視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん

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再びイザヤへ

・再びイザヤへ - 女史は焼き討ちがお好き -

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「市民公園を焼くとは正気かね、君らはっっ!!」

 議事堂に入るなり、議員先生方はそりゃ怒った。
 いくら戦術のためだからといって、公園を焼くやつがいるとは俺だって思わなかった。

「自分ではない。火を放ったのは、マレニアのセラ様だ。文句があるなら彼女に直接どうぞ、先生方」
「セ……ッッ、セラ、教官が、き、来ているのかね……?」

「呼びましょうか?」
「い、いや結構だっ! 戦いのためなら仕方ない……っ!」

 ああ、そうか……。
 ここの連中の大半も、セラ女史の教え子なのか……。

 領地を得た二代目以降となると、マレニアに通うことになるわけだからな……。
 セラ女史が突入隊に同行したのは、これのためだったか。

「それよりも先生方、腕は鈍っておりませんね? お力を貸していただけませんか?」
「い、嫌だと言ったら、女史が我々をわからせるのだろう……!?」

「それは先生方の返答次第かと」
「た……戦おう……」

「ありがとうございます、先生方! では、避難誘導を始めましょうか。近隣の者を全て、この議事堂に集めるのです」

 そりゃ大変な大仕事だ。
 周囲は霧だらけ、モンスターだらけ。
 支配階級がやる仕事ではない。
 なんかゾンビがあふれるパニック映画みたいだ。

「わ、私はもう5年も剣を握っていないんだ! そんないきなり、戦えと言われても――ヒッッ!?」

 いたのか、女史。
 女史がカツカツと足音を鳴らして、不平を言った議員先生の前に立った。

「ここで豚に変えてもよろしいのですよ? 豚として死ぬか、誉れある戦士として死ぬか――」
「う……嘘ですっ、本当は訓練を欠かさず……っ、お、お許し下さい、セラ教官っっ!!」

 ま、そういうことになった。
 突入部隊と動員された先生方、それと警備隊は、民を守るために議事堂を出て行った。


 ・


「カミル、貴方は計画通り議事堂正面を守りなさい」
「了解しました、セラ教官」

「グレイボーン、貴方は私とこちらへ」
「さっき出て行った連中の方が幸せだったかもな……」

 俺たちも配置に付いた。
 殺傷力増し増しのカミル先輩が出入り口の安全を確保し、俺とセラ女史は見晴らし台に上がった。

 霧が深く、イザヤの学舎はここからでは見えない。

「ファイアーボールッッ!!」
「ちょっっ、ああああーーっっ、アンタなぁぁっっ?!!」

 議事堂南部にあるあの建物は……議員宿舎?
 セラ女史にファイアーボールをぶち込まれた宿舎は赤々と燃え上がり、辺りの霧を晴らしていった。

「何か?」
「何かじゃねーよ……っ。常識のない俺もっ、アンタの傍若無人っぷりにはドン引きだよ……っっ」

「……あの辺りも焼いておきましょう」
「あ、こらっ、止めっ、あーーっっ?!!」

「あれはクノル家の別荘です。ドラゴンの火に焼かれてしまったようですね」

 もはや何も言うまい……。
 俺は最悪のスポッター・セラ女史が刻んだ非常によく輝く刻印を、残弾が尽きるまで重弩でぶち抜き続けた。

 グォォォッッ!!!

 とか

 ギャオオオオーッッ!!

 とか

 ピギャラァァーッッ!!

 とか、怪獣大決戦な叫び声があたりからとどろいたが、何せ見えん。
 しかしまあまあの支援にはなっただろう。

「おおっ、天から救いの矢がっ!!」
「う、嘘だろ……っ、屋根よりでかいドラゴン、一発で……っ?!」
「燃えている……我々の議員宿舎が、燃えている……」
「助かりました、議員様! まさか直々に私たちを救いに来て下さるなんて……」
「カミル様っ、素敵ーっ!!」

 下は下でなんか大騒ぎだ。
 逃げ遅れた市民が議事堂に集まって来て、やっと助かったと口々に喜んでいた。

「妙ですね」
「何がだ?」

「イザヤの生徒の姿がありません」
「なんだと……?」

 見晴らし台から身を乗り出しても俺の目には見えない。
 イザヤのみんなを守りたくてここまで出張ったというのに、それはないだろう……。

「弾も切れたことです、激励にまいりましょう」
「ああ、先生方が泣いて喜びそうだ」

 俺たちは見張り台を降りた。
 最悪の報告を聞くことになるかもしれないと思うと、気が重かった。
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