視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん

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勘違いド近眼の入学試験

・車輪の都ダイダロスへ - 東京駅の悪夢 -

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 車輪の都ダイダロスに到着すると、俺の前に巨大な困難が待ち受けていた。
 この感覚には覚えがある。

 そう、これは……。
 初めて東京駅を訪れたあの日の感覚によく似ている……。

 やっとのことで路線表までたどり着けたものの、そこに網羅された図形と文字列には絶望があった。

「わからん……路線が、多すぎる……」

 だてに車輪の都と呼ばれていない。
 都ダイダロスは蜘蛛の巣のようにトラム路線が敷設された、地上の迷宮だった……。

「路線が膨大にあるのはわかった……。では具体的に、どこをどう進めば、俺は学校にたどり着けるんだ……」

 俺は路線図の前で、次第に右へ右へと傾いていった。
 いくら傾いても複雑過ぎる路線図からは、正しい目的地が見えてこなかった。

「先ほどからずっとうかがっていたのですが、もしや、道に迷われましたか?」

 悩んでいると、ふいに誠実そうな若い声に呼ばれた。
 振り返るとそこには、背の高い男性が立っている。

「ああ、恥ずかしいがその通りだ……。全くわからん……」
「……試験会場に行ければいいのですか?」

「ああ、ああそうだ! 試験会場に行きたい!」
「それなら青のトラムの南方面に乗って、3つ目の駅です。駅を出たら真っ直ぐに進めば、そこが貴方の目的地ですよ」

「おお、そうか……本当に助かったよ……。ここでのたれ死ぬかもしれないと、そう思いかけていたところだった……」
「ここは私もたまに迷います。あ、青のトラムまでご案内しましょうか?」

「いや十分だよ。ありがとう」
「そうですか。実は私も夕方から試験で、それで見るに見かねてついお節介をしてしまいました。それでは、合格をお祈りしております」

「そっちも試験だったか。お互い合格出来るといいな」
「はいっ、がんばりましょう!」

 親切な彼が去ると、俺は言われた青のトラムを探した。
 すぐに見つかって、飛び乗るように乗車した。
 日本の鉄道では許されない行為だが、こちらでは当たり前のことのようだ。

 上京早々に親切な人に会えたからか、とても晴れやかな気分だ。
 彼に言われた通りに3つ目の駅に下りて、駅を出ると真っ直ぐに進んだ。


 ・


「お、とんでもねぇ重弩だな」

 試験会場らしき立派な正門を抜け、多分校内らしき場所を進んでゆくと、低い声が俺に向けて発された。

「よく言われるよ。ここが試験会場か?」
「そうだぜ。少し遅刻だが……俺が話を通してやる、中に入りな」

「ありがとう。ダイダロスの人たちはみんな親切だ」
「ははは、そりゃぁないわ。……おいっ、面白そうな飛び入り参加だっ、審査してやんな!」

 ここがイザヤ学術院のようだ。
 もう少しお高く止まっている連中ばかりかと思ったが、なかなか肌に合いそうな雰囲気だ。

「お、重弩使いか。今どき珍しいな……」

 言われた方角にさらに進んでゆくと、若い成人男性の声がした。

「そうなのか?」

 この声の主が面接官だろうか。
 しかし筆記試験をするには、席らしい席がない。
 そもそもここは屋外だった。

「魔法の下位互換。そう言う者も少なくないな」
「それは聞き捨てならない」

「重弩使いはみんなそう言うよ」
「よしわかった。ならばそうではないと、ここで証明してやる」

「いや、それは別の試験でやってくれ。ここは筋力テストだ、さ、これを持って」
「筋力……? まあ、いいが」

 奇妙なハンマーを握らされた。
 先端が厚い布に包まれたもので、なかなかの重量がある。

「ソイツをそこに振り下ろしてくれ。全力でだ。測定は2回。しくじっても3回目はないぞ」
「わかった。……いや、わかったが……ん、んん?」

 イザヤでは体力テストも行われるのか?
 なるほど、確かに体力は重要だ。
 それが判定基準であるというなら、俺も全力で応えよう。

 俺はハンマーを強く握り、指定された物体に力いっぱい振り下ろした!
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