美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん

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・バグ利用者 世界の裏側に皇女を連れ込む

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 皇女様とメメさんと裏世界を歩き、まずは【ザザの古戦場】マップ外周で材料集めをした。

「なっ、なっ、なっ、なんなんですか、ここっ!?」

「これが壁の向こう側、世界の外側から見た、内側でごじゃりますか……」

 二人は金切り声混じりに驚いていた。
 それも無理もない。
 何せガラスのように透ける壁越しに、先ほど挑戦した【ザザの古戦場】がこの裏世界に横たわっていたのだから。

「えっへんっ、すごいでしょー、おどろいたかー!」

「お、驚きました……はぁっ、すごいのですね、世界って……」

「せかいはねー、ばらばらでーひとつなのー」

「うぅ、とても現実とは思えない光景でしゅ……」

 ガイドはまおー様に任せて、俺は予想通り落ちていたバグ・フラグメントを回収していった。
 【ザザの古戦場】内部にバグ・フラグメントがあったんだ。ここにあっても何もおかしくない。

「それはなんでしゅかっ!?」

「これから作るワイバーンの材料だ」

「んなぁーっ、そんなのを材料にするでしゅかっ!?」

「ああ、まおー様もそうして作った」

「えっへん!! つくられました!!」

「な、なんなの、貴方……? ヴァー様は本当は、偉大な大賢者様か何かなのですか……?」

「まさか。俺はちょっと世界の裏事情を知っているだけの、一般人だ」

「そういう人は一般人とは言いません!」

「とんでもない男でしゅ……」

 【ザザの古戦場】を巡ると合計4つのバグ・フラグメントを回収出来た。
 さてお楽しみの鑑定タイムだ。鑑定魔法アイデンティファイをかけてみた。

「鑑定も出来るでしゅか……!?」

「見る目のない両親ね……。こんな便利な力を持っている人を勘当するなんて、どうかしてます」

「あいあい、まったくでしゅ。鑑定魔法が使えれば、職にあぶれることはごじゃりませぬ」

―――――――――――――――――――――
【名称】バグ・フラグメント
【区分】軽鎧
【効果】斬防+21 薙+22 刺+3
【解説】鉄の小さなリングを繋いで作った軽い鎧。だけど槍だけは勘弁な。
―――――――――――――――――――――

 これは……中盤の頼もしい防具、リングアーマーだ。

―――――――――――――――――――――
【名称】バグ・フラグメント
【区分】蛮刀
【効果】斬:33 薙:16 突:9
【解説】カットラスでカットだす
―――――――――――――――――――――

 これはヘビーカットラスだろうな。
 蛮剣系は斬属性に偏っている不遇武器だ。

―――――――――――――――――――――
【名称】バグ・フラグメント
【区分】大事なもの
【効果】魔力を放つ大理石製の女神像
【解説】魔法学院のある場所に配置すると……
―――――――――――――――――――――

 な、なんでこんなところにイベントアイテムが……。
 魔法学院の裏庭には、秘密の地下室が存在する。
 これを裏庭の東屋にはめ込むと――まあいいや、使ってしまおう。

―――――――――――――――――――――
【名称】バグ・フラグメント
【区分】その他
【効果】干からびている……
【解説】ある地方では燃料の足しとして利用される
―――――――――――――――――――――

 売却価格1z。うまのふんだ。

 皇女様とメメさんは実体と一致しない鑑定結果に目を点にしていた。

「さて、次はこっちだ。錬成は魔法学院に帰ってからにしよう」

「まさか……帝国魔法学院もっ、この裏側の世界にあるのですかっ!?」

「お、順応早いな。そういうことだ」

「世界の壁がぁ……常識がぁ……ガラガラと崩れ落ちてゆくでごじゃりますぅぅ~……」

「はは、メメさんは大げさだな」

 少しの勇気を出して、俺は後ろ歩きで二人の手を引いた。

「こっちだ。この方法を使えば、あっという間にあっちに帰れるんだ」

「な、慣れ慣れしいでしゅ……っっ。メメはいいでしゅけどっ、許可もなく姫様の手を取るのは禁止でしゅっ、不敬でしゅ無礼者っ!」

「ダメか?」

「ううん、ダメじゃない! 私、普通に接してもらえた方が嬉しい!」

 許可が取れたところで手を離して、一人前を進んだ。
 後ろの二人は辺りの光景に目を奪われていた。

 ここは光差し込む漆黒の世界。
 世界をバラバラにしてショーケースの中に飾りたてたような、珍妙不可解怪奇幻想の裏世界だ。

 知っている場所が目に入ると、後ろの二人は大きな声を上げてはしゃいだ。
 魔法学院までは歩いて8分ほどの距離だった。

 なぜそんなに早く移動出来るのかというと、ゲーム上は道中のマップデータが存在しないからだ。
 つまり存在するけどゲーム上存在しない場所は、全部飛ばして進める。
 馬車で半日離れていようとも、この世界ではちょっとそこへの散歩みたいなものだった。

 ああ、それにしても気分が良い。
 好意ある人に秘密を打ち明けた快感を胸に、しばらく歩いた。

「あら……? ねぇ見てっ、あそこにタンスと本棚っ、ベッドまでありますよっ!?」

「ほ、本当でしゅっ!! もしかしてあれっ、神様のお宅でごじゃりますかっ!?」

「すまん、アレ俺んちだ」

「ンナナァァーッッ?!!」

 反応の一つ一つがいちいちかわいいのが、メメさんってキャラクターの魅力だと思う。
 声が甲高くて、ちょっと耳が痛いけど……。

「色々あってさ、寮の家具をこっちに持ち込んだんだ。あ、このこと、学園には内緒な?」

 テーブルのイスを引いて初めてのお客様をご招待した。

「メメと姫様はお疲れでごしゃるのでベッドがよきでしゅ」

「ダメですよ、メメ! それはいくらなんでも厚かましいですっ!」

「いやいいんだ、好きなところでくつろいでくれよ。うちの家族が迷惑をかけて悪かったよ」

「んでは、遠慮なく」

「ってっ、人んちのタンス勝手に開けんなっっ!?」

 衣類もまともにないスカスカのタンスで恥ずかしい。
 俺は奪われかけたパンツを取り返して、タンスを閉じた。

「ねーっ、はやくはやくー! ワレの、おとーとっ、つくってー、つくってー!」

 ポケットからまおー様が飛び出した。

「おおーっ、ついに、はじまるでしゅねっ! 姫様、こちらへどーぞでごじゃります!」

 メメさんは『ポインッ』と跳ねたまおー様をキャッチして、さも当然と俺のベッドに腰を落ち着けた。
 ミシェーラ皇女はまだ服に血がこびり付いていたので、その隣にイスを運んで腰掛けたようだ。

「じゃ、始めるぜ」

「はいっ、ワクワクして来ました!」

「ふかふかで気持ちいいでしゅ……。ちょっと、変な臭いかするでしゅが、そこがまた……むふぅ~♪」

 メメさんは俺のベッドで掛け布団をかぶり、枕に頭を乗せて横寝になった。

「お前な……っ。好きなところでくつろげとは言ったがっ、好き放題して良いとは言ってねーよ……っっ」

「むふふーっ、顔が嬉しそうでごじゃりますよぉー?」

「メメ、あまりご迷惑をかけるものではありません」

「あい」

 枕に頬を擦り付ける小柄な乙女をそのままにして、俺は2人と1匹の前でモンスター錬成を始めた。
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