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・作中最悪の悪役 モブに挑戦状を叩き付けれる
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「俺が盗んだ証拠でもあんのかよっ!」
「あるぜ!」
「はぁ!? なら言うけどよっ、あの箱にはパスワードがかかってたんだろっ!? 俺には無理じゃねぇか!」
「いや、可能だ!! お前は事前にパスワードを聞かされていた!! 他ならぬ、共犯者の口からなっ!!」
横目で生徒会長ルゴプスをのぞく。
さすがは大悪党。この程度でボロを出すような男ではなかった。
一方でフィッシュパイは魚みたいなその目を泳がせていた。
「共犯者……? だ、誰だよっ、言えるなら言ってみろよ、クソガキ!!」
「ああ、共犯者はそこにいる生徒会長、ルプゴス王子だ!!」
共犯者の名を出すと、再び講堂が激しくどよめいた。
俺はそれらを全て聞き流す。
共犯者であるルプゴス王子に手招きをして、皆の前で自己弁護してみろと誘った。ヤツはそれに乗った。
「この男は気が狂ったようだ。アンフィス王国・第二王子である私が、はした金など盗んでなんの意味がある?」
「決まっているだろ!! それは書記コルリを生徒会から追放するためだ!!」
「馬鹿馬鹿しい……。そんなことのために、この私が人を陥れたと言うのか?」
「けど実際、お前はその通りに行動してるだろ? お前はコルリの自己弁護も聞かず、彼女を泥棒扱いし、不信任案を学園に提出している」
「致し方なかろう、排除せねば生徒会が疑われるのだ」
「はっ、論外だな!! それは醜い自己保身って言うんだぜ!!」
「つまらぬ見解の違いだな」
「そもそもコルリが犯行に手を染めた証拠はどこにもない!! なのにお前は、コルリがさも犯人であるように、生徒の敵意を擦り付けたっっ!! ルプゴスッッ、お前は見下げ果てた男だっっ!!」
冷静を取り繕うルプゴスの顔にシワが寄った。
これでいい。これでいいのだが、作中最悪の男を敵に回す行為に、さすがに俺も背筋が『ゾクッ』と来た。
だが後悔はない。この男はクズだと断言出来る。何度でも。
「クッ、ククク……ッ、見たか生徒諸君、この男は気が狂っている。一理なくもないが、全てはこの男の思い込みに過ぎない」
「いいや、証拠ならあるぜ!」
「そんなものはない。愛する父母に誓おう、私は潔白だ」
「そうか、それじゃ遠慮なく解決編とゆくか。……ミシェーラ様」
「はい、こちらの空色の箱をご覧下さい。この箱には、先日まで共同購入者のお金が入っていました」
静かにたたずんでいた皇女が空色の小箱をポーチから取り出し、前に出てそれを掲げた。
「こちらの空色の箱、パスワードによりロックがされていることが有名ですが、もう1つ、防犯のための仕組みがあるのを皆様はご存じでしょうか?」
「…………な、なに……?」
自分が狙っていた女の手で、自分が知らないカラクリを明かされて、やっとルプゴス王子は動揺してくれた。
「ここに1zあります。これをこの箱に入れて、閉めますと、術が自動発動する仕組みとなっています」
この仕組みは主人公の長い努力と偶然によって発見された。
それをなんの苦労もなく知り得て、明かしてしまう俺はとんだペテン師だ。
「さて取り出しましたるこの1z小金貨、とある術をちょちょいと唱えますと、あら不思議! 光るんですねっ、かわいいピンク色にっ!」
反射的な動作だろうか。
ルプゴス王子とフォルテが鋭くフィッシュパイに振り返った。
フィッシュパイは顔面蒼白だ。震えながら動揺に後ずさった。
「万一お金を盗まれた時のための、隠し仕様といったところですね。これを造られた偉大なる先生方は、さぞ立派な魔術師様だったのでしょう」
ミシェーラ皇女が正面なら俺は背後だ。
俺たちは前後からフィッシュパイを囲んだ。
フィッシュパイは全校生徒に酷く嫌われている。それが追い詰められる姿に、講堂中の生徒が応援の歓声を上げた。
「ロバート・ペンネ様。失礼ながらこれから、貴方に同じ術をかけさせていただきます」
「じ、人権侵害だっ!! なんとか言ってくれ、ルプゴス王子っっ?!」
ルプゴス王子はフィッシュパイを見ない。
糾弾者であるヴァレリウスだけを青い顔で睨んでいた。
「失礼いたします」
「や、止めろ……っっ!!」
ミシェーラ皇女が術をかけると、長い沈黙が訪れた。
「…………あら?」
いくら待ってもフィッシュパイから桃色の光が灯らなかった。
迷い迷いの手で、フイッシュパイが財布を取り出す。財布の中も外も、全く光ってなどいなかった。
「へっ、へへへ……っ、お、驚かせやがってっっ!! このクソガキどもっ、俺の名誉を汚したツケ、しっかり払わせてやるからなぁっっ!!」
「そ、そんな……っ、ど、どういうことですか、ヴァー様っ!?」
「フ、フフフ……ッ、親愛なるミシェーラ皇女よ。そこの三下と同じ言葉を吐くようで恐縮なのだが、王家の名誉を汚したこの落とし前、どう付けていただいたものかな……?」
ああ、やっちまった……。
シナリオ通りに進むと、そう勘違いしてしまった。
下手をすればこれは退学だけでは済まない、大失敗だ。
コルリも天から地に突き落とされたような、絶望の表情を浮かべていた。
ああ、終わった……。
「と、思うだろ、普通」
「え…………っ? ヴァー、様……?」
口元をつり上げてそう言うと、再び講堂中の注目が俺に集まった。
ミシェーラ皇女は目を丸くして、打ち合わせにない行動を取る仲間に驚いていた。
俺はフィッシュパイの腹ポケットから、ヤツのメモ帳を抜き取った。
「な、何をす――なぁぁっっ?!!」
「ほらなっ!」
「まぁっ!? 皆さん見て下さいっ、手帳が光っていますっ!!」
「証拠ならここにあるんだなっ!! コイツ、盗んだ金を洗浄する知能はあったみてぇだが……貧乏性が抜け切れなかったみてーだぜっ!!」
俺も似たようなことをしていたのでよくわかる。
メモ帳を買う金もない俺たちみたいなやつらは、手に入れた紙切れを裁断して、束ねて、それをメモ帳代わりにする。
「や、止めろっ、クソガキ……ッ」
「ほら見ろよっっ、これは空色の箱に同封された注文票だっ!! なんでコイツが注文票を持っているのやら、不思議じゃねぇか、お前らっっ!!」
「く……っ、クソォォォォ…………ッッ」
フィッシュパイはその場でくず折れた。
ゲームオーバーだ。豪遊したという店を洗えば、桃色に輝く金貨が見つかるだろう。
「ロバート・ペンネッ、リンドブルム皇帝家の名の下に、貴方を緊急逮捕します!!」
少しややっこしいのだが、この地の支配者はまだ一応リンドブルム皇帝家である。
アンフィス王国の王は、皇帝の許しを得て自治をしているという建前になっている。
「さて、ルプゴス王子。真犯人が見つかったようだが、生徒会書記コルリに冤罪をなすり付けて退学させようとしたその傲慢な悪行、どうやって償っていただこうか?」
崩していた言葉を整え、最悪の男に挑戦状を叩き付けた。不倶戴天の敵だと思わせれば、ミッション完了だ。
「ヴァレリウスと言ったか、なかなかやるようだ。その名前、覚えておこう」
「おい、逃げんのかよ、王子様っ!!」
「王族に弓引く下郎が。お前はもう、ただでは済まさん」
普通なら震え上がっても無理もない王族の言葉を、俺は喜びを隠し切れずに笑い返していた。
そんか奇異な存在にヤツは『ギョッ』としながらも、副生徒会長フォルテを引き連れて逃げていった。
これで確実に、あのクズ王子は主人公ではなく、このヴァレリウスを目の敵にすることになる。
全て計算通り。俺は笑わずにはいられなかった。
「ヴァレリウスさんっっ!!」
告発が終わると、コルリが桃色の髪を揺らして講壇に上がって来た。
彼女に笑顔が戻り、男への恐怖心を胸に俺の前に立った。
「よう、まおー様の下僕として、俺なりに尽力させてもらったぜ」
「へっ、かっこよかったぜー。さすがー、われのー、いちばんのしもべだなー」
まおー様はコルリの肩を離れ、ポケットに帰って来てくれた。
このぷにぷにがないとやはり寂しい。
「ヴァレリウスさんっ、ミシェーラ皇女様っ、このたびは、ありがとうございますっ!! わ、私のこと、信じてくれて……私……本当に……嬉しかった……」
コルリは涙を流して感謝した。
やさしくて男気のあるミシェーラ皇女が彼女の肩を抱き、号泣する彼女を慰めた。
「信じ、て、くれたの……貴方たち、だけ……。私、このこと、忘れません……ありがとう……」
男が苦手な汚れのない乙女をこの胸に抱けなくて、ちょっと残念だなんて、そんな本音は口には出せなかった。
「あるぜ!」
「はぁ!? なら言うけどよっ、あの箱にはパスワードがかかってたんだろっ!? 俺には無理じゃねぇか!」
「いや、可能だ!! お前は事前にパスワードを聞かされていた!! 他ならぬ、共犯者の口からなっ!!」
横目で生徒会長ルゴプスをのぞく。
さすがは大悪党。この程度でボロを出すような男ではなかった。
一方でフィッシュパイは魚みたいなその目を泳がせていた。
「共犯者……? だ、誰だよっ、言えるなら言ってみろよ、クソガキ!!」
「ああ、共犯者はそこにいる生徒会長、ルプゴス王子だ!!」
共犯者の名を出すと、再び講堂が激しくどよめいた。
俺はそれらを全て聞き流す。
共犯者であるルプゴス王子に手招きをして、皆の前で自己弁護してみろと誘った。ヤツはそれに乗った。
「この男は気が狂ったようだ。アンフィス王国・第二王子である私が、はした金など盗んでなんの意味がある?」
「決まっているだろ!! それは書記コルリを生徒会から追放するためだ!!」
「馬鹿馬鹿しい……。そんなことのために、この私が人を陥れたと言うのか?」
「けど実際、お前はその通りに行動してるだろ? お前はコルリの自己弁護も聞かず、彼女を泥棒扱いし、不信任案を学園に提出している」
「致し方なかろう、排除せねば生徒会が疑われるのだ」
「はっ、論外だな!! それは醜い自己保身って言うんだぜ!!」
「つまらぬ見解の違いだな」
「そもそもコルリが犯行に手を染めた証拠はどこにもない!! なのにお前は、コルリがさも犯人であるように、生徒の敵意を擦り付けたっっ!! ルプゴスッッ、お前は見下げ果てた男だっっ!!」
冷静を取り繕うルプゴスの顔にシワが寄った。
これでいい。これでいいのだが、作中最悪の男を敵に回す行為に、さすがに俺も背筋が『ゾクッ』と来た。
だが後悔はない。この男はクズだと断言出来る。何度でも。
「クッ、ククク……ッ、見たか生徒諸君、この男は気が狂っている。一理なくもないが、全てはこの男の思い込みに過ぎない」
「いいや、証拠ならあるぜ!」
「そんなものはない。愛する父母に誓おう、私は潔白だ」
「そうか、それじゃ遠慮なく解決編とゆくか。……ミシェーラ様」
「はい、こちらの空色の箱をご覧下さい。この箱には、先日まで共同購入者のお金が入っていました」
静かにたたずんでいた皇女が空色の小箱をポーチから取り出し、前に出てそれを掲げた。
「こちらの空色の箱、パスワードによりロックがされていることが有名ですが、もう1つ、防犯のための仕組みがあるのを皆様はご存じでしょうか?」
「…………な、なに……?」
自分が狙っていた女の手で、自分が知らないカラクリを明かされて、やっとルプゴス王子は動揺してくれた。
「ここに1zあります。これをこの箱に入れて、閉めますと、術が自動発動する仕組みとなっています」
この仕組みは主人公の長い努力と偶然によって発見された。
それをなんの苦労もなく知り得て、明かしてしまう俺はとんだペテン師だ。
「さて取り出しましたるこの1z小金貨、とある術をちょちょいと唱えますと、あら不思議! 光るんですねっ、かわいいピンク色にっ!」
反射的な動作だろうか。
ルプゴス王子とフォルテが鋭くフィッシュパイに振り返った。
フィッシュパイは顔面蒼白だ。震えながら動揺に後ずさった。
「万一お金を盗まれた時のための、隠し仕様といったところですね。これを造られた偉大なる先生方は、さぞ立派な魔術師様だったのでしょう」
ミシェーラ皇女が正面なら俺は背後だ。
俺たちは前後からフィッシュパイを囲んだ。
フィッシュパイは全校生徒に酷く嫌われている。それが追い詰められる姿に、講堂中の生徒が応援の歓声を上げた。
「ロバート・ペンネ様。失礼ながらこれから、貴方に同じ術をかけさせていただきます」
「じ、人権侵害だっ!! なんとか言ってくれ、ルプゴス王子っっ?!」
ルプゴス王子はフィッシュパイを見ない。
糾弾者であるヴァレリウスだけを青い顔で睨んでいた。
「失礼いたします」
「や、止めろ……っっ!!」
ミシェーラ皇女が術をかけると、長い沈黙が訪れた。
「…………あら?」
いくら待ってもフィッシュパイから桃色の光が灯らなかった。
迷い迷いの手で、フイッシュパイが財布を取り出す。財布の中も外も、全く光ってなどいなかった。
「へっ、へへへ……っ、お、驚かせやがってっっ!! このクソガキどもっ、俺の名誉を汚したツケ、しっかり払わせてやるからなぁっっ!!」
「そ、そんな……っ、ど、どういうことですか、ヴァー様っ!?」
「フ、フフフ……ッ、親愛なるミシェーラ皇女よ。そこの三下と同じ言葉を吐くようで恐縮なのだが、王家の名誉を汚したこの落とし前、どう付けていただいたものかな……?」
ああ、やっちまった……。
シナリオ通りに進むと、そう勘違いしてしまった。
下手をすればこれは退学だけでは済まない、大失敗だ。
コルリも天から地に突き落とされたような、絶望の表情を浮かべていた。
ああ、終わった……。
「と、思うだろ、普通」
「え…………っ? ヴァー、様……?」
口元をつり上げてそう言うと、再び講堂中の注目が俺に集まった。
ミシェーラ皇女は目を丸くして、打ち合わせにない行動を取る仲間に驚いていた。
俺はフィッシュパイの腹ポケットから、ヤツのメモ帳を抜き取った。
「な、何をす――なぁぁっっ?!!」
「ほらなっ!」
「まぁっ!? 皆さん見て下さいっ、手帳が光っていますっ!!」
「証拠ならここにあるんだなっ!! コイツ、盗んだ金を洗浄する知能はあったみてぇだが……貧乏性が抜け切れなかったみてーだぜっ!!」
俺も似たようなことをしていたのでよくわかる。
メモ帳を買う金もない俺たちみたいなやつらは、手に入れた紙切れを裁断して、束ねて、それをメモ帳代わりにする。
「や、止めろっ、クソガキ……ッ」
「ほら見ろよっっ、これは空色の箱に同封された注文票だっ!! なんでコイツが注文票を持っているのやら、不思議じゃねぇか、お前らっっ!!」
「く……っ、クソォォォォ…………ッッ」
フィッシュパイはその場でくず折れた。
ゲームオーバーだ。豪遊したという店を洗えば、桃色に輝く金貨が見つかるだろう。
「ロバート・ペンネッ、リンドブルム皇帝家の名の下に、貴方を緊急逮捕します!!」
少しややっこしいのだが、この地の支配者はまだ一応リンドブルム皇帝家である。
アンフィス王国の王は、皇帝の許しを得て自治をしているという建前になっている。
「さて、ルプゴス王子。真犯人が見つかったようだが、生徒会書記コルリに冤罪をなすり付けて退学させようとしたその傲慢な悪行、どうやって償っていただこうか?」
崩していた言葉を整え、最悪の男に挑戦状を叩き付けた。不倶戴天の敵だと思わせれば、ミッション完了だ。
「ヴァレリウスと言ったか、なかなかやるようだ。その名前、覚えておこう」
「おい、逃げんのかよ、王子様っ!!」
「王族に弓引く下郎が。お前はもう、ただでは済まさん」
普通なら震え上がっても無理もない王族の言葉を、俺は喜びを隠し切れずに笑い返していた。
そんか奇異な存在にヤツは『ギョッ』としながらも、副生徒会長フォルテを引き連れて逃げていった。
これで確実に、あのクズ王子は主人公ではなく、このヴァレリウスを目の敵にすることになる。
全て計算通り。俺は笑わずにはいられなかった。
「ヴァレリウスさんっっ!!」
告発が終わると、コルリが桃色の髪を揺らして講壇に上がって来た。
彼女に笑顔が戻り、男への恐怖心を胸に俺の前に立った。
「よう、まおー様の下僕として、俺なりに尽力させてもらったぜ」
「へっ、かっこよかったぜー。さすがー、われのー、いちばんのしもべだなー」
まおー様はコルリの肩を離れ、ポケットに帰って来てくれた。
このぷにぷにがないとやはり寂しい。
「ヴァレリウスさんっ、ミシェーラ皇女様っ、このたびは、ありがとうございますっ!! わ、私のこと、信じてくれて……私……本当に……嬉しかった……」
コルリは涙を流して感謝した。
やさしくて男気のあるミシェーラ皇女が彼女の肩を抱き、号泣する彼女を慰めた。
「信じ、て、くれたの……貴方たち、だけ……。私、このこと、忘れません……ありがとう……」
男が苦手な汚れのない乙女をこの胸に抱けなくて、ちょっと残念だなんて、そんな本音は口には出せなかった。
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