美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん

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・敗北イベント 破壊される

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「ヴァーは、ミシェーラ皇女と付き合ってるの?」

「おい……」

「何よ?」

「まさか俺の名前、ヴァしか覚えてないとか、言うなよ……?」

 シャーロットは前を見据え、黙ってペースを上げた。
 どうせこっちはモブキャラだ。名前も長くて覚えにくいだろうさ……。

「ヴァレリウスだ」

「そう。それで、ヴァーは皇女と付き合ってるの?」

 略称ヴァーは勘弁してもらえないものだろうか……。

「んなことあるわけねーだろ。俺は家を勘当されたバカ息子だ、釣り合わねぇよ」

「ふーん……もう1つ質問良い?」

「おう、いくらでもどうぞ」

「決闘で、魔法兵を連れたお兄さんに勝ったって、本当?」

「まあ事実だ。軍用魔法兵2体を持ち出され、テイムモンスターの力を借りて返り討ちにした」

「ふーん……やるじゃない」

 あの事件、都の人間にまで知れ渡ったのか。
 これではネルヴァも立場がないな。

「じゃあ、実家の家族に魔法兵で騙し討ちにされたから、屋敷にファイアーボールを撃って逃げた、って話は?」

「事実と異なる。屋敷を焼いたのは、俺ではなくテイムモンスターに吐かせた火炎ブレスだ」

「ふふふっ、何よやるじゃないっ! あーあ、これでスケベじゃなかったら良かったのに」

「しょうがないだろ、目に入るんだから……」

「開き直ってんじゃないわよ、変態っ!」

 それはそうだ。
 しかし俺はシャーロット・エバーライトというキャラが好きなんだからしょうがない。

 これは憧れのゲーム画面の中に入れてしまっているも同然の状態なのだから、隙あらば鑑賞するに決まっている。
 ファンとしてそこは当然の権利である。放棄する気はない。常時キャラクター鑑賞モード最高!!

 と、開き直ったところで道は折り返し地点を迎えて、俺たちは太陽を背に山道を進む。
 すると山道に軽い土砂崩れが起きていた。

「このくらいなら余裕ね、行きましょ」

「待て、シャーロット」

「何よ、呼び捨て?」

「ここから先は息を整えながら行こう。どうせ後ろの連中もここでペースを落とす。それと、俺が前を行く」

 この土砂崩れははぐれモンスターが引き起こしたものだ。
 ここを抜けた山道の先に強敵が待ち伏せている。

「敵がいるの……?」

「なぜわかる?」

「だってこの土砂崩れ、よく見たら変だもの。まるで、人為的に起こされたみたいな……」

「あり得るな。ここを悪路にしておけば、獲物を追い詰めやすい」

 ニヤリと笑い返すと、シャーロットが剣に手をかけた。
 彼女は回避型の前衛タイプ。時間稼ぎをさせるならもってこいの軽戦士だ。

 これから俺は彼女と連携し、この負けイベントを覆す。
 覆せるか検証したいのもあるが、負けイベントをひっくり返すのはゲーマーの本能だ。チャンスがあればやるに決まってる。
 慎重に俺たちは前進していった。


 ・


 大狼マーナガルムは白銀の毛皮を持つAランクモンスターだ。
 スピードおよび攻撃力が非常に高く、毛皮も硬く、さらに巨大であるので守備力もHPも高い。

「ちょ、ちょっとあれ、大物過ぎない……っ!?」

「あんなのに出くわすなんて、俺たちはついてないな」

「なんで笑ってるのっ!?」

「なんでって、勝算があるからに決まってんだろ」

 大狼マーナガルムと俺たちは、ほぼ同時に互いを発見した。
 退路は悪路、撤退不能。さらに細い山道とあって、かなり俺たちに不利な状況だった。

「来るぞっ、少し時間を稼げっ!」

「ア、アンタッ、頭おかしいわっっ!!」

 シャーロットが剣を抜くと、俺は後ろに飛び退き、まおー様とキューちゃんを再召喚した。

 こっちはのっけから本気だ。
 ライトニングドラゴンが上空に現れ、まおー様がその背に『ポテンッ』と落ちる。

「まおー様っ、キューちゃんっ、側面に回ってあのデカ過ぎの狼を狙撃しろっ!」

「ギャォォォォーッッ!!」

「わんこさんと、あそんでたのになー、ひとづかい、あれーやつだぜ」

 マーナガルムがこちらに迫った。
 回避を得意とする軽戦士シャーロットは、危険なその爪、牙、回転しての尾撃の連続攻撃を正面に、華やかに踊り回る。

 2発直撃すれば戦闘不能という厳しい状況で、まずは最初の時間を稼いでくれた。

「なっ、何よ、その金色のドラゴンッッ?!」

「うちのキューちゃんだ!」

「キューちゃんってサイズじゃないでしょっ!! うっ?!」

 いかにシャーロットが時間稼ぎに最適のキャラクターとはいえ、相手はAランクモンスターだ。そう長くはもたない。

 回避し損ねた爪撃を、シャーロットは剣で受け流す。

「まおー様っ、キューちゃんっ、二連装アイスボルトッ、撃てっ!!」

「ギャォォーッッ!!」

 槍のように鋭いアイスボルトがマーナガルムの土手っ腹に突き刺さった。
 しかし相手はボスキャラ、しかも敗北イベントの強敵だ。そのライフは異常とも言えるほどに豊富とくる。

「あ、あり得ないっ、なんなのよっ、コイツッッ?!」

「大丈夫だ、俺も加勢する」

「無理よっ、アンタなんてすぐにかじられて死んじゃうわよっ、下がってっ!」

「ところがどっこい――【雷剣召喚】っっ!! シャーロットッ、これを使えっ!!」

「えっ、ええええーっっ?!!」

 シャーロットの左足下に、金色に光り輝く魔法の剣を投げ付けた。
 彼女は迷いながらもそれを抜き、新しい剣でマーナガルムの爪を受け流す。

 カウンターの電撃が発生し、マーナガルムが大きく怯んだ。

「こ、これは……っ?!」

「よしっ、たたみかけるぞっ、シャーロットッ!! さらに、【雷剣召喚】っっ!!」

「えええーっ、こんなすごい魔法剣を、もう一本っっ?!!」

 俺はシャーロットの側面からマーナガルムに突っ込んだ。
 電撃を放つ危険な剣にマーナガルムは臆する。そのチャンスをシャーロットも見逃さなかった。

「いけるっっ、右翼はあたしがっ!!」

「任せたっっ、うおおおおおーっっ!!!」

 俺はマーナガルムの【爪撃】を手首ごと叩き斬った。
 隣ではシャーロットが【牙】を鮮やかにかわし、切り上げのカウンターでマーナガルムの頸部を斬り裂いた。

 普通の生物なら絶命する。だがこれでも少しダメージが足りないようだ。ならば――

「キューちゃんっ、まおー様っ、トドメの【雷嵐の翼】をぶち込めっっ!!」

「へっ、たよりねー、げぼくだぜー」

「ギャォォォーッッ♪」

「シャーロットッ、下がれっ、ヤバいのが来んぞっ!!」

 命じるとシャーロットは要求通りに後ろに飛び退いた。
 俺も同じように後ろに飛び、追撃を狙うマーナガルムに雷剣を投げ付けた。

 その雷剣はもう必要ない。雷剣はマーナガルムの肩に突き刺さると、剣の実体を失い、激しい電流に変わった。

「なっなっなっ、なんなのよぉっ、アンタァァーッッ?!!」

「まおーよっ、竜よっ、今こそ大狼を討てっっ!!!」

 ライトニングドラゴンとまおー様の翼が羽ばたくと、直線範囲攻撃の【雷嵐の翼】がマーナガルムを中心にして駆け抜けた。

 電撃の嵐は大地を焦がし、炎を上げ、山の傾斜面に激突して派手な山火事を引き起こした。

「オ、オオォォ…………アオォォォォーーンッッ!!」

 威力75・範囲必中100%の一方的な攻撃により、マーナガルムは敗北した。
 最期に高々と遠吠えを上げると、大狼は光の粒子となって実体を失っていった。
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