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・皇女と侍女 毒親に啖呵を切る
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西の空に夕日が浮かび、ちょっと肌寒くなって来たので帰ることにした。
俺はまだ気絶したまま目覚めないネルヴァの襟首を掴み、屋敷まで引きずっていった。
一人で行くと言っているのに、見届け人だからと言って皇女様とメメさんが一緒に来てくれた。
正直、頼もしかった。
屋敷のエントランスホールに入ると、毎度のことだがメイドたちが悲鳴を上げた。
まあ今日のは一際大きい。
ボコボコの返り討ちにあったネルヴァを、勘当されたヴァレリウスが引きずって戻ってきたのだから、当然だろう。
「ネルヴァ……? ネルヴァッ、私のネルヴァッ!! ヴァレリウスッ、なんてことを!!」
「バ、バカな……っっ」
親子揃ってボキャブラリー貧困かよ。
俺は気絶したネルヴァを親の前に突き出した。
「私、ミシェーラ皇女とこの侍女のメメは見届け人として、決闘と呼ぶのもおこがましい見下げ果てた戦いを、最後までしかと見届けさせていただきました」
継母のデネブはこの件を知らないようだ。
状況がわからず混乱しているように見えた。
「決闘の指輪の使用はまだしも、軍用魔法兵2機を決闘に持ち込んだのは、どういったご判断からでしょう?」
「あ、あなたっ、これはどういうことなのっ!?」
「ヴァレリウス様ほどの実力者だったからこそ大事には至りませんでしたが、ネルヴァ様は卑劣にも、軍用魔法兵2機を用いて神聖な決闘を汚したあまりか、弟の殺害を試みようとしました」
メイドたちが悲鳴を上げて騒ぎ立てた。
外に漏れてしまったらとんでもないことになるスキャンダルだ。骨肉の争いだ。
名門貴族の兄が決闘のルールを破り、弟を騙し討にして、殺めようとした。
貴族社会においてこれは一大事だ。
大スキャンダルになること間違いなしの誇り無き醜態だ。
それほどに決闘というものは重い伝統があった。
「ヴァレリウス様、以上の出来事は、事実でございますか?」
「ああ、本当のことだ」
「う、嘘を吐け……っっ!!」
「ネ、ネルヴァが殺人未遂なんて……そんなことするわけないわっ!!」
見苦しい。これだからミシェーラ皇女とメメさんを連れて来たくなかった。
「ご当主様。それはリンドブルム帝国皇女が、嘘を吐いているとおっしゃるのでごじゃりまするか?」
責めるようにメメさんが声を張り上げる。
それは俺に親と戦う勇気をくれた。
「そ……そうは言っていない……」
「ヴァイシュタイン家当主カラカラッッ!!」
「うっ?!」
ミシェーラ皇女の鋭い言葉に父は驚きにすくみ上がった。
「我が子に我が子を軍用兵器で殺害させようなど、貴方は見下げ果てた獣以下の男ですっっ!!」
「く……っ?! い、言わせておけば、この……っ」
「私は予言しましょう! いずれこの噂は世界中に広がり、ありとあらゆる王侯貴族が貴方を見下すことになるでしょう!!」
「なっ?! 噂を流す気かっ!?」
「そんなことする必要などごじゃりませぬ。壁に耳あり、壁に抜け道あり。こうなってしまったら、メメたちが黙ったところでもう止まらないのでごじゃります」
と言いながら、噂をまき散らすつもりなのだろうな、こいつらは……。
「もし人に真偽を聞かれれば、私は見届け人としての義務を果たすのみです」
「二度とヴァレリウス様に手を出させないでごじゃります。次、同じようなことが繰り返されれば、メメと皇女殿下が迎え撃つでごじゃりますっ!!」
「ええ、友のためにこの剣を抜くこともやぶさかではありません。私たちのヴァレリウス様に、二度と危害は加えさせません!! どうか、ご了承のほどを!!」
強い……。この2人、強過ぎる……。
ナチュラルパワハラ野郎のカラカラも、どんな時もヒステリーでゴリ押すデネブも、ミシェーラ皇女とメメさんの気迫の前には無力だった。
「行くでしゅよ、ヴァレリー」
「参りましょう、ヴァー様。私、胸がスッキリしてしまいました!」
「俺の言いたいこと全部言いやがって、お前ら……ありがとうよ」
俺たちは屋敷を出て町に下りて、路地裏の先の裏世界を介して魔法学院に帰った。
その道中、奇妙なバグデータを拾ったが、これも何も考えずに触媒に使ってしまうことにした。
―――――――――――――――――――――
【名称】思い上がりの残滓
【区分】00
【効果】力:20 魔:20
【解説】落ちこぼれの弟が兄に勝つなど間違っている
―――――――――――――――――――――
俺はまだ気絶したまま目覚めないネルヴァの襟首を掴み、屋敷まで引きずっていった。
一人で行くと言っているのに、見届け人だからと言って皇女様とメメさんが一緒に来てくれた。
正直、頼もしかった。
屋敷のエントランスホールに入ると、毎度のことだがメイドたちが悲鳴を上げた。
まあ今日のは一際大きい。
ボコボコの返り討ちにあったネルヴァを、勘当されたヴァレリウスが引きずって戻ってきたのだから、当然だろう。
「ネルヴァ……? ネルヴァッ、私のネルヴァッ!! ヴァレリウスッ、なんてことを!!」
「バ、バカな……っっ」
親子揃ってボキャブラリー貧困かよ。
俺は気絶したネルヴァを親の前に突き出した。
「私、ミシェーラ皇女とこの侍女のメメは見届け人として、決闘と呼ぶのもおこがましい見下げ果てた戦いを、最後までしかと見届けさせていただきました」
継母のデネブはこの件を知らないようだ。
状況がわからず混乱しているように見えた。
「決闘の指輪の使用はまだしも、軍用魔法兵2機を決闘に持ち込んだのは、どういったご判断からでしょう?」
「あ、あなたっ、これはどういうことなのっ!?」
「ヴァレリウス様ほどの実力者だったからこそ大事には至りませんでしたが、ネルヴァ様は卑劣にも、軍用魔法兵2機を用いて神聖な決闘を汚したあまりか、弟の殺害を試みようとしました」
メイドたちが悲鳴を上げて騒ぎ立てた。
外に漏れてしまったらとんでもないことになるスキャンダルだ。骨肉の争いだ。
名門貴族の兄が決闘のルールを破り、弟を騙し討にして、殺めようとした。
貴族社会においてこれは一大事だ。
大スキャンダルになること間違いなしの誇り無き醜態だ。
それほどに決闘というものは重い伝統があった。
「ヴァレリウス様、以上の出来事は、事実でございますか?」
「ああ、本当のことだ」
「う、嘘を吐け……っっ!!」
「ネ、ネルヴァが殺人未遂なんて……そんなことするわけないわっ!!」
見苦しい。これだからミシェーラ皇女とメメさんを連れて来たくなかった。
「ご当主様。それはリンドブルム帝国皇女が、嘘を吐いているとおっしゃるのでごじゃりまするか?」
責めるようにメメさんが声を張り上げる。
それは俺に親と戦う勇気をくれた。
「そ……そうは言っていない……」
「ヴァイシュタイン家当主カラカラッッ!!」
「うっ?!」
ミシェーラ皇女の鋭い言葉に父は驚きにすくみ上がった。
「我が子に我が子を軍用兵器で殺害させようなど、貴方は見下げ果てた獣以下の男ですっっ!!」
「く……っ?! い、言わせておけば、この……っ」
「私は予言しましょう! いずれこの噂は世界中に広がり、ありとあらゆる王侯貴族が貴方を見下すことになるでしょう!!」
「なっ?! 噂を流す気かっ!?」
「そんなことする必要などごじゃりませぬ。壁に耳あり、壁に抜け道あり。こうなってしまったら、メメたちが黙ったところでもう止まらないのでごじゃります」
と言いながら、噂をまき散らすつもりなのだろうな、こいつらは……。
「もし人に真偽を聞かれれば、私は見届け人としての義務を果たすのみです」
「二度とヴァレリウス様に手を出させないでごじゃります。次、同じようなことが繰り返されれば、メメと皇女殿下が迎え撃つでごじゃりますっ!!」
「ええ、友のためにこの剣を抜くこともやぶさかではありません。私たちのヴァレリウス様に、二度と危害は加えさせません!! どうか、ご了承のほどを!!」
強い……。この2人、強過ぎる……。
ナチュラルパワハラ野郎のカラカラも、どんな時もヒステリーでゴリ押すデネブも、ミシェーラ皇女とメメさんの気迫の前には無力だった。
「行くでしゅよ、ヴァレリー」
「参りましょう、ヴァー様。私、胸がスッキリしてしまいました!」
「俺の言いたいこと全部言いやがって、お前ら……ありがとうよ」
俺たちは屋敷を出て町に下りて、路地裏の先の裏世界を介して魔法学院に帰った。
その道中、奇妙なバグデータを拾ったが、これも何も考えずに触媒に使ってしまうことにした。
―――――――――――――――――――――
【名称】思い上がりの残滓
【区分】00
【効果】力:20 魔:20
【解説】落ちこぼれの弟が兄に勝つなど間違っている
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