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第九章 《祝福》されし者
アリスティリアの装備品
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とにもかくにも波乱ばかりの婚姻式を無理やり終わらせ、披露宴のターンである。
来客は各自の部屋で休んでから、晩餐を兼ねての披露宴となる。
そのためアリスティリアは、婚礼衣装を脱ぎ、軽く湯浴みをして後、諸々の行程をこなして、披露宴用のドレスを着るはずだった。
「…………無理……」
眼前にある薄紫のエンパイアドレスを目の前に、アリスティリアは膝を着いた。
「……気持ちは分かりますけど、諦めてアリス様」
アリスティリア付きのメイド、ステリナは肩を叩いてそう言った。
「付与効果が怖すぎる……。これ一回しか着ないのに、こんな豪勢な仕様のドレスがまだあるのよ?国家予算が国宝級になってるの!着れる?着れるわけないじゃないっ!!」
神聖国で行われる披露宴用のエンパイアドレスには、銀亀からの付与が付けられていた。
〖【アラクネの織物】を【銀亀の髭】で加工されたドレス〗
アラクネによる美しくも丈夫な糸で細かく丁寧に編まれた織物に、銀亀の守りの力が付与されたドレス。
特定の人物のみ着用が可。
着用時にはあらゆる攻撃から守られる。
一切の攻撃を受け付けない国宝級ドレス。
披露宴でどんな攻撃を受けるというのか、どんな物騒な披露宴をすると思われたのだろうかと、本気で思ってしまったアリスティリアである。
しかも8枚中4枚が単独付与。残りの4枚は、合成付与されたという、とんでもない内容のドレスが待ち構えている。
確実に国宝級より上である。
神器と言ってもよいのでは?と、合成付与のドレスを《鑑定》すれば、【神話級のドレス】となっていた。
いくら自分が魔王の血を引いてるとはいえ、これはないんじゃないだろうか?
アリスティリアは本気で逃げ出したくなっていた。
「…アリス様。女は度胸です!はい、諦めて着ますよー!!」
「それ、絶対に違うから~っ!!」
アリスティリアの抗議虚しく、ベテランのメイド達に着替えさせられるアリスティリアであったーーーー。
※※※※※※※※
披露宴会場にて、アリスティリアは笑みを浮かべつつ、その瞳は死んでいた。
正気でやってられるか!と、投げやりになっていながらも、白のタキシード姿のエヴァンの隣からは離れることはない。
「…リア。大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込んでくる紫水晶の瞳に、思わずふにゃぁと顔が緩む。
「大丈夫です!エヴァン様の妻となったお披露目です。頑張ります!!」
立食パーティースタイルの披露宴は、あちこちで固まって話しているグループに挨拶に行き、呼ばれて向かっての繰り返しである。
「少し気分を変えましょうか?」
息抜きがてらにとテラスへと連れ出され、ホッと息をつくアリスティリアに、エヴァンは優しく頬を撫でた。
「~~♪」
嬉しそうにその手に頬を擦り寄せるアリスティリアの姿に、エヴァンは幸せを噛み締めた。
しばらくそうして過ごしていると、ラフィンがエヴァンを呼びに来た。
「若様。聖王様がお話があるとお呼びです」
「分かりました。リアはどうします?」
「もう少しここで休んでます…」
「では、私が控えていますね」
アリスティリアをラフィンに任せ、エヴァンが会場へと戻っていく。
「…若奥様。何か召し上がられますか?」
「…いえ。何も喉を通りそうにないので、大丈夫です…」
苦笑しながら答えるアリスティリアに、ですよねぇと心中同情しながら、ラフィンも苦笑を返した時だった。
「「っ!?」」
アリスティリアに向かって、すぐ側の庭園から網のような物が投げかけられた。
「若奥様っ!!」
「っ!」
アリスティリアの身体に触れた途端、網はパンと音を立てて消えた。
「「……」」
思わず無言になる二人。
だが植え込みから十人ばかりが飛び出てくると、ラフィンはアリスティリアを背に庇い、レイピアを取り出した。
「何者っ!?」
覆面姿の集団にレイピアを振って、アリスティリアへの接近を阻んでいると、異常に気づいたフェリテとステリナも駆けつけて加わった。
「若奥様は、中へ!」
「はいっ!」
答えて会場に戻ろうとしたアリスティリアだったが、頭上から二人ほど飛びかかってきた。
「っ!もう、邪魔です!!」
伸ばされた手を叩こうと右手を振った瞬間、パシコーンといい音を立て、相手が吹っ飛んで行った。
「「「は?」」」
「あれ?」
呆気に取られる『護衛メイド』の三人と、自分の右手に現れたそれを茫然と眺めるアリスティリア。
その右手には何故か『ハリセン』が握られていたーーーー。
来客は各自の部屋で休んでから、晩餐を兼ねての披露宴となる。
そのためアリスティリアは、婚礼衣装を脱ぎ、軽く湯浴みをして後、諸々の行程をこなして、披露宴用のドレスを着るはずだった。
「…………無理……」
眼前にある薄紫のエンパイアドレスを目の前に、アリスティリアは膝を着いた。
「……気持ちは分かりますけど、諦めてアリス様」
アリスティリア付きのメイド、ステリナは肩を叩いてそう言った。
「付与効果が怖すぎる……。これ一回しか着ないのに、こんな豪勢な仕様のドレスがまだあるのよ?国家予算が国宝級になってるの!着れる?着れるわけないじゃないっ!!」
神聖国で行われる披露宴用のエンパイアドレスには、銀亀からの付与が付けられていた。
〖【アラクネの織物】を【銀亀の髭】で加工されたドレス〗
アラクネによる美しくも丈夫な糸で細かく丁寧に編まれた織物に、銀亀の守りの力が付与されたドレス。
特定の人物のみ着用が可。
着用時にはあらゆる攻撃から守られる。
一切の攻撃を受け付けない国宝級ドレス。
披露宴でどんな攻撃を受けるというのか、どんな物騒な披露宴をすると思われたのだろうかと、本気で思ってしまったアリスティリアである。
しかも8枚中4枚が単独付与。残りの4枚は、合成付与されたという、とんでもない内容のドレスが待ち構えている。
確実に国宝級より上である。
神器と言ってもよいのでは?と、合成付与のドレスを《鑑定》すれば、【神話級のドレス】となっていた。
いくら自分が魔王の血を引いてるとはいえ、これはないんじゃないだろうか?
アリスティリアは本気で逃げ出したくなっていた。
「…アリス様。女は度胸です!はい、諦めて着ますよー!!」
「それ、絶対に違うから~っ!!」
アリスティリアの抗議虚しく、ベテランのメイド達に着替えさせられるアリスティリアであったーーーー。
※※※※※※※※
披露宴会場にて、アリスティリアは笑みを浮かべつつ、その瞳は死んでいた。
正気でやってられるか!と、投げやりになっていながらも、白のタキシード姿のエヴァンの隣からは離れることはない。
「…リア。大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込んでくる紫水晶の瞳に、思わずふにゃぁと顔が緩む。
「大丈夫です!エヴァン様の妻となったお披露目です。頑張ります!!」
立食パーティースタイルの披露宴は、あちこちで固まって話しているグループに挨拶に行き、呼ばれて向かっての繰り返しである。
「少し気分を変えましょうか?」
息抜きがてらにとテラスへと連れ出され、ホッと息をつくアリスティリアに、エヴァンは優しく頬を撫でた。
「~~♪」
嬉しそうにその手に頬を擦り寄せるアリスティリアの姿に、エヴァンは幸せを噛み締めた。
しばらくそうして過ごしていると、ラフィンがエヴァンを呼びに来た。
「若様。聖王様がお話があるとお呼びです」
「分かりました。リアはどうします?」
「もう少しここで休んでます…」
「では、私が控えていますね」
アリスティリアをラフィンに任せ、エヴァンが会場へと戻っていく。
「…若奥様。何か召し上がられますか?」
「…いえ。何も喉を通りそうにないので、大丈夫です…」
苦笑しながら答えるアリスティリアに、ですよねぇと心中同情しながら、ラフィンも苦笑を返した時だった。
「「っ!?」」
アリスティリアに向かって、すぐ側の庭園から網のような物が投げかけられた。
「若奥様っ!!」
「っ!」
アリスティリアの身体に触れた途端、網はパンと音を立てて消えた。
「「……」」
思わず無言になる二人。
だが植え込みから十人ばかりが飛び出てくると、ラフィンはアリスティリアを背に庇い、レイピアを取り出した。
「何者っ!?」
覆面姿の集団にレイピアを振って、アリスティリアへの接近を阻んでいると、異常に気づいたフェリテとステリナも駆けつけて加わった。
「若奥様は、中へ!」
「はいっ!」
答えて会場に戻ろうとしたアリスティリアだったが、頭上から二人ほど飛びかかってきた。
「っ!もう、邪魔です!!」
伸ばされた手を叩こうと右手を振った瞬間、パシコーンといい音を立て、相手が吹っ飛んで行った。
「「「は?」」」
「あれ?」
呆気に取られる『護衛メイド』の三人と、自分の右手に現れたそれを茫然と眺めるアリスティリア。
その右手には何故か『ハリセン』が握られていたーーーー。
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