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mission 2 オーリオーンの暗闇

・泥鱗の芋将軍 - お姉さんの誘惑! こうかはないようだ -

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「ごめんなさいっっ、寝ちゃってましたっっ!!」

 目を覚ますと蜂蜜色に輝く空があった。
 湖から虹が姿を消し、小鳥たちが黒い影となって空を駆け回っているのを見上げた。

 やってしまった。
 エッチでカチューシャさんをパワーアップさせる前に、がっつりと寝過ごしてしまっていた……。

「謝るのは自分の方っすよ。具体的には説明を差し控えさせていただくっすが、一緒に木陰でお昼寝しているだけで、なんかこう思春期のパッションが燃え上がったっす!」
「……えっ? 思春、期……?」

「なんでもないっす。なんでもないことにしてほしいっす。いやー、いい休日だったっすー♪」

 カチューシャさんが立ち上がると、俺もその隣に並んだ。
 夕空は夕空を呼ぶにはいくらか暗く、見る者に夜の訪れを予感させた。

「このまま帰って一緒にビールでも飲み交わしたい、超ゴキゲンなお空っすねー」
「そうだね。でもお酒は遠慮しておくよ」

「小さいと大変っすね」
「……カチューシャさんたちが大きすぎるんだよ」

 カチューシャさんは芋畑が気になるようだ。
 結局、俺は畑を手伝うどころか邪魔をしてしまった。

「畑仕事がこんなに楽しいとは思わなかったよ。よかったらまた手伝ってもいい?」
「ホントっすか!? それ嬉しいっすっ!」

「よかった。じゃあまた誘ってね」
「もち誘うっす!」

 叩き付けるように両肩へ手を置かれた。
 いやそれだけでは興奮が収まらなかったのか、彼女は続けて顔まで寄せてきた。

「一緒に最高の芋を作って、ザナームの皆を驚かせてやるっすよ!」
「それ、すごくいいね」

 同意すると最高の笑顔が返ってきた。
 まるで十代前半くらいの無邪気な笑顔だった。
 無防備なオーバーオール姿が刺激的だった。

「あ」

 ところがその笑顔が次第に真顔へ戻ってゆく。

「今すぐ一緒に飲みたいっすけど……。はー……先にやることをやっておかないと、いけないっすねー……」

 そう言われて不覚にも身がすくんだ。
 このまま爽やかに帰りたいけど、俺たちはまだ何も達成していない。
 何より今回は俺が受け身の立場だった。

「大丈夫っす、自分に全部任せるっす」
「お……お手柔らかにお願いします……」

 カチューシャさんに背中を押された。
 行き先は柵の側にある納屋のようだった。
 彼女は納屋の扉を開き、薄暗いその中へと相手を誘導した。

「心から申し訳ないと思っているっす。しかしこれも勝利のため、救いのないこの世界を、人類を守るためっす……」
「そうだね……。俺も外の世界のみんなを助けたい。そのためならなんでも受け入れるよ……」

 光は通気口から射し込むわずかな夕日だけ。
 その夕日もいつまで届くかもわからない。
 そんな暗い納屋の奥でカチューシャさんは干し草の上に座った。
 
 そしてなんのつもりなのかよくわからない、とても不思議なポーズを取った。

「うっ……し、死ぬほど恥ずかしいっすぅ……」

 たとえるならばそれは、ひっくり返ったカエルのようなポーズだった。
 そんなおかしな姿勢で、彼女は羞恥を堪えるように横顔を向けている。

「さ、こっち、くるっすよ……」

 彼女はカエルみたいなポーズを維持したまま、両手をこちらに差し出した。

「う、うん……? くるって、どういうこと?」

 何がなんだかわからない。
 あそこに飛び込んで、俺は何をすればいいのだろうか。

「なんでそんなに足を開いてるの? これって、何?」
「な……なぬ…………?」

「ねぇ、そんな変な姿勢で何をしてるの?」

 彼女の返答は沈黙だった。
 両足を広げたカエルのポーズで、唖然と俺のことを見つめている。

「け、計算外っす……。これの意味、知らないっすか……?」
「ごめん」

 エッチについてもっと事前に勉強しておくべきだった。

「い、いやっ、パルヴァスは悪くないっす! むしろっ、そのままの純粋な君でいてほしいっす!」
「そういうわけにはいかないよ。教えて、俺はどうすればいいの?」

「は、はわわわ……?!」

 カチューシャさんがさらに激しく動揺した。

「ここまで純真無垢とは想定外っす……っ! 自分の決めたプランと違うっすっ! ヤバいっす、どうすればいいのかわかんなくなってきたっすぅぅ……っ!」

 その気持ちはよくわかる。
 俺だってマニュアルから外れると何もできない。

「わかった、じゃあここは俺に任せて」

 逆に言えばマニュアル通りのことなら、今この瞬間だってできる。

「なっ、なんとぉーっっ?!」
「大丈夫だよ、全部教わった通りにするだけだから」

 マニュアルって素晴らしい。
 これさえあればどんなことも、機械的に処理できる。

「ちょっ、ちょ待つっす?! こないで欲しいっすっっ!! ちょっ、あっ、ひょわぁーっ?!」

 カチューシャさんの隣に寝そべった。
 彼女は納屋の天井を見上げるばかりで、こちらに振り返ろうとはしない。

「これからカチューシャさんに、ディバインシールドするね」
「ひうっ?!」

「大丈夫。俺はただ機械的に、コギ仙人に教わった通りに行動するだけだから」
「なっ、何さらすっすかぁっ、あのクソワンコォっっ?!」

 コギ仙人はいい人なのに……。
 なんでみんなコギ仙人を悪く言うのだろう……。

 俺は尊敬するコギ仙人がしてくれたように、カチューシャさんの腰からお尻を撫でて、それからこちらに振り返らせようとした。

「ま、待つっすっ、無理っすっ、そんなの絶対無理っす、心臓壊れるっすぅっ!」

 ファフナさんより強情だった。
 でもマニュアルから外れることは許されない。絶対に。
 俺は力ずくで彼女を振り返らせた。
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