視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん

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マレニアの二学期

・マレニアの二学期 - 初クエストはお約束の薬草採集 -

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 黄のトラムのアンテロープ駅で降りた俺は、馬車が集まる駅前の広場に立ち寄った。
 するとちょうどそこに、いかにも暇そうにしていた小学校中学年くらいの男の子がいたので、彼に道を尋ねてみた。

『少年よ、64号採集地を知っていたら、行き先を教えてくれないか?』と。

「知ってっけどー、大丈夫か、にーちゃん……?」
「ん、何がだ?」

「オレわかんだけどさー、にーちゃん、かなーり目ー悪いだろ? オレ、女だぞ?」
「え……マジか」

 その子に顔を近付けると、確かに髪を長く伸ばしている。
 しゃがんで下の方まで確かめると、なんと短いスカートまではいていた。

「痛っ?!」
「変態だろ、にーちゃん……」

 蹴られた上に見下されてしまった。
 いや、物理的にだと思いたい。

「すまん。俺の目は10cmくらいまで近付かないと、正確にものを見分けられないんだ」
「へー……? 変な冒険者……」

「それで話の続きだが、きっちり謝礼をするから、64号採集地まで俺を連れて行ってくれないか?」

 何せ意地を張って迷子になった後だしな……。
 迷子怖い……。

「えーー、どうしよっかなぁ……。そんなこと言ってー、オレに変なことするつもりじゃないだろなー?」

「……そうか。わかった、そこまで言うなら行き先だけ教えてくれ」

 銅貨を5枚ほど取り出してその子に差し出した。
 彼女の手がかっさらうように動き、寸前でその金を引っ込めた。
 こっちはまだ代価を受け取っていないからな。

「ん、勘はいいじゃん」
「ああ、今日まで勘だけ生きて来た。先に行き先を教えてくれ」

「じゃ銀貨3枚!」
「いくらなんでもそれは高いぞ……」

「くれたら連れてってあげるし、ロリコンのお兄さんのー、好きなイタズラしてもいいよー?」

 逆に問いたくなった。
 少女よ、お前こそ、大丈夫か……?

「俺はロリコンじゃない。銀貨1枚で連れて行ってくれ」
「ロリコンはみーーんなそう言うんだよねー。ん……!」

 鼻先に手を突き出されたので銀貨を渡した。

「フゲッッ?!!」

 すると突然逃げようとしたように感じたので、俺は無意識に足払いをかけていた。
 自分でやっておいてなんだが、子供に足払いをかける青年ってどうなんだろうな……。

「すまん、つい足が出た」
「や……やるじゃん、にーちゃん……」

「本当にすまん」
「いいよー、金だけ貰って逃げようとしたの、ホントだしー」

 ちょっと変なその子に採取地に案内してもらった。
 その子はとてもお喋りで、聞いてもいないのに食べ物の話や、日曜学校の話をしてくれた。

 話しているとリチェルが恋しくなった。
 仕事なんて投げ捨てて、今すぐリチェルとどこかに遊びに行きたい……。

「着いたよ、ロリコンにーちゃん。ほら、そこに看板あるでしょ」

 看板に顔面を近付けると、ヘタクソな字で64号採取地と記されていた。

「この先か……。助かった」
「へへ、気前いいじゃん!」

 追加報酬に銅貨3枚を出すと、また引っ込められると思ったのか、かなり乱暴に引ったくられた。

「ではな」
「ちょ……ちょ待ちなよ!」

「なんだ?」
「あのさー……にーちゃん、マジで大丈夫ー……?」

「マジで大丈夫だ。こう見えて俺はマレニアの学生でな、入学試験と一学期の成績は、なんと主席だったんだ」
「うは、嘘くさーっ!」

「とにかく大丈夫だから、家に帰るといい」
「んーー……付いてってあげよっかー?」

「危ないから止めろ。お父さんとお母さんを心配させるぞ」
「あはは、そんなのいないしーっ」

 そう言われてつい同情しそうになったが、そういった感情を見せるのはこの子に失礼だろう。

「とにかくここから先は危険だ。付いてくるな」
「わかった」

「……俺は弱視の重弩使いグレイボーンと呼ばれている。また機会があったら道を案内してくれ」
「灰色の、骨? うわー、変な名前ーっ!」

「俺もそう思う」

 その子との話を打ち切って採取地に入った。
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