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マレニア在籍二年目、一学期
・2年生代表グレイボーンの入学式 - 2年生代表グレイボーン -
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俺は目をつぶり、今少しの時間をいただいてから、新入生たちに刮目した。
「マレニア魔術院2年のグレイボーン・オルヴィンだ。新入生のみんな、入学おめでとう」
無難に始めたつもりだが台本と違ったようだ。
セラ女史の舌打ちが聞こえてきた。
「マレニアの飯はもう食べたか? いや、まだだろうな」
まずは飯ネタから始めよう。
飯は万国共通、誰とでも無難に語れるコミュニケーションツールだ。
『え、なんで食事の話……?』なんて反応もあったが、まあとにかく聞いてくれ、後輩たちよ。
「オススメはチキンのバター炒めだ。ハンバーグランチも肉汁がジュワッとあふれ出て悪くない。うちの妹も絶賛の飯だ」
新入生たちはどうも困惑している。
期待していたスピーチではなかったようだ。
『オルヴィン殿は、何をやっているのでござるか……?』
『お兄ちゃん、台本の紙、持ってないよ……?』
『あ……なるほどでござる……。あのバカ……ッ、でござるな……っ』
とはいえ、アドリブで始めてしまった以上はもう止まらない。
「朝晩の学食はメニューを選べないが、昼は注文が出来る。逆に言うと昼飯に出遅れると、食いたい飯が食えなくなるということだ」
これは非常に重要なことだ。
マレニアの学生はマレニアに入学した時点で、やる気マックスだ。
これ以上彼らのやる気を俺が盛り上げる必要はない。
そこで俺は、学校生活におけるお得な情報を、彼らにお伝えすることに決めた!!
「寮は基本的に3人での相部屋となる。そして、ここから先が重要だ……」
新入生ってやつは素直だな。
重要なお得情報に、彼らの注目が再び俺に集まるのを肌で感じた。
ま、新入生からすれば、寮生活が最も不安なところだろうしな。
「聞け、後輩たちよっ!! 男子が女子寮で暮らすのは難しいが、努力すればっ、実は不可能ではないっ!!」
そう叫ぶと会場がどよめいた。
セラ女史の仕業か、小さなエネルギー魔法のようなものが俺の頭に投げつけられたが、女史に鍛えられた俺には大した痛みでもなかった。
「その気がある生徒は挑戦してみるといいだろう。現に俺は1度、女子寮に滞在する権利を与えられていたこともあった!!」
またエネルギー魔法という名の石を投げつけられたが、俺はもう満足している。
言いたいことを言い切った気分だ。
「そして次は風呂だ! ここマレニアでは、風呂に週3回も入れる! もちろん入浴料なんてものはないっ、ここではタダだっ!」
『グレイ様って……お風呂が好きなのかしら……?』
『ハンバーグランチか、そんなに美味しいなら食べてみたいな……』
『女子寮で暮らしてたってマジかよ……っ!? やるじゃんよアイツ……ッ!?』
初めは今一つの反応だったが、新入生たちは次第に口数を増やしていった。
さてこんなものだろう。
締めて終わりにしよう。
「新入生の諸君! タダ飯! タダ風呂! タダ部屋を満喫するといい! そして俺たち上級生と共に、青春を謳歌しよう!! 俺は諸君の入学を歓迎する!! 入学おめでとう!! ……以上だ」
フッ……やり切ったな。
なんだかんだ新入生たちは盛り上がり、拍手喝采を送ってくれた。
高尚なことをああだこうだと述べるよりも、よりお得で便利な情報となったことだろう。
舞台裏に戻った俺の前に、セラ女子が腕を組んで待ちかまえていなければ、より強くそう思えたはずだ。
「ロウドックの息子。私の台本が、よっぽど気に入らなかったようですね?」
「いや違うな。そもそも俺はアレに目を通していなかった」
「ヒャヒィッッ?!」
舞台裏に学院長の悲鳴が漏れた。
いったいどんな顔で俺は睨らまれたのだろうな。
「よくも抜け抜けと言えたものです……。せっかく私が用意した台本に、目さえ通さなかったと……?」
「そう怒るな。てか、うっかり寮に台本を置いてきてしまってな。そうなってはもう、ああする他になかったんだ」
バカみたいな事実を伝えると、セラ女子が重くて深いため息を吐いた。
「私はもう、貴方に怒るのに疲れ果てました……。2年生代表の言葉というより、ただの校内案内でしたが、ウケも悪くなかったことです、まあいいでしょう……」
「悪い」
「席に戻って残りの式典を見届けなさい」
もう帰りたいと言いたいところだったが、また女史の逆鱗に触れたら隣で震えてる学院長先生が可哀想か。
俺は要求に従って参列席へと戻った。
・
しかしその後、小さな予定外があった。
「ピィ……」
「お兄ちゃん、リボンちゃんがお腹空いたって」
うちの白くてふわふわなわがまま娘が、お腹が空いたからもう帰りたいと、ピィピィ鳴き出した。
「しょうがないな、学食に連れて行ってやれ。食った分は出世払いで返せよ、リボン」
式典の邪魔になっていたので、リチェルに銀貨を何枚か握らせて帰らせた。
講壇では今、地区のお偉いさんがスピーチをしている。
偏見かもしれないが、長いだけでなんの意味もない話だ。
新入生たちも長いだけの話にうんざりとしていた。
「マレニア魔術院2年のグレイボーン・オルヴィンだ。新入生のみんな、入学おめでとう」
無難に始めたつもりだが台本と違ったようだ。
セラ女史の舌打ちが聞こえてきた。
「マレニアの飯はもう食べたか? いや、まだだろうな」
まずは飯ネタから始めよう。
飯は万国共通、誰とでも無難に語れるコミュニケーションツールだ。
『え、なんで食事の話……?』なんて反応もあったが、まあとにかく聞いてくれ、後輩たちよ。
「オススメはチキンのバター炒めだ。ハンバーグランチも肉汁がジュワッとあふれ出て悪くない。うちの妹も絶賛の飯だ」
新入生たちはどうも困惑している。
期待していたスピーチではなかったようだ。
『オルヴィン殿は、何をやっているのでござるか……?』
『お兄ちゃん、台本の紙、持ってないよ……?』
『あ……なるほどでござる……。あのバカ……ッ、でござるな……っ』
とはいえ、アドリブで始めてしまった以上はもう止まらない。
「朝晩の学食はメニューを選べないが、昼は注文が出来る。逆に言うと昼飯に出遅れると、食いたい飯が食えなくなるということだ」
これは非常に重要なことだ。
マレニアの学生はマレニアに入学した時点で、やる気マックスだ。
これ以上彼らのやる気を俺が盛り上げる必要はない。
そこで俺は、学校生活におけるお得な情報を、彼らにお伝えすることに決めた!!
「寮は基本的に3人での相部屋となる。そして、ここから先が重要だ……」
新入生ってやつは素直だな。
重要なお得情報に、彼らの注目が再び俺に集まるのを肌で感じた。
ま、新入生からすれば、寮生活が最も不安なところだろうしな。
「聞け、後輩たちよっ!! 男子が女子寮で暮らすのは難しいが、努力すればっ、実は不可能ではないっ!!」
そう叫ぶと会場がどよめいた。
セラ女史の仕業か、小さなエネルギー魔法のようなものが俺の頭に投げつけられたが、女史に鍛えられた俺には大した痛みでもなかった。
「その気がある生徒は挑戦してみるといいだろう。現に俺は1度、女子寮に滞在する権利を与えられていたこともあった!!」
またエネルギー魔法という名の石を投げつけられたが、俺はもう満足している。
言いたいことを言い切った気分だ。
「そして次は風呂だ! ここマレニアでは、風呂に週3回も入れる! もちろん入浴料なんてものはないっ、ここではタダだっ!」
『グレイ様って……お風呂が好きなのかしら……?』
『ハンバーグランチか、そんなに美味しいなら食べてみたいな……』
『女子寮で暮らしてたってマジかよ……っ!? やるじゃんよアイツ……ッ!?』
初めは今一つの反応だったが、新入生たちは次第に口数を増やしていった。
さてこんなものだろう。
締めて終わりにしよう。
「新入生の諸君! タダ飯! タダ風呂! タダ部屋を満喫するといい! そして俺たち上級生と共に、青春を謳歌しよう!! 俺は諸君の入学を歓迎する!! 入学おめでとう!! ……以上だ」
フッ……やり切ったな。
なんだかんだ新入生たちは盛り上がり、拍手喝采を送ってくれた。
高尚なことをああだこうだと述べるよりも、よりお得で便利な情報となったことだろう。
舞台裏に戻った俺の前に、セラ女子が腕を組んで待ちかまえていなければ、より強くそう思えたはずだ。
「ロウドックの息子。私の台本が、よっぽど気に入らなかったようですね?」
「いや違うな。そもそも俺はアレに目を通していなかった」
「ヒャヒィッッ?!」
舞台裏に学院長の悲鳴が漏れた。
いったいどんな顔で俺は睨らまれたのだろうな。
「よくも抜け抜けと言えたものです……。せっかく私が用意した台本に、目さえ通さなかったと……?」
「そう怒るな。てか、うっかり寮に台本を置いてきてしまってな。そうなってはもう、ああする他になかったんだ」
バカみたいな事実を伝えると、セラ女子が重くて深いため息を吐いた。
「私はもう、貴方に怒るのに疲れ果てました……。2年生代表の言葉というより、ただの校内案内でしたが、ウケも悪くなかったことです、まあいいでしょう……」
「悪い」
「席に戻って残りの式典を見届けなさい」
もう帰りたいと言いたいところだったが、また女史の逆鱗に触れたら隣で震えてる学院長先生が可哀想か。
俺は要求に従って参列席へと戻った。
・
しかしその後、小さな予定外があった。
「ピィ……」
「お兄ちゃん、リボンちゃんがお腹空いたって」
うちの白くてふわふわなわがまま娘が、お腹が空いたからもう帰りたいと、ピィピィ鳴き出した。
「しょうがないな、学食に連れて行ってやれ。食った分は出世払いで返せよ、リボン」
式典の邪魔になっていたので、リチェルに銀貨を何枚か握らせて帰らせた。
講壇では今、地区のお偉いさんがスピーチをしている。
偏見かもしれないが、長いだけでなんの意味もない話だ。
新入生たちも長いだけの話にうんざりとしていた。
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