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第十三章 生えたのなら刈り取りましょう!

執念でしかない

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[ステリナ視点]

   自宅で家族全員固まってたら、若様が乗り込んできました。

「……【ギフト】が二つだろうが、三つだろうが構いません……。問題は私のリアが・・・・・戻る気配がないと言うことです!」

    我が家の応接間で、ソファに腰かけた若様がダン!と勢いよくテーブルを叩いた。
    魔導具のテーブルで良かったです。今の若様だと、普通のテーブルなら割れてました。どんだけイラついてるのか………。

「若様。僕のラフィンも一緒ですからね……」

    口を尖らせてそう言う我が父。生まれた時からこんな姿の父を見ているのです。
    元大神官で高名な魔導具師だと、周囲から羨ましがられますが、ぶっちゃけ変態ですよ、この人…。
    母といる時の父の姿ときたら、もう若様と張り合えるぐらい危険です。
    昔からああなのかと、フェリテさんに尋ねたら、にっこり笑っていなくなりました。
    うわぁ…………。

    兎にも角にも、今は母とアリス様の事です!
    何しろ目の前の男二人は、暴走すると厄介なんです!!
    方や『世界に並ぶべき者無し!』と呼ばれる魔導具師の我が父。
    方や『スキルの見本市』と《鑑定》持ちから恐れられている我が国の騎士団長である、我らの若様。

    正直止められる自信はありません……。

    フェリテさんに連絡はしたものの、ひたすら無言でしたので、いつ来てもらえるのか不明です。
    絶対にダメージ受けてるでしょうから……。

「……《神託オラクル》は神界あちら側からのみでしたか……?」

    ポツリと若様が呟きました。

「あー。そうですね。神から託される言葉という事ですから…」

    腐っても元大神官の父が、そう答えます。

「こちらから何か出来れば良いのに……。何かないのでしょうか?」

    若様の目がヤバいです……。このままアリス様が戻らなかったら、何とかして神界にまで乗り込んでいくんじゃないかってぐらい怖いです……。

「………」

    兄も気づいているようです。目が死んでます。

「あぁ…。せめてリアの声だけでも聞こえたら……」

両手を握りしめ、「リア、リア… 」と呟く姿はもう………。


※※※※※※※※

「…ふぇっ!?」

ビクンと突然、アリスティリアが身体を跳ねさせた。

「若奥様?」

「ラフィンさん。今、エヴァン様の声が聞こえませんでしたか?」

「…若様の…ですか?いえ、わた『リア、リア…ッ!!』」

「「っ!!」」

    いきなり聞こえたエヴァンの声に、二人が辺りを見回す。

「……おいおいおいおいぃ……」

   正面に座っていたアッキーは、口許を引き攣らせ、

「嘘でしょ……。これって《ストーカー》効果?怖すぎる……」

    夢乃は体を抱きしめながら震え出す。

『リア?リアなのですか!?』

   空間内にエヴァンの声が響いた。

「…エヴァン様?エヴァン様、リアです!」

『リア!ああ、リア。大丈夫ですか?今、何処なのです?』

「えっと、ラフィンさんと神界にいます…」

    答えるアリスティリアの隣で、ラフィンは顔を覆っていた。

ーー神界まで声を届けるなんて、今度はどんなスキルを取得したんですか、若様ーーーっ!

    最早、執念としか思えないスキルの取得に、説教中の御影ですらも、呆気に取られていたのであったーーーー。


********

いつもお読み下さり、ありがとうございます。

〘双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。〙

こちらも良かったら、読んでやってくださいませ。

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