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イザヤ学術院編
・イザヤ学術院の静かなる日々 - 妹との夏期休暇 -
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イザヤ学術院は大学のように授業を選択することが出来る。
数学や歴史などの基礎教養にあたる必修科目とは別に、ここではいくつかの専門的な知恵を授けてくれる。
外語学、考古学、科学、工学、天文学、それに貴族向けの帝王学の6つだ。
この中から最低1つを選ぶことになる。
領主にはならないので帝王学はいらない。
冷徹な学問と聞くし、なんか人格が歪みそうだ。
科学はもうお腹いっぱいだ。
現代と異なる理論もいくつかあり、間違ったそれを答案用紙に記入するのもストレスが溜まる。
天文学は楽しそうだ。
この世界では果たして、星が動いているのか地面が動いているのか。
とても気になるところだったが、結局は残りの外語、考古学、工学を選ぶことになった。
「ねぇ、お兄ちゃん。お星様の勉強、どうして、しなかったの?」
「将来のことを考えたら、やっぱりいらないと思ったんだ」
あれから約4ヶ月が経った。
夏期休暇で故郷に帰省していた俺は、今は学校の話を聞きたがるリチェルを膝に乗せて、自分のベッドでゆっくりとしていた。
「えーー! お兄ちゃんがお星様を勉強したらっ、リチェルがいっぱいお話聞けるのに!」
「ならトマスに今度教わっておくよ」
トーマスのことは、少し略してトマスと呼んでいる。
ちなみに天文学を選ばなかった本当の理由は、天文学の先生が『神様が星を動かしている』と、真顔で言っていたからだ。
否応なく、あの振り袖に青ヒゲのカマ様が脳裏に浮かんだ……。
世界の外側であの声のでかい両性類が、ベッドにでも寝そべりながら乙女チックに星を動かしているかと思うと、なんか超萎えた……。
声と腹のデカい陽気なお水系のお姐さんが神であることを、俺だけが知っている……!
「トマスくん、会ってみたい! ジュリオお兄ちゃんにも!」
「一応、トマスも俺と同い年なんだからお兄ちゃんを付けてやれ」
「でも、トマスくん、ちっちゃいんでしょ……?」
「ああ、小柄な美青年だ。本人の前では言うなよ?」
「会ってみたい! ちっちゃい美青年!」
「わかった。冬休みに遊びに来ないか誘ってみよう」
「やったーっ! 本当に、ちっちゃいか、確かめる!」
「それは止めてやれ……」
しかし、リチェルは少し重くなったかな。
背も気持ち伸びてますます愛らしくなった。
もう9歳になるのにお兄ちゃんの膝に乗って甘えてくれるなんて、俺はなんて恵まれているんだ……。
ああ、帰るのがつらい……。
このまま抱えて、都に連れて帰りたい……。
「工学は重弩のメンテナンスや改良に使える。語学があれば外国や外国人との活動で困らない」
「わぁぁ……考えてるんだねー、お兄ちゃん」
「まあな。そして考古学を選んだのは――」
「ジュリオお兄ちゃんと、一緒にいるため!」
「違う」
「えーーっ、違うのーっ!?」
話をしただけなのに、リチェルはジュリオのことをすっかり気に入っていた。
まあ思い返してみれば、リチェルにはジュリオを褒めるような話ばかりをしている。
「考古学は迷宮文字の解読にも使える。また価値のある遺物の鑑定も、その場で出来るようになる」
「ほへーー……」
「父さんのように頼れる冒険者になれるってことだ」
「お兄ちゃん、すごーい!」
リチェルにイザヤ学術院でのことをたくさん語ってやった。
この子はいい聞き手だ。
興奮に身を伸び縮みさせながら、なんでも明るく受け止めてくれた。
「あのねっ、リチェルもねっ、司祭様とお勉強、がんばってるよ!」
「おお。あれからいくつ魔法を覚えたんだ?」
「100個!」
「ははは、100個か。そりゃすごい」
誇張に聞こえるけど、この子のことだからきっとマジなんだろなー……。
「もう教えることがない! って、言われちゃった!」
「やっぱりリチェルは天才だな」
「ほら、見て! 勉強したの!」
リチェルはあの日覚えたイエローの照明魔法を頭上に打ち上げた。
それから次々と色の異なる照明を作り出し、兄の部屋を怪しいお店のように彩った。
特にピンクがお好きなようで、なかなかにムーディな照明になった。
数学や歴史などの基礎教養にあたる必修科目とは別に、ここではいくつかの専門的な知恵を授けてくれる。
外語学、考古学、科学、工学、天文学、それに貴族向けの帝王学の6つだ。
この中から最低1つを選ぶことになる。
領主にはならないので帝王学はいらない。
冷徹な学問と聞くし、なんか人格が歪みそうだ。
科学はもうお腹いっぱいだ。
現代と異なる理論もいくつかあり、間違ったそれを答案用紙に記入するのもストレスが溜まる。
天文学は楽しそうだ。
この世界では果たして、星が動いているのか地面が動いているのか。
とても気になるところだったが、結局は残りの外語、考古学、工学を選ぶことになった。
「ねぇ、お兄ちゃん。お星様の勉強、どうして、しなかったの?」
「将来のことを考えたら、やっぱりいらないと思ったんだ」
あれから約4ヶ月が経った。
夏期休暇で故郷に帰省していた俺は、今は学校の話を聞きたがるリチェルを膝に乗せて、自分のベッドでゆっくりとしていた。
「えーー! お兄ちゃんがお星様を勉強したらっ、リチェルがいっぱいお話聞けるのに!」
「ならトマスに今度教わっておくよ」
トーマスのことは、少し略してトマスと呼んでいる。
ちなみに天文学を選ばなかった本当の理由は、天文学の先生が『神様が星を動かしている』と、真顔で言っていたからだ。
否応なく、あの振り袖に青ヒゲのカマ様が脳裏に浮かんだ……。
世界の外側であの声のでかい両性類が、ベッドにでも寝そべりながら乙女チックに星を動かしているかと思うと、なんか超萎えた……。
声と腹のデカい陽気なお水系のお姐さんが神であることを、俺だけが知っている……!
「トマスくん、会ってみたい! ジュリオお兄ちゃんにも!」
「一応、トマスも俺と同い年なんだからお兄ちゃんを付けてやれ」
「でも、トマスくん、ちっちゃいんでしょ……?」
「ああ、小柄な美青年だ。本人の前では言うなよ?」
「会ってみたい! ちっちゃい美青年!」
「わかった。冬休みに遊びに来ないか誘ってみよう」
「やったーっ! 本当に、ちっちゃいか、確かめる!」
「それは止めてやれ……」
しかし、リチェルは少し重くなったかな。
背も気持ち伸びてますます愛らしくなった。
もう9歳になるのにお兄ちゃんの膝に乗って甘えてくれるなんて、俺はなんて恵まれているんだ……。
ああ、帰るのがつらい……。
このまま抱えて、都に連れて帰りたい……。
「工学は重弩のメンテナンスや改良に使える。語学があれば外国や外国人との活動で困らない」
「わぁぁ……考えてるんだねー、お兄ちゃん」
「まあな。そして考古学を選んだのは――」
「ジュリオお兄ちゃんと、一緒にいるため!」
「違う」
「えーーっ、違うのーっ!?」
話をしただけなのに、リチェルはジュリオのことをすっかり気に入っていた。
まあ思い返してみれば、リチェルにはジュリオを褒めるような話ばかりをしている。
「考古学は迷宮文字の解読にも使える。また価値のある遺物の鑑定も、その場で出来るようになる」
「ほへーー……」
「父さんのように頼れる冒険者になれるってことだ」
「お兄ちゃん、すごーい!」
リチェルにイザヤ学術院でのことをたくさん語ってやった。
この子はいい聞き手だ。
興奮に身を伸び縮みさせながら、なんでも明るく受け止めてくれた。
「あのねっ、リチェルもねっ、司祭様とお勉強、がんばってるよ!」
「おお。あれからいくつ魔法を覚えたんだ?」
「100個!」
「ははは、100個か。そりゃすごい」
誇張に聞こえるけど、この子のことだからきっとマジなんだろなー……。
「もう教えることがない! って、言われちゃった!」
「やっぱりリチェルは天才だな」
「ほら、見て! 勉強したの!」
リチェルはあの日覚えたイエローの照明魔法を頭上に打ち上げた。
それから次々と色の異なる照明を作り出し、兄の部屋を怪しいお店のように彩った。
特にピンクがお好きなようで、なかなかにムーディな照明になった。
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