しみでしょうがないって顔で舐めるように眺めていた。
「う……っ?!」
そんなファフナさんの隣でチョコレートの箱を開けると、鼻をつまんでこっちに振り返った。
「ぬあっ、く、食ったっ!?」
「お菓子だもん、そりゃ、食べるよ。ああ、美味しい……」
かび臭くなっていない、とても状態のいいチョコレートだった。
チョコレートの甘い香りと、ねっとりとした油脂分が強い甘みと混じり合って最高だった。
チョコレートって普段は個体だけど、人の体温でちょうどよく溶けるところがいいと思う。
「うう、まずそうだ……」
「美味しいのに」
中に入っている大粒のアーモンドがまたチョコレートに合った。
「ポリポリ聞こえるが、中に何か入っているのか……?」
「エイケ社のチョコレートといえば、アーモンド入りに決まっているじゃないか」
「ほぅ……」
あれだけ気持ち悪そうな顔をしていたのに、ファフナさんは無言でこちらに手のひらを突き出した。
「なぜそれを早く言わない。周りの黒いのはいらん、外側だけ舐め取ったらここに吐き出せ」
「ブッ……?!」
ムチャな要求にチョコレートを吹き出しかけた。
「用水路で洗って食べてやると言っているのだ!」
「いいけど……チョコレートも美味しいよ?」
「匂いが受けつけぬ、無理だ」
食べ終わったので、チョコレートをもう1つ口に入れた。
「むぅぅ…………まだか?」
「まだ口に入れたばっかりだよ……っ!」
なんか、すごく食べづらくなった……。
真隣から凝視が口元に突き刺さって、舌を噛んでしまいそうだった。
「まーだーかー?」
「そんなに見ないで、なんか、食べにくいよ……っ」
「早くしろー……じーー……。おお、パルヴァス、そなたこんなところに小さなホクロがあったかー」
「うっ、もう止めてよ……っ」
もう堪え切れない。
アーモンドを吐き出して、ファフナさんの手に置いた。
「おおっ、こんな大粒のアーモンドは初めて見るぞ! ぬふふっ、さ、次を出せ」
「それ一つじゃダメ……?」
「もっとだ!」
さっき『欲張るからこうなるのだ』と言っていた口で催促された。
俺はチョコレートをまた口に入れて、今度は歯でチョコを割ってアーモンドを取り出した。
「やればできるではないかっ、もう1つ頼むっ♪」
「そんなに一気に食べられないよ……っ!」
「ふむ……まあよい。ではいただくとしよう」
「水路で洗うんじゃなかったの……?」
「もう我慢できん!」
ファフナさんは渋皮のない白いアーモンドを口に放った。
「うっ……黒いのが、少し残っているではないか……!」
「急かすからだよ……」
チョコレートの美味しさを知ってもらいたいのもあるけど。
「おお……これは、なんと香ばしく味わい深い……」
「美味しい……?」
「美味い! 次はまだか?」
「わかったよ……」
ファフナさんはチョコが不味いとは一言も言わなかった。
俺はチョコを多めに残して舐め取って、アーモンドを手渡した。
今更だけどこれって、すごいことしているような……。
「食べないの……?」
「い、いや……少し冷静になってみると、我ら、とんでもないことをしておらんだろうか……?」
顔を赤くしてそう言われると、こっちまで恥ずかしくなる。
「してるかも……」
「う……っ、ううううっ、我に加護をっ、はむっ!」
ファフナさんは思い切りよく、チョコがだいぶ残ったアーモンドを口に押し込んだ。
「うぐ……っ?!」
「あ、やっぱりチョコレート、ダメだった……?」
「う、美味い……」
「本当? よかった……」
「勘違いするな、チョコレートとかいうやつも、ちょっとなら許せると言っているだけだ! さあ、次を舐め取れっ!」
「ごめん、もうギブ、チョコレートはこれ以上一気に食べられないよ」
「な、なんだと……」
ファフナさんは迷った。
俺が譲歩しないと見ると、迷い迷いにチョコレートの箱に手を伸ばす。
「せっかくのアーモンドを、こんな臭い物で台無しにしおってっ! まったくけしからん!」
そして結局、食べた。
それはもう美味しそうな、幸せいっぱいの笑顔で、アーモンドチョコレートをもりもり食べてくれた。
「ふんっ、変な匂いだが、味は認めてやる……」
「そうだね、匂いは独特だ」
「それとこういうのは、ミルディンが好きそうだ……。あいつに差し入れてやれ」
「ファフナさんって、お母さん想いなんだね」
「ふんっ、あんなお子ちゃまのどこが母だ! 我の方が乳も背も度量もでかいというのに、我の一部を構成するというだけで母親づらしおって!」
ファフナさんはもう新しいチョコレートに手を付けた。
そんなに一気に食べたら口の中がニチャニチャになるのに。
「母親代わりになってくれる人が近くに居るのって、幸せなことだと思うけれど」
「うるさいっ、デート中に母親の話をするなっ!」
「ごめん、言われてみたらその通りだね。って、ファフナさんが始めた話じゃないか!」
「我はミルディンをお母さんなどとっ、一度たりとも思ってなどおらぬわーっ!」
一説によると、チョコレートを食べると気分が高まるという。
ファフナさんは口をニチャニチャにしたまま、楽しそうにミルディンさんの話を続けてくれた。
本当はお母さんが大好きなんだね。
そう本音を口にしたらきっとすごく怒るだろうから、生温かく見守った。
その強い肉体に生まれなかったら、ファフナさんは普通のやさしい女の子に育っていたのかもしれない。
ファフナさんはなかなか渋い買い物をしていた。
中でもお気に入りはプレゼントされたランプのようで、今から使うのが楽しみでしょうがないって顔で舐めるように眺めていた。
「う……っ?!」
そんなファフナさんの隣でチョコレートの箱を開けると、鼻をつまんでこっちに振り返った。
「ぬあっ、く、食ったっ!?」
「お菓子だもん、そりゃ、食べるよ。ああ、美味しい……」
かび臭くなっていない、とても状態のいいチョコレートだった。
チョコレートの甘い香りと、ねっとりとした油脂分が強い甘みと混じり合って最高だった。
チョコレートって普段は個体だけど、人の体温でちょうどよく溶けるところがいいと思う。
「うう、まずそうだ……」
「美味しいのに」
中に入っている大粒のアーモンドがまたチョコレートに合った。
「ポリポリ聞こえるが、中に何か入っているのか……?」
「エイケ社のチョコレートといえば、アーモンド入りに決まっているじゃないか」
「ほぅ……」
あれだけ気持ち悪そうな顔をしていたのに、ファフナさんは無言でこちらに手のひらを突き出した。
「なぜそれを早く言わない。周りの黒いのはいらん、外側だけ舐め取ったらここに吐き出せ」
「ブッ……?!」
ムチャな要求にチョコレートを吹き出しかけた。
「用水路で洗って食べてやると言っているのだ!」
「いいけど……チョコレートも美味しいよ?」
「匂いが受けつけぬ、無理だ」
食べ終わったので、チョコレートをもう1つ口に入れた。
「むぅぅ…………まだか?」
「まだ口に入れたばっかりだよ……っ!」
なんか、すごく食べづらくなった……。
真隣から凝視が口元に突き刺さって、舌を噛んでしまいそうだった。
「まーだーかー?」
「そんなに見ないで、なんか、食べにくいよ……っ」
「早くしろー……じーー……。おお、パルヴァス、そなたこんなところに小さなホクロがあったかー」
「うっ、もう止めてよ……っ」
もう堪え切れない。
アーモンドを吐き出して、ファフナさんの手に置いた。
「おおっ、こんな大粒のアーモンドは初めて見るぞ! ぬふふっ、さ、次を出せ」
「それ一つじゃダメ……?」
「もっとだ!」
さっき『欲張るからこうなるのだ』と言っていた口で催促された。
俺はチョコレートをまた口に入れて、今度は歯でチョコを割ってアーモンドを取り出した。
「やればできるではないかっ、もう1つ頼むっ♪」
「そんなに一気に食べられないよ……っ!」
「ふむ……まあよい。ではいただくとしよう」
「水路で洗うんじゃなかったの……?」
「もう我慢できん!」
ファフナさんは渋皮のない白いアーモンドを口に放った。
「うっ……黒いのが、少し残っているではないか……!」
「急かすからだよ……」
チョコレートの美味しさを知ってもらいたいのもあるけど。
「おお……これは、なんと香ばしく味わい深い……」
「美味しい……?」
「美味い! 次はまだか?」
「わかったよ……」
ファフナさんはチョコが不味いとは一言も言わなかった。
俺はチョコを多めに残して舐め取って、アーモンドを手渡した。
今更だけどこれって、すごいことしているような……。
「食べないの……?」
「い、いや……少し冷静になってみると、我ら、とんでもないことをしておらんだろうか……?」
顔を赤くしてそう言われると、こっちまで恥ずかしくなる。
「してるかも……」
「う……っ、ううううっ、我に加護をっ、はむっ!」
ファフナさんは思い切りよく、チョコがだいぶ残ったアーモンドを口に押し込んだ。
「うぐ……っ?!」
「あ、やっぱりチョコレート、ダメだった……?」
「う、美味い……」
「本当? よかった……」
「勘違いするな、チョコレートとかいうやつも、ちょっとなら許せると言っているだけだ! さあ、次を舐め取れっ!」
「ごめん、もうギブ、チョコレートはこれ以上一気に食べられないよ」
「な、なんだと……」
ファフナさんは迷った。
俺が譲歩しないと見ると、迷い迷いにチョコレートの箱に手を伸ばす。
「せっかくのアーモンドを、こんな臭い物で台無しにしおってっ! まったくけしからん!」
そして結局、食べた。
それはもう美味しそうな、幸せいっぱいの笑顔で、アーモンドチョコレートをもりもり食べてくれた。
「ふんっ、変な匂いだが、味は認めてやる……」
「そうだね、匂いは独特だ」
「それとこういうのは、ミルディンが好きそうだ……。あいつに差し入れてやれ」
「ファフナさんって、お母さん想いなんだね」
「ふんっ、あんなお子ちゃまのどこが母だ! 我の方が乳も背も度量もでかいというのに、我の一部を構成するというだけで母親づらしおって!」
ファフナさんはもう新しいチョコレートに手を付けた。
そんなに一気に食べたら口の中がニチャニチャになるのに。
「母親代わりになってくれる人が近くに居るのって、幸せなことだと思うけれど」
「うるさいっ、デート中に母親の話をするなっ!」
「ごめん、言われてみたらその通りだね。って、ファフナさんが始めた話じゃないか!」
「我はミルディンをお母さんなどとっ、一度たりとも思ってなどおらぬわーっ!」
一説によると、チョコレートを食べると気分が高まるという。
ファフナさんは口をニチャニチャにしたまま、楽しそうにミルディンさんの話を続けてくれた。
本当はお母さんが大好きなんだね。
そう本音を口にしたらきっとすごく怒るだろうから、生温かく見守った。
その強い肉体に生まれなかったら、ファフナさんは普通のやさしい女の子に育っていたのかもしれない。
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