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マレニア在籍二年目、一学期
・2年生代表グレイボーンの入学式 - 大丈夫かしら、この兄妹 -
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春、短い春期休暇が終わり、新しい学期がやってきた。
今日から俺とリチェルはマレニア魔術院の2年生だ。
ハンス先生と母さんに見守られながら領地を出て、駅までやってくると、俺たち兄妹は出発寸前の魔導トラムに飛び乗った。
目指すは車輪の都ダイダロス。
トラムが巡航速度に達すると、ジュリオ、トマス、カミル先輩、コーデリア、レーティア、ガーラントさん、先生方の顔がまぶたの裏に浮かんだ。
「その子が噂の妹ね。ふーん……合コンで空気も読まず自慢しまくるだけあって、すごくかわいいじゃないっ!」
なんの偶然か、その列車の運転手はあのデボアさんだった。
「奇遇だな、デボアさん。いかにもこの子こそが、俺の妹にして世界一の美少女のリチェルだ」
「お、お兄ちゃん……っ、恥ずかしいから、そういうの、止めてよぉ……」
去年の姿を思い返してみると、リチェルは少し成長した。
背が伸びたのは当然として、以前にも増して人目を気にするようになった。
「そのウザい自慢さえなければ彼女が出来るのに、ほんともったいないわねぇ……」
「ふぇ、彼女……?」
「グレイボーンくんにねー、若い男の子を合コンに呼んでもらってるのー。でもねぇ、この子……目付きと性格がねぇ……」
「何も問題ない。合コンで妹の自慢をしてはいけないという法律はない」
家族を大切にしようとしない彼女など、こちらから願い下げだ。
「ま、若い子連れてきてくれるなら、別になんだっていいんだけどー……」
「ああ、タダ飯が食えるならいくらでも学友を売ろう」
皆とまでは言わないが、この都の男子はトラムが好きだ。
そしてその女運転手と制服には、俺にはどうもよくわからんが、熱狂的な人気がある。
どこの世界に行っても男ってやつは、制服が大好きな生き物らしい。
「お兄ちゃん……」
「どうした? おしっこか?」
「お兄ちゃんは……彼女、ほしい、の……?」
リチェルにしては低い声で、そうボソリと問いかけられた。
「ん? いや、別に?」
「でも、合コンって……彼女、探すとこ、だよね……?」
「一般的にはそうだ。だが俺にとっては、タダ飯を食わせてもらうだけの場所だ」
「そうなの……?」
「そうだぞ。かわいいお前さえいれば、お兄ちゃんは彼女なんていらないんだ」
「……へへへ♪ そうなんだ……っ」
単なる事実を伝えると、ご機嫌の笑顔になった。
「じゃあじゃあ……っ、彼女、見つからなかったら……。リチェルが彼女になってあげるねっっ!!」
「む……いや、それは……」
「嫌なの……?」
いや笑顔になったと思えば、リチェルは途端に声を低くして沈んでしまった。
まずい……。
兄として保護者として、新学期早々に落ち込ませるわけにはいかないぞ……。
「いいやそんなことはない」
「え、本当っ!?」
「ああ! お前以上にかわいい女の子なんて、この世にいないんだからなっ!」
「お兄ちゃんもっ、一番、カッコイイよっ! 世界一だよ!」
大げさもいいところだが、言われて悪い気はしない。
俺はリチェルの肩を抱いて、顔を寄せて表情を確かめた。
リチェルの表情は喜びにゆるゆるで、見るかに幸せそうだった。
「大丈夫かしら、この兄妹……」
明るく話上手なデボアさんのおかげで、都まで退屈することはなかった。
今日から俺とリチェルはマレニア魔術院の2年生だ。
ハンス先生と母さんに見守られながら領地を出て、駅までやってくると、俺たち兄妹は出発寸前の魔導トラムに飛び乗った。
目指すは車輪の都ダイダロス。
トラムが巡航速度に達すると、ジュリオ、トマス、カミル先輩、コーデリア、レーティア、ガーラントさん、先生方の顔がまぶたの裏に浮かんだ。
「その子が噂の妹ね。ふーん……合コンで空気も読まず自慢しまくるだけあって、すごくかわいいじゃないっ!」
なんの偶然か、その列車の運転手はあのデボアさんだった。
「奇遇だな、デボアさん。いかにもこの子こそが、俺の妹にして世界一の美少女のリチェルだ」
「お、お兄ちゃん……っ、恥ずかしいから、そういうの、止めてよぉ……」
去年の姿を思い返してみると、リチェルは少し成長した。
背が伸びたのは当然として、以前にも増して人目を気にするようになった。
「そのウザい自慢さえなければ彼女が出来るのに、ほんともったいないわねぇ……」
「ふぇ、彼女……?」
「グレイボーンくんにねー、若い男の子を合コンに呼んでもらってるのー。でもねぇ、この子……目付きと性格がねぇ……」
「何も問題ない。合コンで妹の自慢をしてはいけないという法律はない」
家族を大切にしようとしない彼女など、こちらから願い下げだ。
「ま、若い子連れてきてくれるなら、別になんだっていいんだけどー……」
「ああ、タダ飯が食えるならいくらでも学友を売ろう」
皆とまでは言わないが、この都の男子はトラムが好きだ。
そしてその女運転手と制服には、俺にはどうもよくわからんが、熱狂的な人気がある。
どこの世界に行っても男ってやつは、制服が大好きな生き物らしい。
「お兄ちゃん……」
「どうした? おしっこか?」
「お兄ちゃんは……彼女、ほしい、の……?」
リチェルにしては低い声で、そうボソリと問いかけられた。
「ん? いや、別に?」
「でも、合コンって……彼女、探すとこ、だよね……?」
「一般的にはそうだ。だが俺にとっては、タダ飯を食わせてもらうだけの場所だ」
「そうなの……?」
「そうだぞ。かわいいお前さえいれば、お兄ちゃんは彼女なんていらないんだ」
「……へへへ♪ そうなんだ……っ」
単なる事実を伝えると、ご機嫌の笑顔になった。
「じゃあじゃあ……っ、彼女、見つからなかったら……。リチェルが彼女になってあげるねっっ!!」
「む……いや、それは……」
「嫌なの……?」
いや笑顔になったと思えば、リチェルは途端に声を低くして沈んでしまった。
まずい……。
兄として保護者として、新学期早々に落ち込ませるわけにはいかないぞ……。
「いいやそんなことはない」
「え、本当っ!?」
「ああ! お前以上にかわいい女の子なんて、この世にいないんだからなっ!」
「お兄ちゃんもっ、一番、カッコイイよっ! 世界一だよ!」
大げさもいいところだが、言われて悪い気はしない。
俺はリチェルの肩を抱いて、顔を寄せて表情を確かめた。
リチェルの表情は喜びにゆるゆるで、見るかに幸せそうだった。
「大丈夫かしら、この兄妹……」
明るく話上手なデボアさんのおかげで、都まで退屈することはなかった。
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