美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん

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・カテドラルの武器庫 悪役令息に接収される

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 総大理石製の恐るべき主聖堂カテドラル。何度訪れても背筋に怖気が走る。
 その大理石の精練さ、冷たさ、純白の神々しさ。そして人間の技術を超越した巨大地下構造物の妖しさ、とてつもなさに、息を呑むほどに圧巻させられる。

 カテドラルとは呼ばれているが、螺旋を描きながら果てしない地底へ下ってゆくこの場所は、地獄の入り口と呼んだ方が正しい気さえしてくる。
 魔界に堕とされてもなお、カテドラルは魔法学院の一部としてここに存在していた。

「あきれたでしゅ……。こんな物まで運び込んでるなんて、ヴァレリーは泥棒の才能があるでごじゃりますよ?」

「ふふっ、こんなことする人初めて! 全て想定通り。これってそういうことよね!」

 こんなこともあろうかと、事前に庭園の用具庫からリアカーを2台強奪しておいた。
 カテドラルの壁抜けポイントから、武器庫の入り口までは約30メートルほどの距離がある。

 装備を1つ1つ武器庫から運び込んでいたら、後には戦う体力も残らない。

「怪しいでしゅ……。もしかして、ヴァレリーがこの事件の真犯人でしゅかっ!?」

「メメ、それはいくらなんでも……ん、んん……。そうね、可能性としては、あり得るのかしら?」

「やっぱりでごじゃりましゅ! やいやい狼藉者めぃっ、おとなしくばくにつけぇいっ、でごじゃるっ!」

「クックックッ、バレてしまっては――って、剣抜くなよ、ミシェーラッッ?!」

 抜きかけた剣をミシェーラ皇女は『チンッ』と鞘に戻して、おかしそうにこちらへ笑いかけた。
 メメさんはまだ殺る気だ。『シュッシュッ』と鋭くシャドーボクシングをして殺戮の準備に余念がない。

「どういうことか、説明して下さいますか?」

「ジェードも怪しいでしゅ……○○同士で何企んでるでしゅかっ!?」

 話の腰が折れるので、メメさんにはエスプレッソよりも渋い顔を返しておいた。
 ここまで協力させておいて、話さないわけにもいかない。

「俺、少し先の未来がわかるんだ」

 少し表現は変わるが嘘にはならない。
 この物語が完結を迎える3学期末までなら、俺は預言者の振りをすることが出来る。

「まあっ、やっぱり!」

「姫様、典型的な詐欺師の常套句でごじゃりましゅ……」

 メメさんが目の前で寄って来て、ジト目でこちら見上げた。

「お、今メメさんのオーラの色が『ちらっ』見えたわ」

「にゃ、にゃんでしゅとぉっ!?」

 興味があるようだ。好奇心にメメさんの目が大きく広がった。

「メメさんのオーラは、エメラルドグリーンだ。自然体で綺麗な心の持ち主だな」

「…………むふっ♪ やっぱ信じてやるでしゅ! メメ、黄緑色が好きでしゅ!」

「わ、私はっ!? 私は何色ですか、ヴァー様っ!?」

 女の子って、こういうの好きだな……。
 俺は駆け寄って寄って来たミシェーラを無表情で見た。

「……濃い赤。ピジョン・ブラッド。血とか好きそう……」

「ええっ、どうしてわかったんですかーっ!?」

 こういう占いって、当たり過ぎるよりちょっとズレていた方がいいのかもな。
 当たり過ぎるとかえって面白みがないというか、そのまんまだと何も盛り上がらない。

「運ぼうぜ」

 お喋りを終わりにして、俺はリアカーを武器庫まで運んだ。

 後ろを振り返ると、楽しそうに占い遊びの続きをするメメさんとミシェーラ皇女が、もう1台のリアカーを引いている。
 上があんな状況なのに大した度胸だ。ジェードより、こいつらの方が主人公に向いているんじゃないか?

「職員権限により封印を解除する」

 慰霊碑から見て少し奥にある壁に触れて、セキュリティガバガバの合言葉を唱えた。
 すると磨かれていないゴツゴツとした大理石の壁に、両開きの大扉が現れた。

「良く考えてみたら……。なんでヴァレリーが先生の権限持ってるでしゅかっ!?」

「拾ったんだ、ここの鍵を」

 ローブの袖をめくって、二の腕に装備した銀色の装身具を見せた。

「学内にある魔法の扉は、これに反応して開かれる」

「要するに、盗んだでしゅか……?」

「だから、拾ったんだ」

「それを盗んだと言うでしゅよ」

 これはいずれ物語の進行で主人公が手にするイベントアイテムだ。
 あるダンジョンに落ちているので、先に俺が回収した。ただそれだけだ。

「んなことより、どんどん運び込もう! まず裏世界に武器防具を運び込み、そこをハブ駅にする」

「そして人気のない場所に、再び壁抜けを使って一気に運び込む! そういうことですねっ、ヴァー様!」

「やっぱり泥棒みたいでしゅ……」

「違いますよ、メメ。これは泥棒ではありません……接収ですっっ!!」

 略奪と紙一重の言葉だが、まあそういうことか。
 俺たちは武器庫から使える物を運び出した。

 学生に武装させることを想定してか、防具はアーマーなんかよりもシールドが多い。
 魔術師用の片手ロッドも、ダース単位が木箱に詰め込まれていた。

 このシールドがあれば、1年生の生存率が跳ね上がる。
 てかこのロッド、俺が使っているボロの樫より性能が良いな……。

 1本拝借することに決めつつ、見た目はかわいいがフィジカル能力マッシブルな姫と従者を使って、どんどん俺の裏世界に運び込んだ。

「ん、どうしたんだ? もう終わりか?」

「耳を澄ますでしゅ、ヴァレリー!」

 裏世界内部への輸送は俺の仕事だ。
 手頃なところに荷物を降ろしてカテドラルに戻ると、メメさんとミシェーラ皇女が高い天井を見上げていた。

 耳を澄ませと言われても、何も――いや、これは、魔物の、叫び声……?
 まさか校舎への侵攻が始まったのか? おかしい、想定より遥かに早いタイミングだ……。

「もうふざけてられないでしゅ。ヴァレリー、ご指示を!」

「予言者ヴァー様、どうか私たちをお導き下さい」

 下手をすれば知り合いが死んでしまって悲しい思いをする。
 いや生徒1人でも死なせれば、この先も拭えない重い空気が魔法学院を包み込むだろう。

「武器庫の在庫は?」

「2割ほど残っているかしら」

「重たい鎧とか、運びにくいのは最後にするつもりだったでしゅ」

「状況次第じゃ鎧なんて着てる暇ねーな、よし十分だ、裏世界から本校舎に装備を運ぼう」

「合点承知のスケベのヴァレリーでごじゃりますっ!!」

 30秒で先言撤回かよ。
 俺は2人の背中を押して裏世界に送り、輸送先・第一候補を偵察した。
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