美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん

文字の大きさ
上 下
44 / 57

・悪役令息 モブ子と良い雰囲気になる

しおりを挟む
 では始めるとしよう。
 一度扉を閉めると、頭上に特大のライトボールを生成し、ありったけの魔力をそこに流し込んだ。

「俺はこれをトロルの正面中空に投げる。目の弱いヤツはこれに怯み、しばらく動けなくなるだろう」

「へっ、まおーだけどー、ホーリーホーリーしてやんよ」

「まあそういうことだ。トロルが体勢を整える前に、【ホーリークロー】でHPを削り切れ。作戦は以上だ」

「ギュルッ! キュゥンッ♪」

「いつでもいいってよー。あと、だいすき、だってよー」

「そうか、俺もだ。後でブラッシングしてやろう」

「えー、ワレはー?」

「もふっとしたとこ、生やしてから言え」

 ライトボールが限界の光度に達した。
 これ以上は俺の魔法制御力では維持出来ない。自己崩壊してしまうだろう。

「じゃ、任せたぜ。……さあ、突撃だっっ、まおー様っ、キューちゃんっ!!」

 扉を蹴り開き、ライトボールを大きく振りかぶって投げた!
 それを追うように白いミニドラゴンと、それに騎乗した桃色のスライムが突撃を仕掛ける。

「ギャォォォォーッッ!!」

「ちじょーは、まかしときなー、べいべー!」

 ミニドラゴンはトロルを凌駕する巨体、ライトニングドラゴンに変身した。
 正体不明の手乗りスライムもまた、翼有りしスライム、エンジェリング・スライム(炎)へとワ○プ進化した。

「オ、オオッ、オオオオオオ……ッッ?!!」

 トロルチャンプは巨大な棍棒を捨て、両目を抱えて光に悶絶している。

「ホーリークローッ、だぜー!」

「ギャゥゥーーッッ!!」

 輝く爪のエフェクトがまおー様から放たれた。
 さらにライトニングドラゴンのホーリークローが空中から同様に、色素と体毛のないトロルの肉体を引き裂いた!

「へ、変身っっ、するんですか、最近のテイムモンスターってっっ!?」

「ああ、なんかするみたい、あいつら」

 まあバグってるし、メチャメチャ意思あるしな、仕様外の変身くらいするだろう。愛と勇気で。

「へっ、きかねーぜ。おととい、きなー、よーかん、もってなー」

 トロルチャンプの破れかぶれの攻撃!
 耐久力ぶっ壊れ+スライムボディのまおー様に、トロルチャンプはダメージを与えることが出来ない!

「そもそもなんであのスライム喋れるんですかーっ!?」

「俺が知りたい」

 援護にもう1つライトボールを投げた。
 しかしそれは必要なかったようだ。

 天と地からの弱点属性+特効効果の連係攻撃は、大ボスのトロルチャンプを30秒足らずで殲滅する離れ業を見せてくれた。

「ほめて、ほめてー? ねー、モブこちゃん、すごいって、いってー?」

「す……すごい……。キューちゃんさんも、まおー様さんも……伝説の、勇者様みたいです……」

 魔王相手に勇者という評価はどうなのだろうか。
 キューちゃんは翼を大きく広げ、まおー様は『ぽいんぽいん』と跳ねながら、少しずつ小さくなってゆく。

「ギュルゥゥゥッッ♪」

「ゆうしゃまおー、こーりん、だぜー、べいべー!」

 エンジェルデビルみたいな矛盾をはらんだ言葉だな……。
 小さくなったまおー様を見ると、キューちゃんも白く輝いてしぼんでいった。

 ドロップはアクセサリー装備の【ダークアミュレット】だ。効果は闇ダメージ50%カット。
 攻略サイトを見ながら遊ぶプレイヤーにだけ有用なやつだ。

「つかれたしー、ワレ、ひっこめてー? キューもねー、もー、とびたくねーってー」

「お前ら、都合の良い時だけ召喚解除させやがって……」

「にくなー? にく、わすれんなよー? よーい、しとけよー? ごちそうの、はらで、まってんからなー?」

「わかったよ……。んじゃ、お疲れさん」

 テイムモンスターの召喚を解除し、俺の中に引っ込めた。
 マスターはタクシーじゃねーっつーの……。

「あんなに強いと、僕たちの立場がありませんね……」

「それはある」

 ん……?
 今、モブ子は自分のことを『僕』と言わなかっただろうか。
 キャラブレか? モブだからその辺は雑なのか?

「ともかく楽が出来た。次行こう、次」

「はいっ! ライトニングドラゴン、格好良かったですね!」

「まおー様もな」

 トロルチャンプを倒せばすぐそこが上り階段だ。
 地下6階層目に上がると、そこは凍てついた氷のフロアだった。

「マジかよっ、さっ、さぶっ?!」

「駆け抜けましょうっ、こんなところにいたら、死んじゃいますっ!!」

 ファイアーボールを空飛ぶたき火にして、俺たちは地下6層目を駆け抜けた。
 モンスター? 迷宮では原則、様変わりにするたびにモンスターが強くなる。俺たちはその迷宮を逆走している。

 ここまで戻って来れば、俺たちの相手になんてならなかった。

 魔・即・斬の精神で、モブ子と俺は敵を叩き斬って地下5層目に駆け上がった。

「へくちゅ……っっ」

「ははははっ、なんだよ、そのかわいいくしゃ――ブェクショーイッッ?!!」

「ど、どこかで、暖を取りませんか……っ?」

「は、はだ、はだみずが……っ。狭いフロアを、探そう……っ」

 地下5層目は大理石で覆われた白い壁の世界だった。
 身体が凍て付いていた俺は、教室くらいの広さの少し暖かいフロアを見つけるなり、先住ゴブリンをマジックレーザーでバラバラにした。

 そして、だいぶ魔力が尽きて来てはいたが、ファイアーボールをキャンプファイヤーにして暖を取った。

「大丈夫か?」

「は、はい……あっ?!」

「こうして見るとお前、唇が真っ白だ。しょうがねぇ、しばらく俺にくっついてろ」

 モブ子の冷えた身体を背中から抱いて温めてやった。
 彼女は小柄な上に痩せていて、さらに鉄の胸当てを身に着けていたので身体が氷のように冷えてしまっていた。

「メメさんが、貴方のことをエッチだと言うのが、わかったような気がします……っ」

「メメさんを知っているのか?」

「はい……」

「ちょっと意地悪だけど面白いよな、メメさん」

 自慢するように笑いかけると、顔が近過ぎてか彼女は視線をそらした。
 確かにこれはエッチなアプローチかもしれないが、相手はどうせモブキャラだ。気にすることはないだろう。

「はぁぁぁ……っ、さすがにハードだったな……」

「うん……」

 素直な返答だ。この素直な返答、アイツにちょっと似ているかな。

「はぁ、温かい……」

「巻き込んで悪かったな。たぶん、俺のせいだ」

 温もりを求めて胸にしだれかかって来たモブ子を受け止めた。
 彼女の身体はとても冷たい。芯まで冷え切ってしまっている。
 鼻の下に女の子の頭が入り込んで来ると、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。

 モブキャラなのに、コイツ、かわいいな……。
 まさか、ネームドキャラ……? あるいは追加キャラ? モブにしては、どうも魅力的過ぎるような――ん?

 茶髪の下から……黒髪が…………生えている……?
 えっ? こ、これ、ヅラ……ッ!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...