美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん

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・クラスメイト 攻略可能キャラ多数

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 学食での朝食を終えると、緊張を胸に中央昇降口の広場を訪れた。
 そこに張り出された告知物に、これからの学校生活がかかっている。

「やりましたっ、ヴァー様っ!!」

「ヴァレリーと同じクラスでしゅっ!!」

 まず、ゲームシナリオ通りのスタートであることに安堵した。
 そこにあるクラス割『2-B』の表には、ヴァレリウス、ミシェーラ、メメの名前が載っていた。

 この物語の攻略可能キャラである、治癒魔法使いのコルリと、ツンデレ剣士のシャーロットの名前もある。
 副担任の魔法教師アルテミシアさんも、攻略可能キャラのうち1人だ。

「大変でごじゃります姫様、ヴァレリーが女子生徒の名前を見ながら、なんか気持ち悪くニヤニヤしているでごじゃりまする」

「お、おい……っ」

「メメにはお見通しにごじゃります」

「ち、違うっ! ライバルになるかもしれないから、色々と今後を考えていただけだ!」

「ぷぷぷぷ……」

「メメがごめんなさい、意地悪なのよ、この子」

「あい。ヴァレリーには、特に意地悪になれるでしゅ」

 プレイ済みだから言える。メメさんのこれは好意の裏返しだ。
 ゲーム設定上のメメさんは、好きな男の子にハチャメチャな意地悪をしてしまう厄介なキャラクターだった。

「勘弁してくれよ、メメさん……」

「忠告でしゅ。くれぐれも姫様を失望させぬことでごじゃります」

 さて、それはどうだろう。
 奇跡の17股主人公の出番を奪うということは、それはそれで超危険な橋である。
 だがもう今さら止まれなかった。


 ・


 新学年初日はつつがなく進行した。
 講堂での集会の後、2-Bの教室でお約束の自己紹介が行われた。

 ヴァレリウスである俺は『【モンスター練成】スキルが使えるので強化したいモンスターがいたら自分が受け持つ。ただし有料。鑑定も出来る』と、無難なアピールに留めた。

「ミシェーラです! 戦うのが大好きです! 一応、皇女もやっています!」

「メメでごじゃいましゅ。姫様の愛の下僕にごじゃりまする」

 ミシェーラ皇女とメメさんは相変わらずのノリだ。
 歯衣着せぬ自由っぷりに、クラスメイトたちは若干引いていた。

「あ、あの、その、えっと、コルリ・ルリハと申します……っ。あの、治癒魔法が得意ですっ! あ、あとっ、生徒会書記もしてます、こんな私なのに、ごめんなさい……!」

 コルリ・ルリハは回復、蘇生、強化、状態異常解除まで、サポートならなんでもこなす超優遇キャラだ。
 どんなゲームでも1人はいる『こいつを入れておけば回復面の心配はない』枠のキャラだ。

 髪はピンク色のショートカット。顔立ちはやさしく、この自己紹介の通り性格はやや気弱。強く物を言えない小柄な女の子だ。

 その庇護欲を誘う姿から特に男性ユーザーからの人気が高い。
 俺もこの子のルートを3周した。

「あたし、シャーロット・エバーライト、ジョブは軽戦士。えっと……魔法は全然だけど、剣術なら誰にも負けないから! よろしく!」

 シャーロット・エバーライトは回避型の戦士だ。自己紹介の通り魔法はほとんど使えない。
 しかし回避能力は全キャラ中トップ。攻撃力も高く、とにかく使いやすいので、魔法が下手な面も大したデメリットにならない。

 髪はふわりとしたブロンドのツインテール。気が強く、ツンデレで、時々他者を寄せ付けない鋭い目付きをする。
 そのせいで誤解されがちだが、彼女は理想が高いだけのやさしい子だ。

 それと制服の下に隠し切れない大きな胸を持っている。
 ブロンド、ツインテ、ツンデレ、巨乳。これだけ揃えて人気が出ないわけがなく、公式で抱き枕が販売されたほどの人気キャラだ。

 ツンデレキャラの良さは、序盤と後半でデレ具合が大きく変化するところだ。
 何周しても新しい発見があった。

「そういえば……僕、アルテミシア先生の紹介、しましたっけ……?」

 担任は去年に続き、涙もろくて心配性なこの人だ。

「してません……」

 副担任のアルテミシア先生は担任に存在を忘れられていた。

「これはすみません、アルテミシア先生。生徒の自己紹介の一句一句を、この胸に刻み付けるのに僕も頭がいっぱいで……。では、どうぞ!」

「魔法教練担当のアルテミシアです。魔力容量訓練を主に受け持っています。こ、今年から、副担任をさせていただくことになりました……っ! あ、あまり、いじめないで下さいね……?」

 女教師アルテミシア、通称アルミ先生は今年勤続2年目となる新米先生だ。
 設定上の年齢は24歳。主人公から見て6歳も年上のキャラクターだが、当然攻略対象である。

 先生はかわいい。
 綺麗なエメラルド色の瞳。落ち着いた長い黒髪を背中まで伸ばしている。
 どこかの良家の上品なお嬢様が教師をしている、といった風体だ。

 生前の俺はそこまで年上キャラは好きでもなかったのだが、アルミ先生は別腹だ。アルミ先生は年上なのに頼りなくてかわいい。

 この手の美少女ゲームにありがちな話、アルミ先生もまた人気があった。それはシャーロットと一緒に、抱き枕が販売されるほどにだ。

 プレイヤーは若く可憐な少女を求める一方で、友人の母や、女教師が醸し出すバブ味を求めているのかもしれない。

「いじめたくなる先生でしゅ……」

「止めろって、メメさん……っ」

「嫉妬でしゅか? 僕が一番最初にいじめられてたのにーっ、でしゅか……?」

「デビュー初日からそのノリは勘弁してくれ……っ、浮きまくる……っ」

 アルミ先生はゲーム冒頭のチュートリアルキャラクターでもある。
 つまりちょっとつついたら『ひぃーんっ』と泣きそうなこの女性こそ、俺の最初のターゲットに相違なかった。
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