視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん

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マレニアの二学期

・マレニアの二学期 - 家出娘レーティア -

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「というわけだ。兄のために花畑を魔法で広げようとしたリチェルは、力が暴走して枯らしてしまった。恐るべき妹だ……」
「オレはにーちゃんの方が恐ろしいけど……」

「さて、籠もいっぱいになったことだ。そろそろ終わりにしよう」
「あ、うん……」

 そう言うと、その子は急に静かになってしまった。
 なかなか楽しいお喋りだった。
 俺もまだまだ語り足りない。うちのかわいい妹のことを。

「解散が寂しいか? ならまた会おう、いつでもマレニアに遊びに来てくれ。リチェルを紹介する」
「ところでさ、オレの名前、聞かないの?」

「ああ、それか。聞いたらまたロリコン扱いされそうだ」
「特別に教えてあげる! オレの名前は、レーティア! しょうがないしー、今度遊びに行ってあげる」

「おお! そうか、楽しみだ!」
「リチェルには興味ないけど、にーちゃんからかうのは楽しいし! そうだーっ、また手伝ってあげるよーっ! にーちゃんに怪物撃たせるの超楽しいしー!」

「それは遠慮しよう。助かってはいるんだが、不都合もあってな……」
「ふつごー? ふーん……?」

 採取地を離れると、レーティアに駅まで送ってもらった。
 レーティアはあの琥珀がよっぽど気に入ったのか、よくそれを空にかざして眺めていた。

 よっぽど気に入っているようだ。
 ……いや、ムカデ入りは趣味が悪いと思うが。

「ではな」
「んんー……しょうがないし、マレニアまで送ってあげる」

「は? いや、お前には家があるだろ?」
「オレ、ここの子じゃないもん。実はー、家出中でーす! へへへー……!」

 そう言われて、背中がゾクッと震えた。
 もしこれが現代日本だったら、連れ去り案件だ……。

 さらにこれがアメリカなら、アンバー警報ってやつが発令されて、被害者と誘拐犯の追跡が始まるやつだ!

 銃殺もあり得る!
 俺の知ってる洋ドラではそうだった!

「大丈夫か、お前……?」
「そっちこそ1人で帰れるー? ほんとに大丈夫、ボンちゃん?」

「トラムを乗り換えてマレニアの駅で降りれば、目の前が学校だ。迷いようがない」
「ふーん……。次の休みも、ギルドの仕事するのー?」

「ああ、そうだ」
「じゃあ、また来週ね!」

「いやだから、危ないからこれ以上は……」
「トラム来たよ。じゃ、また来週!」

 寂しいのかな……。
 しかしこちらには、こちらの予定があるんだが……。

 俺は黄のトラムに乗り込み、レーティアの見送りを受けて町を出た。

 さて、どうしたものか……。
 歳が近いので、リチェルと友達になってもらいたいだけだったんだが……。

 まさか冒険の方に、興味を持たれるとはな……。

 まあ、いいか。
 来週の俺がどうにかするだろ。
 知らん。
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