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第十二章 トラブルは続く、何処までも……

ステリナの業務日記

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アグローシア暦日の月。水の日。

我が母ラフィンが倒れる。
病気ではない。怪我でもない。気絶したのだ。
原因は坊っちゃまのスキルにある。

母は歴代の『護衛メイド』の中でも五本指に入る人物である。
〈閃光〉という二つ名で呼ばれ、恐らく現在、最高位の『護衛メイド』。
その母・・・が気絶したのである……。

母を溺愛している父は、珍しく大慌てになり、恥ずかしながら我々兄妹も慌ててしまいました。

【加護スキル】《冷静沈着》をレベルMAXで持っている母が…。あの母が気絶ですよ!?
天変地異の前触れか…などと、愚兄なんか呟いたせいで、フェリテさんに締められてました。おバカめ…。

さて、問題の坊っちゃまのスキルなのですが…。

浮遊フロート》というスキルと、《空間移動テレポート》というスキルでした。

この二つ。両方持ってるのって、神獣様達だけなんだそうです。
ええ、神獣様達だけ・・・・・・………。

いつもは楽天的な父も、さすがにこれにはしばらく無反応でしたね。
そして、目覚めた母からの衝撃の事実に、全員が言葉を失いました。
なんと、坊っちゃまとお嬢様。御二方とも、神獣様達全員に加護を与えられていたのです。

母いわく、ふと横を向き、振り返った時には坊っちゃまがいなくなっており、フェリテさんに知らせて探そうとすると、突然目の前に坊っちゃまが現れたのだそうです。
更には、キャッキャッと笑いながら宙に浮かんだのだとか。
フェリテさんが浮かび上がった坊っちゃまを捕まえ、母が《鑑定》した所、問題のスキルを発見。
このスキルの取得条件が、

〘四人以上の神獣の加護を与えられること〙

なんだそうです。

驚いてお嬢様も《鑑定》したところ、全く同じスキルが見つかったそうです。
そりゃ、うちの母も気絶するってもんですよね。

世話してる子供達が、意思疎通できない状態で、一方的にいなくなるなんて、護衛のしようがないんですから。

さすがにまだレベルが低いせいか、浮かぶ高さも低めですし、人や物を連れての移動は出来ないようなので、母が神獣ぐるみをお二人にくっつけてました。

アリス様達からの依頼で、【封印布】も取り寄せられましたよ。
若さまがすぐさま、【封印布それ】を使ってお子様方の服を作ってました。

まあ、そうなりますよね…………。

母一人では手に余る事態ということで、もう一人。『護衛メイド』を雇うことになるようです。

この場合、アリス様付きになるんですかね?
手配はマリアステラ様がなさるようでしたから、心配してませんけれど。

「待って…。坊っちゃま《ストーカー》持ってて、これ使えるのって、相手が怖がらないか?」

我が兄カルステッドは、相変わらず空気が読めてませんね。

乳児が誰を相手にそんなスキル使うんですか?
せいぜい母やアリス様。若様に使うくらいですよ!

同い年の子供と交流を始めてからが気をつけないといけないんですよ。

若様なんか、坊っちゃま達と同じスキル欲しさに、神獣様達と交渉してました。

若様も坊っちゃま達も、〖スキルの見本市〗などと呼ばれてるんですからね!

既に時期王太子妃と決まっているお嬢様に、申し込みは出来ないからと、生まれてばかりの坊っちゃまに、生まれてもないご息女との婚約の申し込み。酷いのだと十も年上のご令嬢との婚約の申し込みもきてました。

母親であるアリス様が、坊っちゃま自身に選ばせたいので。とお断りしてますけど。

坊っちゃまと乳兄弟となるうちの弟トリスタンは、愚兄よりも苦労しそうですーーーー。




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