美少女ゲームの悪役令息に転生した俺、『本編先乗り』と【モンスター錬成】で原作を破壊する

ふつうのにーちゃん

文字の大きさ
上 下
6 / 57

・原作ファン 三学期を満喫する

しおりを挟む
 待ちかねた三学期が始まり、夢の剣と魔法の学園生活が始まった。
 ヴァレリウスの所属は魔法科。彼は勉学の成績こそ優等生だったが、実技においては既に落ちこぼれ街道を邁進していた。

 これだけ頭が良いのだから他の道だってあっただろう。
 だというのに、あの親に魔法学院に入れられてしまったのがヴァレリウスの不幸の始まりだったのかもしれない。

 ヴァレリウスとなった俺は地道に日々を精進して生きた。
 心ない連中に待遇Fランクの落ちこぼれ扱いされようとも、無心に努力を重ねて淡々と己を高めた。

 具体的にどんな学園生活なのかと聞かれたら、こう答えよう。

 ここは一日に魔法ないし戦技の時間が最低5単位入る、やる気のない者には拷問のような訓練校だ。
 そこに学生ランク制度という実力主義制度がジワジワと負け組の心を追い詰める。
 落ちこぼれにはさぞ辛い環境だろう。

 夕刻には放課後がやってくるが、生徒の半数は夜までの時間を自主練に回す。
 俺の場合はそれら全ての上に、裏世界での1日2時間の鍛錬を追加して、焦らず計画的にヴァレリウスを鍛えていった。

「なんでー、もっとー、あっちのせかい、つかわないのー?」

「そりゃ当然だろ、まおー様」

「なにがー、なにがー?」

「この歳で老けたくない……」

「ふけるー? サボるー? タコるー? ぜんぶ、おなじいみー?」

「卒業式の舞台で、自分だけ老けたおじさん顔になってたらソレ、惨めどころじゃねーだろ……」

「なるほどなー、なるほどなー。にんげんってー、たいへんだなー」

「スライムはいいよな……。スライムには学校も試験もなんにもないもんな……」

「えっへんっ!」

「一日だけでいいからスライムになりたい……」

「なればー?」

「なれるわけねーだろ……」

 ヴァレリウスはまあまあの男前だ。
 くすんだ水色の髪を陰気に長く伸ばした姿は、鏡の前に立つとちょっとイケて見える。

 まあそんなわけだ。
 俺はゲーマーにしてファンタジー好きの一人として、夢のドラゴンズ・ティアラの世界を日々満喫して生きていた。


 ・


 弱く頼りない太陽と冬空に覆われた季節が終わり、花咲く春がやってきた。
 
 今日は3月15日の期末試験の日。
 これが終われば少し早い春休みが始まる。
 そしてその春休みを越えれば、ドラゴンズ・ティアラの物語はついに第一章を迎えることになる。

 しかしドラゴンズ・ティアラのシナリオをぶち壊しにするには、俺が育てたヴァレリウスはまだ戦闘力不足だった。

 最低でラスボスを3ターンキル出来るところまで育てないと、シーソーゲームのシーソーは確実に破壊出来ない。

 幸い、裏世界の発見によりヴァレリウスは俺の想定の3割増しで成長していっている。

「次っ! ……おいっ、そこの魔法科っ、突っ立ってるんじゃない、早く準備しろっ!」

「あ、悪い……」

 今日は期末試験初日、実技試験の日だ。
 サバイバル技術担当のクライブ教官に怒られてしまった。

「お前、さっからポケットに手を突っ込んでナニをやっている……」

「ああ、これか? スライムこねてんだ」

「うおぉっっ?!」

 運動着のポケットからまおー様を取り出して、教官殿に投げ渡した。
 狼狽えながらもナイスキャッチだった。

「試験にコイツを持ってくるなっ!!」

「しょうがないだろ、こいつ、収納されたくないって言ってるし」

 テイムモンスターは召喚を解除して引っ込めることが出来る。
 気高きまおー様はそれがお嫌だそうだ。

「お前、学園が大火事になったらどうする……」

 この前用務員が落ち葉で焼きポテトを作っていたとき、そこに親切なまおー様が通りがかって、得意の【灼熱の業炎】でボヤ騒ぎを起こしたらしい。
 ポテトは消し炭になった。

「それはそれで好都合かな。……あ、じゃなくて、とにかくそいつ任せた」

「く……っ、これだから、テイム系のやつらは……っ」

 俺は100メートル走の計測のために、クラウチングスタートの姿勢を取った。
 まおー様はお昼寝中だ。テイム済みだが非常に気分屋のスライムのため、教官の手は震えていた。

「早くしてくれよ、教官、みんな待ってる」

「待たせたお前が言うなっ!」

 午前は戦士科の生徒が有利な億劫な試験だ。
 俺はクラウチングでスタートダッシュを決め、魔法科の走者7名の短距離走で1位をかっさらった。

 決め手はまおー様とのリンクだ。
 まおー様の【速7】のパラメーターが加算されたことで、ちょっとだけ俺は身のこなしが速くなった。

 それ以外の戦士系試験はボロボロか、まあまあか、明日からがんばるって感じの散々な成績だった。

 少し悔しいがチャート通りだ。
 ここは筋肉で魔法を放ち、魔法で筋肉を作る世界だ。
 今追求するのは魔力・魔力・魔力。
 フィジカル面は後回しにすると端から決めていた。


 ・


 午前の戦士系の試験が終わると、午後から魔法系の試験に入った。
 昼食の話はあまりしたくない。

 Fランク生徒の食事はストイック・ザ・ロックだ。
 タンパク源は硬くて臭い干し肉、時々煮干し。
 炭水化物は砂の混じった黒パン。
 ビタミン源はクタクタに煮られた野菜クズ。

 あまりの不味さに泣けてくるほどに、ストイック・ザ・ロックな味わいの毎日だ。

 だがそれも今学期までの話。
 この試験で好成績を上げれば、そのままそれは学生ランクのアップに繋がる。

「もう黒パンは嫌だ!」

「えー、ガリガリしてー、おいしーのにー」

「硬くて臭い肉も嫌だ!!」

「かたいとこがー、ゆっくりとけてー、いいのにー」

「トマトがっ、生の新鮮なトマトが食いたい!!」

「えへへー、がくしょくのおねーさん、いつも、ワレに、トマトくれるんだー」

「テイムモンスターの方が俺より良いもの食ってるとかっ、どういうことよこれっ!!」

 全ては豊かな食生活のため。
 試験への気合いは十分だ。
 俺は肩に乗っていたまおー様をポケットに入れ、ここからが本番の魔法試験に挑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーのララクは、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! ララクは、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...