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マレニアの二学期
・マレニアの二学期 - あばよ、バカ野郎! 3/3 -
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どこからか遠い歌声が聞こえる……。
氷がグラスの中で踊るような、冷たく気持ちいい音も。
どうやら俺は眠っていたらしい。
そのことに気付くと俺は目を薄く開き、そして驚きに飛び起きることになった。
「あ……?」
どこだ、ここ……?
俺は妙な店のカウンター席に突っ伏して眠っていた。
正面には魔法の力で光る奇妙な看板があり、そこには『walrus』とあった。
隣には同業らしきレザーアーマーの男が腰掛けていて、火酒らしきものを氷を鳴らして飲んでいた。
そこは何もかもがおかしな世界だった。
最もわけがわからなかったのは、誰もいないのにどこからともなく、ムーディな演奏と歌声が聞こえて来るところだ。
どこだここ?
つーかそもそも、俺はいつどうやって、この店にやって来たんだ……?
「あら、起きたのね……」
「ウゲッ、な、なんだコイツ……!? うわっ、なんかおっそろしいな、おめー……っ!?」
コイツ、ここの店主なのか……?
男のくせに女みたいな化粧をした変なおっさんがカウンターの向かいに現れた……。
「オホホホホッッ、しつけのなってないクソガキねぇー!! それで20代後半とか嘘でしょぉーっ!?」
生まれて初めて見る人種だった……。
野太い声は男のものだったが、身振りはクネクネと女らしかった……。
「な、なんで俺の歳知ってんだよっ、ババァッ!! いや、ババァじゃなくて、おっさん、か……?」
「オホホホ。さあ、どっちかしらねぇーん? 迷うようなら、かわいいお姉さんって呼んでちょうだい♪」
「なんなんだ……? なんなんだ、おめー……?」
「やーだぁーっっ!! ガチで戸惑っててーっ、キャーワーイーイーッッ♪」
「そりゃ戸惑うに決まってんだろっ、おめーなんなんだよーっっ?!!」
名付けるなら正体不明。
その変な店主は、何もかもがおかしかった……。
しかもそのおかしな店主は高位の魔法使いなのか、手のひらをカウンター席に差し出すと、どこからともなく青く光る液体を生み出した。
「んふっ、お近づきにどーぞっ♪」
「コイツは酒、か……? けど酒にしては、おかしな色してんぞ、おい……?」
おまけにかなり酒気が強い。
隣の客が飲んでいる酒はさらに強そうだった。
「ああそれ、青1号よ」
「あ? …………つまり、酒に絵の具を入れたってことか?」
「オホホホッ、面白いこと言う坊やねーっ! 大丈夫♪ ちょっぴり発ガン性があるだけでー、目に見える害はないからぁ……っ♪」
何を言ってんのか、全然わからねぇ……。
「俺に毒入りの酒を飲ませて、てめーどうするつもりだよ?」
「やーだぁっ! 毒なんて入れてないわよぉー!」
「いや明らかに毒入ってる色だろがっっ!!」
言い返すと店主は大爆笑した。
魔法で同じ物を隣に生み出して、俺の前でそれをあおって見せた。
「どう、納得した?」
「ああ……飲めるなら最初からそう言えよ……」
「てかーっ、毒なんて入れなくてもぉーっ!! アアタもう死んじゃってるものーーっっ、毒なんて気にすることないわよーっ?!! オホホホホッッ!!」
何、言ってんだ、コイツ……?
死んでんなら、酒なんて飲めるわけねーだろ……。
生きていることを確かめるのもかねて、俺は青い酒をグイッとやってみせた。
「はっ、まあまあ美味いぜ、おばおっさん」
「あらまあ、お上手ね♪ でもね、アアタ……次、それ言ったら……そのグラスを粉々にしてご馳走してあげるわ……。んふっ♪」
「はっ、やれるならやってみろよ!」
「あーらぁぁ……?」
おばおっさんはワイングラスを2つ取ると、片方を凄まじい握力で粉々に握りつぶした。
そして砂粒のようになったガラスを、もう1つのワイングラスにザラザラと流し入れる……。
コイツ、やっぱイカレてやがる……。
「言ったわね……?」
「言ってわりーかよっ!」
「あーら、そーう……可哀想に……。死にたてほやほやなのに、もう1度死にたいみたいねぇ……?」
「おうっ、やんのかよっ!?」
席を立ってそのやべーおばおっさんを睨み返した。
何者かわかんねーが、コイツ頭イッてやがる!
これ以上バカにされてたまるか!
「止めろ」
一触即発の状況だったが、隣で飲んでいた男が俺たちを止めた。
俺の小物臭いだみ声と違って、低くて渋い良い声だった。
「あーんっ、ロックちゃんのいけずぅー! ちょっとくらーいっ、若いのぶち転がしてもいいじゃないのぉーっ!!」
「……悪ぃ、面倒かけたな、おっさん」
ロックという男は物静かだが、いかにも話の分かりそうな人だった。
俺の見間違えでなければ、やはり同業の冒険者に見える。
「息子が、世話になったようだな……」
「は、息子?」
「一応、初めましてになるな。俺はロウドック・オルヴィン。お前のルームメイトのグレイボーンの、父にあたる」
これが英雄ロウドック・オルヴィン……?
これがアイツの父親……?
なんの冗談だ……?
「おいおい、そりゃ……どういうことだよ? 伝説の冒険者、ロウドック・オルヴィンは死――」
え…………?
「思い出してしまったようだな……」
その時、俺の頭に、背中を刺され、左わき腹から剣の切っ先を生やした自分の姿が目に浮かんだ。
それが幻覚ではなく、現実であった出来事であることを、俺は思い出してしまった……。
俺は死んだ……。
ならば、ここは……?
ここは…………ああ、なんだ、地獄か……。
このおばおっさんは、地獄の悪魔様だったか……。
「ふぅ……っ、素敵……♪ アタシねぇーっ、自分の死を受け入れた人間の、その顔が……だーい好き♪」
「死んだのか、俺は……」
「背中からねーっ、いきなりぶっ刺されてちゃってーっ、もーーっっ、大爆笑っ!!」
「んだとこのクソ野郎っっ?!」
いかにも悪魔様らしい腐った性根しやがって!
おっさんだか、おばさんだか、悪魔だかしんねーがっ、やっぱこのクソ野郎はぶっ殺す!!
「だーーってぇぇっ、これから真犯人をやりこめようってところでーっ、いきなり死んじゃったんだものぉーっ!!」
そうだ、真犯人!
そして俺を殺した犯人!
「くっ……クソ……ッ! 誰だっ、誰が俺を殺しやがったんだよっ?!」
今はそっちの方が重要だ!
このまま殺されっぱなしなんて許せねぇ!
祟ってやる!!
「ま、その話はゆっくりしましょ。あっ、そうだわぁーっ! 死んだ記念にぃー、カラオケでも一緒にどーぉー!?」
男だか女だかわからん巨体の悪魔は、ウキウキと身を揺すった。
いや、ドスンドスンの方が合ってるかもしんねー……。
「なんで人が死んだのにっ、んな明るいんだよ、おめーはよぉっ!?」
「諦めろ、これはそういう神……いや、邪神だ……」
神……?
これが……?
とてもそうは見えねぇ……。
「あら言うわね、ロックちゃん♪ あのねーっ、そこの人ねぇー、いつまで経っても転生してくんないのよぉー!」
「テンセー……? テンセーってなんだよ?」
「王様にしてあげるっ! って言ってもーっ、『すまぬ、息子たちが気になる……』の一点張り! もー、やんなっちゃうわぁーっ!」
死んだら、死んだ後の世界が見れるのか……?
なら俺も知りたい。
俺が残した証拠を誰が掴むのかを。
「未練はあろうが、死んでしまったものは仕方がない」
「ま、そうだな……。別に俺、死を悲しんでくれるやつもあんまいねーし、そんなに未練はねぇかな……」
グレンデルの叔父貴の姿が目に浮かんだ。
状況からしてまさか、俺は叔父貴に売られたのだろうか……?
「うむ、それはそれで幸せだ。俺は、遺した子たちのことを考えると、今でも胸が痛くてな……」
こうして話してみると、冒険者ロウドックは聞いた印象とまるで違った。
そこにいるのは英雄的冒険者ではなく、一人の父親であり、もっと言えばただの飲兵衛だった。
「はっ、あの兄貴と妹なら大丈夫だろ。特にグレイボーンはな、ヤツのすげぇところは、目の障害を屁にも思ってねぇところだよ。ありゃとんでもねぇバカ野郎だぜ……」
「フッ、俺が鍛え上げた自慢の子だ」
そりゃ羨ましい限りだ。
立派な父親に才能を信じてもらえたなんて、なんて幸運だろう。
「……その息子が、神様の知り合いと聞いたときは、さすがに驚いたものだが」
「オホホホッ、エクセレントな死に方だったからーっ、ついサービスしちゃったのーっ♪」
何を言ってんのかわかんねーが、付き合ってゆけばおいおいわかるか……。
「ジーン、ここから俺と一緒に、グレイボーンの動向を見守ろう。我が息子ならば必ず、お前の無念を晴らしてくれるはずだ」
「おう、そう願わずにはいられねぇわ……」
おばおっさんはさておき、冒険者ロウドックには興味がある。
俺は元のカウンター席に戻り、隣のロウドックの顔をのぞき見た。
父親というわりにいやに若かった。
「神様、彼にビールを」
「んもーっ、ロックちゃんが言うならしょうがないわねぇー……。特別よ、クソガキッ!!」
「はっ、大人げねー神もいたもんだな!」
神は最悪だったがビールは最高だった。
はい死にましたと納得出来るもんじゃねーが、ロウドックとはいい酒が飲めそうじゃねぇか。
「一緒に、俺とカラオケでもどうだ?」
「さっきから知らねぇ単語が行き交ってわけわかんねぇが……俺に出来んなら付き合うぜ、ロウドック」
「ふ……神様、頼む」
「うふふー、病み付きになるわよぉーっ♪」
死語の世界は歌って飲めてつまみが食える、まるで戦士たちの楽園のような世界だった。
死んじまったけど、あんま深刻に考える必要ねーかもな、ははは!!
グレイボーン! んじゃお先に失礼すんぜ!
もしその気がありゃ、俺の仇、取っておいてくれよな!
こっちはてめーの親父とクソうぜー神様と、てめぇを見守ってんぜ。
あばよ、バカ野郎!
氷がグラスの中で踊るような、冷たく気持ちいい音も。
どうやら俺は眠っていたらしい。
そのことに気付くと俺は目を薄く開き、そして驚きに飛び起きることになった。
「あ……?」
どこだ、ここ……?
俺は妙な店のカウンター席に突っ伏して眠っていた。
正面には魔法の力で光る奇妙な看板があり、そこには『walrus』とあった。
隣には同業らしきレザーアーマーの男が腰掛けていて、火酒らしきものを氷を鳴らして飲んでいた。
そこは何もかもがおかしな世界だった。
最もわけがわからなかったのは、誰もいないのにどこからともなく、ムーディな演奏と歌声が聞こえて来るところだ。
どこだここ?
つーかそもそも、俺はいつどうやって、この店にやって来たんだ……?
「あら、起きたのね……」
「ウゲッ、な、なんだコイツ……!? うわっ、なんかおっそろしいな、おめー……っ!?」
コイツ、ここの店主なのか……?
男のくせに女みたいな化粧をした変なおっさんがカウンターの向かいに現れた……。
「オホホホホッッ、しつけのなってないクソガキねぇー!! それで20代後半とか嘘でしょぉーっ!?」
生まれて初めて見る人種だった……。
野太い声は男のものだったが、身振りはクネクネと女らしかった……。
「な、なんで俺の歳知ってんだよっ、ババァッ!! いや、ババァじゃなくて、おっさん、か……?」
「オホホホ。さあ、どっちかしらねぇーん? 迷うようなら、かわいいお姉さんって呼んでちょうだい♪」
「なんなんだ……? なんなんだ、おめー……?」
「やーだぁーっっ!! ガチで戸惑っててーっ、キャーワーイーイーッッ♪」
「そりゃ戸惑うに決まってんだろっ、おめーなんなんだよーっっ?!!」
名付けるなら正体不明。
その変な店主は、何もかもがおかしかった……。
しかもそのおかしな店主は高位の魔法使いなのか、手のひらをカウンター席に差し出すと、どこからともなく青く光る液体を生み出した。
「んふっ、お近づきにどーぞっ♪」
「コイツは酒、か……? けど酒にしては、おかしな色してんぞ、おい……?」
おまけにかなり酒気が強い。
隣の客が飲んでいる酒はさらに強そうだった。
「ああそれ、青1号よ」
「あ? …………つまり、酒に絵の具を入れたってことか?」
「オホホホッ、面白いこと言う坊やねーっ! 大丈夫♪ ちょっぴり発ガン性があるだけでー、目に見える害はないからぁ……っ♪」
何を言ってんのか、全然わからねぇ……。
「俺に毒入りの酒を飲ませて、てめーどうするつもりだよ?」
「やーだぁっ! 毒なんて入れてないわよぉー!」
「いや明らかに毒入ってる色だろがっっ!!」
言い返すと店主は大爆笑した。
魔法で同じ物を隣に生み出して、俺の前でそれをあおって見せた。
「どう、納得した?」
「ああ……飲めるなら最初からそう言えよ……」
「てかーっ、毒なんて入れなくてもぉーっ!! アアタもう死んじゃってるものーーっっ、毒なんて気にすることないわよーっ?!! オホホホホッッ!!」
何、言ってんだ、コイツ……?
死んでんなら、酒なんて飲めるわけねーだろ……。
生きていることを確かめるのもかねて、俺は青い酒をグイッとやってみせた。
「はっ、まあまあ美味いぜ、おばおっさん」
「あらまあ、お上手ね♪ でもね、アアタ……次、それ言ったら……そのグラスを粉々にしてご馳走してあげるわ……。んふっ♪」
「はっ、やれるならやってみろよ!」
「あーらぁぁ……?」
おばおっさんはワイングラスを2つ取ると、片方を凄まじい握力で粉々に握りつぶした。
そして砂粒のようになったガラスを、もう1つのワイングラスにザラザラと流し入れる……。
コイツ、やっぱイカレてやがる……。
「言ったわね……?」
「言ってわりーかよっ!」
「あーら、そーう……可哀想に……。死にたてほやほやなのに、もう1度死にたいみたいねぇ……?」
「おうっ、やんのかよっ!?」
席を立ってそのやべーおばおっさんを睨み返した。
何者かわかんねーが、コイツ頭イッてやがる!
これ以上バカにされてたまるか!
「止めろ」
一触即発の状況だったが、隣で飲んでいた男が俺たちを止めた。
俺の小物臭いだみ声と違って、低くて渋い良い声だった。
「あーんっ、ロックちゃんのいけずぅー! ちょっとくらーいっ、若いのぶち転がしてもいいじゃないのぉーっ!!」
「……悪ぃ、面倒かけたな、おっさん」
ロックという男は物静かだが、いかにも話の分かりそうな人だった。
俺の見間違えでなければ、やはり同業の冒険者に見える。
「息子が、世話になったようだな……」
「は、息子?」
「一応、初めましてになるな。俺はロウドック・オルヴィン。お前のルームメイトのグレイボーンの、父にあたる」
これが英雄ロウドック・オルヴィン……?
これがアイツの父親……?
なんの冗談だ……?
「おいおい、そりゃ……どういうことだよ? 伝説の冒険者、ロウドック・オルヴィンは死――」
え…………?
「思い出してしまったようだな……」
その時、俺の頭に、背中を刺され、左わき腹から剣の切っ先を生やした自分の姿が目に浮かんだ。
それが幻覚ではなく、現実であった出来事であることを、俺は思い出してしまった……。
俺は死んだ……。
ならば、ここは……?
ここは…………ああ、なんだ、地獄か……。
このおばおっさんは、地獄の悪魔様だったか……。
「ふぅ……っ、素敵……♪ アタシねぇーっ、自分の死を受け入れた人間の、その顔が……だーい好き♪」
「死んだのか、俺は……」
「背中からねーっ、いきなりぶっ刺されてちゃってーっ、もーーっっ、大爆笑っ!!」
「んだとこのクソ野郎っっ?!」
いかにも悪魔様らしい腐った性根しやがって!
おっさんだか、おばさんだか、悪魔だかしんねーがっ、やっぱこのクソ野郎はぶっ殺す!!
「だーーってぇぇっ、これから真犯人をやりこめようってところでーっ、いきなり死んじゃったんだものぉーっ!!」
そうだ、真犯人!
そして俺を殺した犯人!
「くっ……クソ……ッ! 誰だっ、誰が俺を殺しやがったんだよっ?!」
今はそっちの方が重要だ!
このまま殺されっぱなしなんて許せねぇ!
祟ってやる!!
「ま、その話はゆっくりしましょ。あっ、そうだわぁーっ! 死んだ記念にぃー、カラオケでも一緒にどーぉー!?」
男だか女だかわからん巨体の悪魔は、ウキウキと身を揺すった。
いや、ドスンドスンの方が合ってるかもしんねー……。
「なんで人が死んだのにっ、んな明るいんだよ、おめーはよぉっ!?」
「諦めろ、これはそういう神……いや、邪神だ……」
神……?
これが……?
とてもそうは見えねぇ……。
「あら言うわね、ロックちゃん♪ あのねーっ、そこの人ねぇー、いつまで経っても転生してくんないのよぉー!」
「テンセー……? テンセーってなんだよ?」
「王様にしてあげるっ! って言ってもーっ、『すまぬ、息子たちが気になる……』の一点張り! もー、やんなっちゃうわぁーっ!」
死んだら、死んだ後の世界が見れるのか……?
なら俺も知りたい。
俺が残した証拠を誰が掴むのかを。
「未練はあろうが、死んでしまったものは仕方がない」
「ま、そうだな……。別に俺、死を悲しんでくれるやつもあんまいねーし、そんなに未練はねぇかな……」
グレンデルの叔父貴の姿が目に浮かんだ。
状況からしてまさか、俺は叔父貴に売られたのだろうか……?
「うむ、それはそれで幸せだ。俺は、遺した子たちのことを考えると、今でも胸が痛くてな……」
こうして話してみると、冒険者ロウドックは聞いた印象とまるで違った。
そこにいるのは英雄的冒険者ではなく、一人の父親であり、もっと言えばただの飲兵衛だった。
「はっ、あの兄貴と妹なら大丈夫だろ。特にグレイボーンはな、ヤツのすげぇところは、目の障害を屁にも思ってねぇところだよ。ありゃとんでもねぇバカ野郎だぜ……」
「フッ、俺が鍛え上げた自慢の子だ」
そりゃ羨ましい限りだ。
立派な父親に才能を信じてもらえたなんて、なんて幸運だろう。
「……その息子が、神様の知り合いと聞いたときは、さすがに驚いたものだが」
「オホホホッ、エクセレントな死に方だったからーっ、ついサービスしちゃったのーっ♪」
何を言ってんのかわかんねーが、付き合ってゆけばおいおいわかるか……。
「ジーン、ここから俺と一緒に、グレイボーンの動向を見守ろう。我が息子ならば必ず、お前の無念を晴らしてくれるはずだ」
「おう、そう願わずにはいられねぇわ……」
おばおっさんはさておき、冒険者ロウドックには興味がある。
俺は元のカウンター席に戻り、隣のロウドックの顔をのぞき見た。
父親というわりにいやに若かった。
「神様、彼にビールを」
「んもーっ、ロックちゃんが言うならしょうがないわねぇー……。特別よ、クソガキッ!!」
「はっ、大人げねー神もいたもんだな!」
神は最悪だったがビールは最高だった。
はい死にましたと納得出来るもんじゃねーが、ロウドックとはいい酒が飲めそうじゃねぇか。
「一緒に、俺とカラオケでもどうだ?」
「さっきから知らねぇ単語が行き交ってわけわかんねぇが……俺に出来んなら付き合うぜ、ロウドック」
「ふ……神様、頼む」
「うふふー、病み付きになるわよぉーっ♪」
死語の世界は歌って飲めてつまみが食える、まるで戦士たちの楽園のような世界だった。
死んじまったけど、あんま深刻に考える必要ねーかもな、ははは!!
グレイボーン! んじゃお先に失礼すんぜ!
もしその気がありゃ、俺の仇、取っておいてくれよな!
こっちはてめーの親父とクソうぜー神様と、てめぇを見守ってんぜ。
あばよ、バカ野郎!
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